ベテラン俳優陣の中、フレッシュな存在だった佐津川愛美さん。最近ではすっかり女優としての風格が出てきていますが、撮影当時はまだ十代でした。
おかよ役への起用のきっかけから、監督に聞きました。
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「今流行りのアイドルにしたらおしまい」とは口が悪いですが、そんな空気感の中でおかよ役のキャスティングは難航していました。
「純粋無垢という凶器。ウブな女の子の恋心に火が点いて必死になる様子」を演じられる十代ってそうそういませんよね(苦笑)
そんな中で私、脚本家、プロデューサーそれぞれがたまたま観た映画『蝉しぐれ』(05)のふく役で、三人ともが佐津川さんに一目惚れでした。
彼女は静岡出身で、私の母も静岡で、最初はそんな話で盛り上がりました。照れ隠しです。
佐津川さんには、撮影の2ヶ月前から所作指導が始まりました。さらにはだんまりのお稽古も。とても努力家ですから、どちらも一切手を抜くことなく必死に取り組んでいました。もちろん役作りも徹底していて、現場では納得がいくまで話し合いを繰り返しました。
歌舞伎演出をしたとき、いちばん大変だったのは佐津川さんだと思います。振付に所作指導もあって、先生がつきっきりでした。
宮城野と対峙する場面では、涙が止まらなくなり撮影が中断したこともありましたね。
「ああいう女の子が一番むかつくのよ」とはおかよへの“お姉様”方からの感想。国内はもちろん、フィレンツェでもそんな感想がありました。つまり、大成功ですね! まさに純粋無垢という凶器を演じきった証です。
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キャリアの初期から過酷な(?)現場を経験されていたことが伺えますよね。現在のご活躍も納得です。
直近ではドラマ「バベル九朔」(日本テレビ)が10月19日深夜〜スタート。佐津川愛美さんはスナックのママ役だとか! こうして役者さんの成長を見るのも、映画ファンにとって嬉しいものですよね。