コンゴの中央カサイ州の状況
コンゴでは感染者が5000名に迫る勢いで増えており、私たちの活動地域である南キブ州でも100名弱の感染者が出ています。
幸い、中央カサイ州の方では、まだ感染者が出ていませんが、社会経済活動の制約は続いており、紛争の影響を受けた女性や国内避難民の方々の生活が困窮しています。
コンゴでは各州ごとに、それぞれ独自の規制(対策)も講じており、ここ中央カサイ州は、感染者の90%以上が集中する首都キンシャサに比べれば、社会経済活動の制約も比較的緩やかです。
ただ、道路事情が劣悪で、首都キンシャサから中央カサイ州へ陸路での物資運搬は、雨季はほぼ不可能で、空路も閉鎖されている状況で、地元の経済活動も大きなダメージを受けています。
経済が停滞するというのは裕福層にとっては商売ができなくなるという程度の問題ですが、大多数の貧困層にとっては、今日、明日の生活に直結する命の問題です。
コロナ禍で、紛争被害を受けた女性たちが24,000個の石鹸を生産できました。
さらに、もともと数年前の紛争によって学校や病院、村々が焼かれ、多くの方々が家族を失い避難民になるなどの紛争の影響を受けており、コロナショック以降は、食料価格も高騰する中、避難民や最貧困層の人たちは1日一食を食べるのがやっとの状態です。
そんな中、テラ・ルネッサンスではコロナの感染予防の支援とともに、コロナ禍で生活に困窮している方々への生活物資支援や生計支援を行ってきました。ここ、カナンガでは、昨年、石鹸作りの技術訓練をして、自立していた紛争被害を受けた女性たち100名に、石鹸作りの仕事を担ってもらっています。
彼女たちは全員、紛争の影響で、家や、夫や子どもを亡くした女性たちです。
この仕事を提供することで、彼女たちはこのコロナ禍でも最低限の生活を維持することができています。この2ヶ月間で、24,000個以上の石鹸を生産してもらうことができました。
生産した石鹸は、国内避難民や最貧困層や、障害者、高齢者などコロナ禍で衛生用品さえ購入することができない方々に配布しています。
女性たちが生産した石鹸を地元の方100世帯以上に配布しました。
生産した石鹸は、地元の最貧困層やシングルマザー、高齢者、障害者など、最も脆弱な方々に配布しています。現時点で100世帯以上に配布が終わっており、今も継続して配布を続けている状況です。
写真は、生産して箱詰めした石鹸を出荷準備している様子です。もちろん、今回はこれらの石鹸は全てテラ・ルネッサンスが買取り、それを他の方々への支援物資として無償で配布しています。
スタッフが一軒一軒訪問することで、地元の方と対話しています。
配布先は、スタッフたちが、他の援助機関や、各村々のリーダーたちと相談し、戸別訪問をして最も脆弱な対象者を優先的に支援しています。
また、配布する際も、1箇所に集めて配布することはコロナ対策上できないので、一世帯一世帯、スタッフが戸別訪問して配布しています。
炎天下の中、うちの現地スタッフも結構、体力を使う仕事ですが、スタッフたちの話を聞くと、直接、訪問することで、コロナ禍で生活苦とともに精神的にも不安を抱えている最脆弱の方々から様々な話を聞いたり、状況を把握することができています。
写真:ベージュのベストを来ているのがテラルネスタッフ
さらに、戸別訪問の際、対象者の方々から悩みや、苦しみを直接話を聞いたり、また、世間話や楽しい話もしたり、写真をとったりするなどインフォーマルな対話をすることで、対象者の方々からは、支援に対する喜びとともに、「話ができてよかった。家まで来てくれて本当にありがとう」という言葉をたくさんもらっているとのことでした。
一人ひとりの状況や、抱えている悩みや苦しみは様々で、多くは物理的な支援も必要としていますが、それでも、それぞれの心に寄り添い、可能な限り、それぞれの状況に応じて支援を行っていくことが大切だと感じています。
もともと紛争により家族や家を失い、喪失感や孤独感、心の傷を抱えながら、コロナ禍で明日の生活も見えない最脆弱層の方々に対して、「顔の見える誰か」が側にいてくれているという安心感をテラ・ルネッサンスのスタッフが与えることができればと願っています。
まだまだ、コロナ禍で生活が困窮している方々がたくさんいる中で、現場のニーズは十分満たせていませんが、今回、コロナ対策のご支援で多くの方々から募金を頂いたことで、さらに食料や衛生用品を、現地の方々に届けていくことができます。
パイナップルジュース作りと農作物一次加工で、コロナ禍を乗り越えようとしています。
コンゴでは感染者も増え、多くの人々が失業、収入を亡くし、暴動が起こったり、犯罪が増えたりする中、多くの最貧困層が人間として最低限の生活すら維持できない状況になっています。
もともと、紛争の影響で多くの人たちは、援助に依存して生活していましたが、昨年から、紛争被害を受けた女性たち280名は、石鹸作りや、パイナップルジュース作りや、農作物の一次加工技術を習得して、相互扶助グループを形成して自立することができました。
彼女たちは全員、紛争で夫や子どもを亡くした女性たちでしたが、ようやく自立した生活ができるようになっていたところにコロナ危機がやってきました。社会経済活動や移動の自由が制限される中、地元の人々は収入源を失い、生活苦に陥っています。
テラ・ルネッサンスも今、こうした生活が困窮した方々の暮らしを守るために、生活物資の支援や生計向上支援を行っています。
一方、パイナップルジュース作りと農作物の一次加工に従事する女性たちの暮らしを守るためにどうするかをいろいろ検討してきました。オプションとしては、彼女たちに生活物資を配布することで生活補助するというやり方もありましたが、最終的に本人たちの希望もあり、今、行っている生産活動を側面からサポートすることにしました。
3密を避けながら交代でグループのメンバーが仕事を行っていますが、ジュース作りのメンバーらは、生産したジュースを販売しようとしても、これまでジュースを下ろしていたレストランやホテルも軒並み営業が停止したり縮小している中、収入が減少してしまいました。
しかし、それでも、援助に100%依存するような生活には戻らないように、テラ・ルネッサンスからは、物資運搬や移動のサポートをしながら、彼女たちだけで、コロナ禍を乗り切ろうと頑張っています。ホテルやレストランでの売上が減少した分、メンバーが協力して、アイスボックスに作ったジュースを詰め込んで、それを街中で、歩いて売りに回るという方法で、懸命に仕事をしています。
また、農作物の一次加工をする女性たちも、材料の運搬などのサポートはテラ・ルネッサンスから受けながらも、自分たちでマーケットを周り、売り上げをあげようと努力しています。
今も多々困難はあるものの、この2ヶ月間、彼女たちは自分たちの力で生活を守り抜いています。多少のテラ・ルネッサンスからのサポートはあるにしても、ほとんどのことは彼女たちがグループの中で話し合い、レジリアントにこの危機に対応しています。
多くの人たちが、コロナ危機に心が折れたり、あきらめたり、安易に物資支援を求める中、彼女たちの取り組みは、彼女たちの底力を感じさせられます。
どうしても、援助する側は、対象者に「無いものばかりを探してしまいがちですが、彼女たちの中にある在るもの」をしっかりと見守っていく大切さを改めて感じています。
とは言いつつも、不安定な状況には変わりなく、いつ彼女たちが耐え切れないほどの危機に直面するかもわかりませんので、私たちとしては、彼女たちの生産活動を見守りながら、できるだけ彼女たちの「できること」をしっかりと側面から臨機応変にサポートしていきたいと思っています。
報告:小川真吾