2021/06/20 06:21

1月8日、すべてがこの交渉にかかっていると思うと、とても緊張していました。

担当者と環境部長が来ました。
場所は、農業委員会のロビーを借りました。

事前に話すことをPCにまとめ、議事録を取らせてくださいとお願いしました。

上鶴「地権者さんからの内容証明は届いていますか?」

事業者「はい。」

上鶴「それについてはどうですか?」

事業者「今はなんとも言えません。」

それから、いくつか疑問点を質問しました。

事業者は、住民説明会でわたしたちがソーラーパネルをすぐ壊れるみたいに言ったことに、反発したことがわかりました。

東日本大震災のときには、すべてが停電する中、ソーラーパネルがあったマンションだけは煮炊きができて、みんなが集まって食事をすることができたこと。災害には一番強いこと、壊れることはほとんどないことを話してくれました。

それから、今後は農業に力を入れていくことを話してくれました。遊休農地を活用するために、足の長いパネルを設置し、下の農地で農業をやっていくスタイルにシフトしていくと。

今の日本は、農業だけではほとんど生計が成り立たないので、売電もできる農地というスタイルは、もしかしたら受け入れられるのかもしれないと思いました。これは、農地のまま活用するので、農地転用が必要なくより簡単に増えると思います。

上鶴「わたしたちは、ソーラーパネルの全てを否定しているわけではありません。ただ、作っていい場所とそうでない場所があると思うんです。」

事業者は、ソーラーパネルでどう社会貢献できるか、自分の仕事に誇りをもってやっているんだなということがわかりました。わたしは、とても穏やかに冷静に話ができました。

上鶴「地権者さんは、わたしたちの活動に賛同してくださっています。内容証明では、土地の契約解除の意思を示してくださいました。地域では、75パーセントの署名が集まりました。今日の新聞を見てください。」

ちょうどロビーにあった新聞を見てもらえました。

事業者「わかりました。地権者さんがそう言っているのであれば、この計画は進められないですね。」

わたしは、耳を疑いましたが続けました。

上鶴「3回目の説明会は?」

事業者「中止です。区内には回覧板で中止のお知らせをします。」

上鶴「わかりました。では、今後のやり取りはすべて弁護士さんを通してください。」

事業者「最後にどうしてそこまで反対するか、一番の理由を聞かせてください。」

上鶴・朝子「一番は景観です。平林はとても美しい場所です。平林のみなさんが守って来たからこの景観があるんです。そこにソーラーパネルは作ってはいけないと思います。」

事業者が帰った後、朝子さんが「よかったですね」と言いました。
しかし、にわかに信じられないことでした。

上鶴「ほんとうに止まるかわからないよ。」

朝子「大丈夫です、止まりました。」

朝子さんのまっすぐに人を信じる姿を見せてもらいました。

日本語が通じる事業者だったこと、そして、話を聞いてくれる事業者だったことが幸いでした。

朝子「本当はいい人たちでしたね。」

上鶴「そうだね。」

その後、事業者はすぐに弁護士さんに連絡してくれました。
そして、弁護士さんからは「これまでかかった費用の負担を言って来ているけど、払いますか?」と連絡がありました。わたしは「払います」と即答しました。

そして、これまで協力してくれた関係各所に、報告の連絡をすることに時間を費やしました。
みんな「よくやったね!」と喜んでくれて、だんだんと本当に止められたんだという実感が湧いて来ました。

つづく

もくじ
~プロローグ~はじまりの日
Episode1 二人だけのミーティング
Episode2 神様からの届け物
Episode3 防災に絶対はない
Episode4 地元民がやるしかない
Episode5 そこに愛はあるのか?
Episode6 救世主あらわる
Episode7 新しいことを学ぶ日々
Episode8 不穏な住民説明会
Episode9 土地の売買契約解除に向けて
Episode10 ゴールを決めよう
Episode11ずっと願っていたこと