で図案が出来上がったら、今度は生地に映していきます。 どんなふうにするかって、驚きのアナログです。下から光あてるんです。 ガラスのテーブルに図案(ずあん)が書かれた紙置いて、その上に生地(きじ)を置きます。 そしてガラステーブルの下から光をあてると、生地にうっすら柄が見えますよね。 それをなぞって生地に書いていきます。これが下絵(したえ)です。 書く道具は筆先の繊細な細い筆で、インク(という表現は?だけど)は青花(あおばな)を使います。 青花(あおばな)は琵琶湖の周りで、真夏の早朝にだけ咲く、直径約3㎝の綺麗な青紫のお花です。露草(つゆくさ)と同じ色で学術的には兄弟だけど4倍くらいの大きさで、今ではあまり採ることができないそうです。 このお花からから抽出した色素を和紙にしみこませて乾燥、しみ込ませて乾燥、しみ込ませて乾燥を繰り返して青花紙(あおばながみ)が作られるそうです万葉集にも出てくるくらい昔から作られてきました。 最盛期には300軒で作っていたけど、今では一軒のみ。そうやって大切に大切に作られた青花紙は、染料屋さんで売られていて、作家さんの手元に届きます。 花歴さんよりお写真お借りしました 作家さんが筆先につけて生地に下絵を書くために使う時には、お水で少しずつ戻して使います。 この青花の特徴は、水で洗い流すと消えるということです。 友禅染(ゆうぜんぞめ)の特徴は糊(のり)を洗い流して、白い枠が残ることです。 そのためのその糊を置く場所の下書きとなる、青花(あおばな)も洗ったら消えてほしいんです。 では次は糊置きの工程です。
「どんな色にする?」「なんの花にする?」「どんな雰囲気に仕上げる?」一番楽しかったのは、工程コンセプト決めとデザインでした。 着物を作るときに、顧客が自分の意見を言える。それは加賀友禅では滅多にないことなので、今回のプロジェクトで、私が「こんなお客さんのイメージでこんな柄がいい」とわがままをたくさん言ったのに、それが反映されて5着出来上がることはスゴイことなんです。 それは、加賀友禅作家上坂さんの持つヒアリング力と提案力。 きものカラーコーディネーター上濃さんのもつ調和をとる力。 お二人が私の実現したいことを具現化してくれました。 この一番楽しい二つの過程とお二人のすごさは、こちらのレポートにまとめました。 上坂さんの工房にて、驚いたのは、このサイズ感です! 小さいMacの画面上で思っていたのと、実際紙に書いたときって違いますねやっぱり。感動。お花が生き生きとしてます。 コンセプトの通り、自然と笑顔がほころぶ、キレイになれる美しい花が大胆に、かつ写実的に描かれています。 (優しい渋オレンジ×椿) そして、このサイズで手書きなのも驚きました。 恥ずかしながら、「PCでデザインして、そのまま大きい紙に出力する」と思い込んでいたので、ここからもう手書きなんだとびっくり。 上坂さん曰く「PCでのデザインは大まかな色や顧客の好きな花のヒアリング。実際図案書くときに、バランスや配置見て、今までの経験で、ここ!っていう感覚で書く」 なるほど。ここからはもうアーティストの世界・芸術なんだと思いました。バランス感覚は作家さんそれぞれの感性なんですね。 (ターコイズ系にボタン) (取材にきていた北國新聞の記者さんもサイズ感と手書きの図案にびっくり) 絵画のデッサンを見ているよう。 花びらのめくれている裏側、中心のしべの部分のうごめく感、小さな梅や桜のちりばめ方。 illustratorのデザインという最先端から、一気に職人作家の手書きいう工程になって、まさにデジタルとアナログの融合。 まだ色のつくまで、いくつもの工程を経るのに、完成が楽しみでなりません。
「金沢の街に映える」レンタル着物とは? 今回、色監修をさせていただいているナツメミヤビの上濃雅子です。きもの講師、着付け師であり、きものカラーコーディネーター、きものパーソナルカラーコンサルタントとして活動しています。 心結さんから「加賀友禅の街歩きにふさわしい着物を作りたい」とお話をいただいたとき、頭にぱあっとイメージが広がりました。 私も若いお嬢さん方の派手で鮮やかなレンタル着物が街にあふれているのを日々見ています。着物の一歩として旅先の思い出として、笑顔振りまくその姿はほほえましくもあり、普段に着物に親しんでいる身としては、あの色彩、素材は自分はちょっと着られないな・・・と思っていました。 そんな彼女たちが二回目の金沢に来たとき、母娘旅でお母さんにも一緒に着物を着てほしいと思ったとき、妙齢の大人の女性が金沢の街を着物で歩きたいと思ったとき・・・どんな提案ができるか。 日本海側独特のスモーキーな空気感、渋い金沢の街の色に、しっとりと調和しつつ、それでいて地味に沈まない、遠目にも近くでも写真映えする、旅先での昂揚感も味わえて華やかさも忘れない、そんな着物を着てほしいと思いました。さらに言えば、地元の方もこの地に伝わる「加賀友禅」をもう少し気軽に着てみることができたならとも思いました。ちょっと欲張りですね(笑)。 街歩きにもパーティにも。「付下げ(つけさげ)」という選択 今回企画した着物のタイプはいわゆる「付け下げ(つけさげ)」というものです。 上前(裾の方)と、肩付近だけに柄が飛んでいて、他は無地でさっぱりとしています。 「小紋(こもん)」(洋服でいうと、ランチやデートに着るおしゃれなワンピース)よりはおめかし度が高く、「訪問着(ほうもんぎ)」(洋服でいうと、ドレスアップ用のエレガントなシルクのドレス)よりもフォーマル度は低めで気軽ですが、ドレッシーな着物です。 小紋と同じく名古屋帯を合わせて街歩きやお食事、観劇へ。 袋帯を締めればちょっとしたパーティにも行けてしまえる重宝な着物で、再注目されています。 実は、付下げの前に最初に思い浮かんだのは「散歩着(さんぽぎ)」という着物でした。 「散歩着」とは、小紋(全体に同じ柄が繰り返しある着物)の上前(うわまえ:前に来る裾部分)に、刺繍や大き目の柄を大胆に配したもので、大正時代から昭和の初期にかけて、良家の奥様やお嬢様がお出かけや観劇などに着たおしゃれ着のことです。付下げの前身とも言われていますが、とても数が少ないのでご存知の方も少ないかもしれませんが、着用シーンはまさに今回の企画コンセプトとドンピシャです。 散歩着を頭に浮かべつつも、今回は技術面、コスト面も考え、全体には柄のない「付け下げ」にすることにしました。 金沢や石川に縁のあるモチーフを入れたら、きっと楽しんでいただける! 全体に柄がなくても寂しくならないよう、裾柄は大胆にパッと目を引くように。 足元を上から自撮りしたときに加賀友禅がばっちり写って素敵だね! 肩に柄がポンとあると着座の時に華やかに見えるからいいね。自撮りしたときに柄も一緒に写る! 心結さん、作家 上坂さんの意見も一致していきました。 地紋のある生地でありそうでなかった加賀友禅に 加賀友禅では繊細な糸目(いとめ)を引くためと、上品さも出るため、地紋のない「変わり一越ちりめん」を使うことが多いのですが、今回はフォーマル度を押さえるために敢えて地紋のあるものを選んでみました。作家さんは大変描きにくいので普通は嫌がられます、普通は(笑)。 ですが作家の上坂さんは「面白い!こんな加賀友禅はこれまでないぞ!こんなの一回作ってみたかった~!」と腕まくりして引き受けてくださいました。ということで、思いがけず、これまでになかった加賀友禅の着物を見ることができそうです。(実際、コンセプトに合いそうな付け下げの加賀友禅をリサイクルでも探したのですが「そんなの相当な趣味人しか作らない!」と業界の方々にも言われ、見つけることはできませんでした。) ありそうでなかった加賀友禅の着物。熱意と挑戦がぶつかり合った偶然の産物です。出来上がりが、本当に楽しみです。 「人に映える」着物とは? 「尊い技には美しい色が宿る」 着物の色を学んだ私の師匠の言葉で大好きで大切にしている言葉です。 加賀友禅の優美な色彩が引き立つのは訪問着によくある淡いパステル調の地色で、格調高く、エレガントで、本当に美しく素晴らしいと思います。淡色の地色は、人の顔色を色白に見せる効果があり、品よく控えめな印象に仕上がります。フォーマルシーンではそれが見事に目的を果たしています。 ですが、今回のレンタル着物は「自分が主役」のシーンでも着てほしい着物です。自分を生き生きと、健康的に、若々しく、最高に輝かせる色で、旅先での高揚感を満たしてくれる色がいい。 結婚式に招かれた脇役のTPOで着る着物とはまた狙う印象、目的が違います。 そこで、「人に映える色と柄」を「パーソナルカラー」の考え方で方向付けすることにしました。 「パーソナルカラー」とは、その人が持つ生まれ持った色、肌・髪・瞳・頬・唇などと調和した色、似合う色のことで、色だけではなく、素材感や柄(デザイン)も関連します。 例えていうなら、春の花のように温かで軽い明るい色が似合う人、夏の暑さを吹き飛ばしてくれる爽やかな色が似合う人、実りの秋を思わせる熟れた深みのある色が似合う人、そして冬の雪の白と木々の黒、そこにコントラストを効かせた色合いが似合う人・・・そしてそのどちらもが似合う人や中間の人も。人の肌色、髪色、瞳の色、そして質感、形は様々ですが、ある程度はタイプに分けて系統だてることができます。 金沢の街の色を背景に、着る人自身も映えるようにすり合わせていくと、自然と作るべき色、柄、素材感が見えてきました。 着物の色柄は、本来季節や格、意味を持つものが多いです。それが日本の文化であり、着物独特の美しさに通じます。それも踏まえつつ、今回は客観的に街と人を見た時の色彩調和も考えました。地元の方から海外の方も金沢の街で着物姿を見た時に、着物だけが素敵なのではなく、着ているその人が引き立って素敵に見える、着てこそ着物というわけです。 初めての体験は化繊の着物でもいいと思います。 次に本物に触れたとき、その違いが分かるからです。 金沢の素晴らしい伝統工芸加賀友禅を通じて、着る人も、それを見る人にも笑顔が広がるこのプロジェクトは5着から、小さくて大きなスタートを切ります。 株式会社心結 越田社長のぶれない思いと熱意。 作家 上坂幸栄さんの絵に対する子どものようにまっすぐな姿勢。 ものづくりは刺激的で楽しく、私も笑顔いっぱいで携わらせていただいています。 ご支援いただくみなさまと共に、この笑顔の連鎖を広げていけたら嬉しいです。 ナツメミヤビ 上濃雅子
上坂幸栄さんのすごさは、ヒアリング力と反映力。 「お客様の笑顔をみてやっと作品は完成する」という信条のため、最初のデザインの段階でお客様の意見をしっかり聞いて、反映することが重要と考えいらっしゃいます。 目の前のMacbookpro上で、イラレを起動し、微妙な色の違い、花の大きさの好みを聞いてデザインしていきます。 以下の動画を見ていただくとわかるように、色って微妙な変化なのです。 結局この水引のデザインはなしになったのですが、5着作った着物たちは、一つ一つこうやってヒアリングと反映を重ねていき、生まれました。 (*グレーとからし色は柄が少し変わりました。) 実際1着のデザイン決めるまでには、約2時間×二日という早さででした。コンセプトがしっかり決まっていたので、目指すものが明確でデザインがドンドン進みました。 illustratorを使う前は、紙と色鉛筆でプレゼン。 弟子時代も独立してからも、お客さんとの打合せが大切で、いかに要望を取り入れるかを重視してきた上坂さんは、色鉛筆と紙を使ってのヒアリングがもどかしく感じていたそうです。 事前に書いていったプレゼン用のデザインをたたき台にしてお客さんの要望を聞こうと思っても、お客さんは「もっとこうしたい」という要望を言わなかったからです。 それはそうですよね。お客さんからしたら、作家さんが手書きで何時間もかけて書いてくれたデザインに、「全然違うのがいいです。」「もっと赤くしたい」など言えないんです。 顧客が遠慮せずに、要望を言える、そんなプレゼン用ヒアリング用ツールはないか、目の前で要望を反映してすぐにデザインを決められるツールはないかずっと探していました。 そんな時に出会ったAdobe illustrator(アドビ・イラストレーター)は、まさに上坂さんにとっての理想の塊だったそうです。 花と葉っぱの重なり、鳥の羽一枚一枚を書いていくことで、サイズ調整が可能に。 大きくしたり、小さくしたり、反転したり、いとも簡単にできるようになりました。 これはイラストレータ上でベクトル(ベクター)データを使っているから可能なことだそうです。 ビットマップとベクターの違い
今回のプロジェクトで加賀友禅を製作するのは女流作家【上坂幸栄(うえさか・ゆきえ)さん】です。 ディズニー・ピクサー映画「モンスターズユニバーシティ」と加賀友禅コラボレーション でモンスターいっぱいの振袖を制作したり、国連で展示したり、アルゼンチンで個展をしたり世界中で活躍されています。 「和のモチーフは見る人の心を華やかにする」 「荒れ果てた地下鉄の壁に和柄があれば、犯罪率が下がる」 そんな和の持つパワーを信じて、活動されているクリエイティブな女性です。 10代で加賀友禅の世界に飛び込み、何十枚、何百枚と製作する中で研鑽を積み、独立。 「お客さんのよろこんでいる顔をみて、仕事は完了する」というスタンスで、顧客の好みに寄り添って制作するオーダーメイドのきもの作りをされています。 大切なのは、柄(がら)と地色(じいろ)の調和だと考えています。 そこで、お客さんのほしい色や花をいかにデザインに取り込むかが重要になってきます。 デザインを具現化するツールとして Adobeイラストレーターが大きな役割持っています。 ↓ https://www.adobe.com/jp/customershowcase.html#m9d213ae796a8c7cba06bbcc4fb120b31 この動画はAdobe社のHPの事例集に載ってるんです! こちらは活動の内容がテキスト ↓ https://wwwimages2.adobe.com/content/dam/acom/jp/customer-showcase/Creativity-and-design/pdfs/showcase_yukie-uesaka-ai.pdf