機屋番匠の徳さんからもらった見積もりは織り機2台の運搬と洗浄、その他の機材の運搬込みで90万円近いものでした。手持ちの資金は50万円。その他にも展示をするための経費などがかかってきます。さて、この差をどう埋めるか。また織り機を運んだとしてどうやって見せようか?お金の目処もつかない中で頼ったのが、古い付き合いの二人の友人・山口明宏くんと久米岬くんでした。 山口明宏くん(アート・ディレクション) 神奈川県生まれ。東京を中心に活動する写真家。主な被写体は花と人、そこに含まれる景色。自身が関わる全てを写真機で記録し、それを元に作品を制作している。座右の銘「伝える事の全てが作品」 まずはじめに頼ったのが山口くんです。写真家として自身の作品の展示を行いながら、作家や音楽家の撮影の仕事などを行っています。もともとWEBの制作者だった彼は、写真だけでなく動画の制作やWEBサイトの構築、グラフィックデザインも行え、総合的にコンテンツをつくることができます。 今回の展示では、全体の計画を後押ししてくれながら、プロローグムービーや機屋番匠さんの仕事の動画、先日公開した公式サイトなどをつくってくれました。彼の写す陰影のある世界、行間に漂う情緒が織り機の風景と結びついて化学変化を起こしています。 久米岬くん(会場構成) 愛知県生まれ。東京を中心に活動する建築家。住宅・店舗・展示会場構成等を手がける。周辺環境やコンテクストから『そこに在るべき建築』を模索し続けている。 次に頼ったのが久米くん。一級建築士の資格を持ち、住宅や店舗の仕事をするのはもちろん、彼もまた展示会場の構成や什器の制作など幅広い仕事をこなします。写真やグラフィックなどの情報を処理する山口くんを展示の”目”とするなら、家具職人を目指していたこともある彼は展示をつくる”手”です。展示では会場の構成から造作、設計を担当し、織り機のパーツを飾る額縁までつくっています。手先が器用でとてつもなくうつくしい仕事をする頼もしい仲間です。 二人とはもう5年以上の付き合いになります。もともとはボランティアスタッフとしてイベントを支えてくれるメンバーでした。たくさんの困難を一緒に乗り越えてきた戦友のような二人です。 今ではそれぞれ独立し活躍しているから、声をかけるのをためらっていたのですが、あの頃とはちがった形で一緒に仕事をしたいと思い、彼らを頼ることにしました。声をかけたとき二つ返事で協力をしてくれ、今全力で仕事をしてくれることに本当に感謝しています。
建築家の久米です。会場となるFUJIHIMUROは三室に分かれた構成となっております。今回はその一室、インスタレーションを行う部屋について紹介します。 このインスタレーションでテーマとしているのは、展示のタイトルである『織り機につどう』です。 普段、私達が出会うのは、完成品としての衣類等です。しかしそれらができあがるまでにはとても多くの人々の想いが関わっています。ものづくりの現場ではよく言われる、このあたり前の事実。私たちはこの『見えない作り手』と『受け取り手』。繋がることが無い両者をこの場で、『表現』という形で繋げたいと考えています。 わたしたちが現地で出会い、話を伺った織機工場で働く人々、その機械のメンテナンスに来ている職人さん、分解・組み立て・運搬を行う織屋番匠さん、無数の糸をつなぐ職人さん、そこで織られた布で様々なものを作る作家・デザイナーの方々など。インスタレーションでは、この織り機につどう人々を『円』として無数の糸で表現します。そして織り機を構成している部品たちが、光となり会場を埋め尽くします。 この表現が私達ができる役割、『伝える』ということだと信じています。 現地でしか感じられない光景を、ぜひ眼に焼き付けに来ていただければ嬉しいです。 こちらの会場では期間中ライブ等のイベントも行われる予定です。 (詳細は後日、このブログや各SNS等にてお知らせします。)
こんにちは、建築家の久米です。 展示『織り機につどう』ではこのような額を無数に配置します。数として50個以上が展示される予定です。この展示のために1からデザイン・製作をしました。一部は販売も行う予定ですので、ぜひ現地でご覧いただければ嬉しいです。 これらの部品は織り機としての永年の役目を終えて廃棄されるものをお譲りいただいたものです。年月が織りなす美しさを新しい価値につくりかえて、展示し、皆様のお手元にお届けすることができる。そして、ご購入いただいた資金を織物業界に還元できる。私達にとってこんなに嬉しいことはありません。 材料は敢えてベニア板を使用し、それをひとつひとつ私達が黒く染めて行くことで、インダストリアルな質感を出しています。額は立体となっており、無垢の真鍮棒にて保護のアクリルを固定してあります。会場で織りなされる『織り機の記憶の集積』ぜひ楽しみにお待ちください。
展示の内容や期間中に予定している各種イベントのお知らせ用に公式サイトを作りました。制作は山口明宏くん。情報が集まって来たときにはこちらのサイトをご覧いただけると整理されてみやすいかと思います。 「織り機につどう」公式サイトhttp://weaving.yosowoigarden.com/
織機の展示をやってみたい! しかし、いったいどうやって? 織機の展示をやってみよう! 思いついたはいいけれど展示を開催するまで解決するべき課題はいくつもありました(いまも現在進行中)。いったいいくらかかるのだろうか? そもそも使われてない織機はどこから持ってくる? テーマがマニアックすぎる? そして、このよくわからない企画を高齢の機屋番匠さんに伝えて理解と協力を得られるのだろうか? 思考錯誤しながら実現が見えてきた背景、展示ができるまでの経過をレポートします。よろしければぜひお付き合いください。 タイトルだけ決まったまま ちょうど去年の今頃の話です。ふじよしだ定住促進センターの赤松くんから、FUJIHIMUROの展示企画のお話をいただきました。何ができるかな? 考える中で出てきたアイデアのひとつが織機をバラバラにして中身を知ってもらう展示でした。 機屋番匠さんは2017年のハタオリマチフェスティバルでトークイベントを企画した際にお会いしていました。あの作業場を訪れたときの知らない世界が広がる気持ちを展示にできたら楽しそう。この土地でしかできなさそう。そんなことを妄想し「織機の分解展」というタイトルが浮かんでいました。しかし、何から手をつけたものかとアイデアはしばらくの間、止まったままでした。 突如舞い込んできた朗報 そんなある日、舟久保織物さんに晴基くんが入る話が聞こえてきました。さらに、機械の構造を教えるために使わない織機をどこかに入れたくて押さえたという話も。その話を聞いたときに「少しの間貸してください。その間晴基くんは自由に分解と組み立てをできるようにします。」とお願いしました。展示用の織機はみつかり、時期は晴基くんが留学から戻って本格的に弟子入りする2月に行うことが決まりました。 果たして企画は伝わるのか? 番匠さんへの依頼 番匠さんに普段とは違う特殊な依頼を受けてもらえるのかどうかも自信はありませんでした。一度お会いしているとはいえ2年前です。そのときも取材には応じていただけたもののイベントで予定していたトークショーには来ていただくことができませんでした。余計な仕事に興味がないのです。 懸念していたそこは舟久保織物さんが間に入ってくれました。長年同じ地域内でやり取りしてきた舟久保さんだからこそ話ができたことで、ぼくでは相手にされなかったと思います。こうして、織機を入れる段取り、予算の目標額が見え、晴基くんへの事業継承という大義が加わりました。次の課題は、資金をどうやって集めるのかとどういう展示にするのかということです。 お金の目処もつかない中で頼ったのが、古い付き合いの二人の友人・山口明宏くんと久米岬くんでした。 (次回につづく)