こんにちは。失語症の日クラウドファンディング中の人、NPO法人Reジョブ大阪の松嶋です。
クラウドファンディングを始めて12日。なんと、196,280円もの支援が集まりました。
ありがとうございます!
支援してくださっている方々の中には、言語聴覚士の方もいらっしゃいます。
言語聴覚士。私がこの世界に入るきっかけになった友人、今や一緒にNPOを運営している西村紀子さんの職業でもありますが、西村さんに出会うまで、私はこの「言語聴覚士」という仕事を知りませんでした。
言語聴覚士とは、音声機能、言語機能または聴覚に障害のある者について、その機能の維持向上を図るため、言語訓練、その他の訓練、検査、徐辺、その他援助を行う仕事。失語症者の為の訓練等々ももちろん含まれます。
人間はそのコミュニケーションのほとんどを言語で行いますよね。もちろん、笑顔や身振り手振り、ボディタッチから果ては雰囲気という非言語コミュニケーションも大事ですが、現代の日本では、基本的には言葉です。脳の損傷によりそこに不自由を感じている方の為のリハビリテーションを行っているのが言語聴覚士。
私たち、失語症の日制定委員会にも言語聴覚士がいます。今日はその中のお二人が、このクラウドファンディングのために書いた原稿を掲載しますね。
大学3年の時、授業で失語症のある方との出会いに大きな衝撃を受け、自分の知識と経験と人生を傾けるに値する職業と思ってこの仕事を選び、ひたすら歩んできて今年で39年になります。
昨年、失語症の日制定委員会の仲間とともに「失語症の日」の記念日の承認に成功してからの活動を報告します。
突如降りかかったCOVID-19感染拡大防止のために、各地の友の会活動や講演会が中止になり、みんなで集まり会話を楽しむことができませんでした。しかし、今年はご覧のサイトの通り、皆さんの声を集めて本にするという新しい試みを始めています。
また、私自身も非流暢な発話を特徴とする失語症の方が、滑らかに話せるようにする技法である「メロディックイントネーションセラピー(MIT)」のオンラインセミナーを開始することになりました。
この晩秋にスタートするオンラインセミナーを受講すれば、セラピストもそうでない方も資格(セラピストにはMITトレーナー、それ以外の方にはMITアンバサダー)が認定される予定です。
詳細につきましては、日本メロディックイントネーションセラピー協会(日本MIT協会)HPをご覧ください。
失語症向け意思疎通支援者養成事業も各地で始まり、次の派遣事業の開始が待たれます。
「孤独病」と言われる失語症ですが、誰一人取り残さず社会参加ができますよう、心から願っています。
関先生は、三鷹高次脳機能障害研究所の所長です。言語聴覚士なのですが、ご自身が失語症となってしまいました。そのあたりのお話は著書をご覧ください。このクラウドファンディングのリターンにも先生の本があります。
その後、当事者セラピストとして講演活動を盛んにしておられます。また、本文中にもありましたMITに力を入れておられます。私も傍聴させていただいたのですが、メロディに乗せて言葉を発するトレーニング、本当に素晴らしいと思いました。多くの方にぜひとも広まると良いと願っています。
失語症の方々とのお付き合いは、もう40年以上になります。
昔は、リハビリテーションを受けた医療機関ごとに、失語症友の会があり、その医療機関のいわば「卒業生」の集まりでした。それぞれの方には、その方だけのご家族との関係や、仕事、趣味などの経験があります。さまざまな方の人生に触れるという貴重な体験は、今でも私の財産です。
時代は変わり、介護保険ができ、医療機関に入院してリハビリテーションを受けた方々は、退院とともに、介護保険の施設で、通所や在宅でのリハビリテーションを継続されることが多くなりました。それまでの医療機関を中心とした人の集まりは減ってしまいましたが、一方で、出口となる介護保険の機関ごとの友の会はなかなかできません。
NPO法人日本失語症協議会が、友の会の活動を盛り上げようと各地を回られていますが、失語症の方は確実にいらっしゃるのに、ばらばらになっていてまとまってお顔を見ることは難しい状態が続いています。
意思疎通が困難であるという側面から、平成30年度より、失語症のある人々に対して支援者の養成と派遣を行う事業が開始されました。失語症に対して国が初めて行う事業という意味で、とても画期的なことです。
さて、これを活かせるかどうかは、言語聴覚士の肩にもかかっていますが、同時に当事者である失語症のある方々の肩にもかかっています。支援者を目指す一般の人、これから言語聴覚士を目指す人、そして言語聴覚士になってまだ経験年数の浅い人に、失語症について知っていただくチャンスです。失語症のある方々と接する機会が多くなれば、それぞれの方が何に困っていらっしゃるのか、どうすればその課題を改善できるのか、理解も深まります。
ご家族以外の人とのコミュニケーションに対して億劫になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは是非、皆さんの声を聞かせてください。一人の声は小さくても、集まれば大きくすることができます。サロンに行きましょう。友の会に行きましょう。みなさんの声を届けること、そして身近なところでこの制度を使っていただくこと、これがこの制度の基本です。どうぞよろしくお願いします。
立石先生は、失語症の日が承認されてから、私たちが委員会にお誘いした先生です。失語症の日ということであれば、日本言語聴覚士協会に関わってもらわなければ、持続可能な活動にならないと思ったからです。
立石先生の当事者の声から学ぼうという考えは、本当にその通りです。私はここで出てくる「失語症者向け意思疎通支援事業」の講習生です。言語聴覚士の先生たちが作ったテキストやスライドはもちろん勉強になるのですが、実習先や当事者会で、当事者の方たちとおしゃべりした方が何倍も何十倍も分かるのです。
例えば、良かれと思ってしたことが、失語症の人のやる気を削いでしまうということが何回もありました。
私のおせっかい、例えば「それってこういうこと?」と伺うタイミングが早すぎたり、片手で不自由そうな人に対して、お菓子の袋を代わりに開いてあげちゃうとか、そういうことが失語症の方のリハビリとやる気の妨げになることもありました。
どういうタイミングが大事なのか、まずは観察とチャット的な短くて簡単なコミュニケーションが必要だとだんだんわかってきました。
昨年度の失語症の日もそうです。アンケートを見てください。
委員が気づかなかったミス、改善すべき点がたくさん寄せられました。
https://re-job-osaka.org/archives/986
当事者の生の声は、確かにショックでした。一生懸命やればいいってもんじゃないということが、痛いほどわかり、正直落ち込みました。でも、誰のために活動をしているのか、もう一度自分の心に問いました。
そして、当事者の声で発見できた改善点は、今後の役に立つんですね。
失語症者向け意思疎通支援者として、言語聴覚士の先生がたと一緒にこの活動に向き合えることは貴重な機会です。
去年のアンケートをもう一度読み直し、少しずつですが改善していきたいと思います。
失語症のあるみなさん、もっともっと声を、気持ちを聞かせてください。
そして、そんな私たちの活動を理解するのに、ぜひとも、私たちが出す本、このクラウドファンディングのリターンにもある本を、是非読んでみてください。お願いします。