福島の子どもたちといっしょに会場入りしてバスを降りた瞬間、関係者でありながらちょっぴり戸惑い驚きました。ギターに合わせた歌声に迎えられ、スタッフ総出の手でつないだアーチの下をくぐり抜ける。歓迎のセレモニーと言うより、まるで賑やかなお伽の国にでも迷い込んだ雰囲気だったのです。このキャンプには不思議な力が宿っています。初対面だというのに、みんなすぐにリラックスできるぬくもりがあるんです。もちろん恥ずかしがり屋さんも引っ込み思案な子もいますが、それもそのまんまでOK。だれからもなんにも強制されない自由を気風としています。 ***** この春休みキャンプでは、出発地のいわきでひと騒動がありました。直前になって高熱を出したミクのおかあさんから電話が入り、「本人はどうしても行くと言って聞かないんです。どうしましょうか」と言うのです。(えっ?いくら主催者だとは言え、行くか行かないかをこの赤の他人が決めるの?)と返事もできずにたじろぎました。「出られそうならとにかく集合場所まで来てください」となんとか答えてはみたものの、当の本人の表情を見た瞬間、これは無理しない方がいいに決まっていると、当然のように感じました。 ところが、ミクと来たら、一人残されたなら一生後悔すると言いたげにダダをこねるように身をかしげました。「インフルエンザだったらみんなにうつるわよ」、「回復したらあとから追っかけたらいいじゃない」とおかあさんたちからたしなめる声が出る中、数分間迷ったあげく何を血迷ったものか「ミクを連れて行きます。いいですか?」と宣言してしまいました。なんの勝算があったわけでもありません。ミクと一緒に、ほかのみんなとも力を合わせて乗り切ろうと思っただけのことでした。 幸いなことにミクは徐々に回復し、翌日には里山の軽登山にさえ参加することができました。「治るまでますやんには服従だぞ」と釘を刺しておきましたが、結果がよければそれでいいと思っているわけでは決してありません。この先症状がどうなるものかと計ることができないなら、今の気持ちを大切にしてあとはとことん応援してやろう。責任を取る取らないというようなことでもなく、一緒に泣いて一緒に笑おう。ただそれだけのことだったように、今思い返しています。
福島から石川までのバスの移動にはおよそ9時間ほどかかりますが、初対面の子どもたちはびっくりするほど早く友だちになってしまいます。 ***** FAAVO石川にプロジェクト登録して早30日あまりが過ぎました。登録期限が50日を切った現時点で、お申し出ていただい金額は15万円、目標額の100万円まではなんとも遠い道のりです。ずっと気になってはいましたが、この「ふくしま・かなざわキッズ交流キャンプ」の仲間たちはキャンプを開催することは大得意でも、支援をお願いすることなど細やかな下準備になかなか時間を割くことができないのが実情です。でもちょっと苦手としていることにこそトライ! というわけで、改めてこのプロジェクトの支援を募る活動に邁進します(笑)。 この大型連休中に知的障害児を対象にした「春の和・めぐるキャンプ」を開きました。福島から招いた参加者は保護者を含めて17人。それぞれにスタッフ1人がついてのマンツーマンのキャンプ生活を繰り広げました。詳しいレポートはこれから追々まとめて行くつもりです。今はスタッフ間で盛んに感想のやりとりをしています。それぞれが体験した場面を知ると、なんと素晴らしい出来事が起こっていたのかと感動の連続です。 あれから2年あまりが過ぎた今、みなさんの中の東北や原発への思いはどんなふうに変化していますか。福島の子どもたちの笑顔と元気を応援する保養プログラムは全国各地で開催されています。でも実際にキャンプを企画し継続的に開催していると、彼らを思う機運が少しずつ低調になってきているのを感じます。もしも日本のおとなの何十人かでたった1人の子どもを応援したなら、東北中の子どもたちを元気にできるだろうにと思いますが、世の中そんなに言うほど簡単には動きません。単発では大勢の人の心が集まっても、継続となると途端に叶わなくなるのはなぜでしょうか。子どもたちと自然の中で生活していると、今おとなとしてどうあるべきか、いろいろ考えさせられることが本当に多いです。 残された期限の間、子どもたちとのふれあいから感じたものをいくらかレポートしますので、ご都合に合わせて覗いていただければ幸いです。