次に、顧客の成功の実現を徹底的に支援します。ホテルのコンシェルジュはお客様の滞在中のお世話係ですが、顧客とのお付き合いは長期に渡ります。それだけに信頼を勝ち取るとお互い、人間的に、ビジネスの上でも、非常に良いお付き合いができます。そして、その信頼をベースに、顧客の他部署をご紹介いただく、顧客の取引先をご紹介いただくことができます。また、取引上の仕事だけではなく、それ以外の部分でも支援します。例えば、ゴルフ場を使いたいと言ったらご紹介する、食事をしたいと言ったらご紹介する、そうすることで顧客との関係がより深く、太くなっていきます。このような素晴らしい関係を実現するには、現行の仕事の経験、知識を積み重ね、その周辺も学んでおく必要があります。また、顧客が、どんなところでゴルフをして、どんな食事を好むかも知っておかなければなりません。また、社内のネットワーク、社外のネットワークを構築することも重要です。一人でできることには限界があり、他人の力を相互に利用できる関係をつくっていくことだと思います。コンシェルジュの世界的なネットワーク、レ・クレドールのモットーに“service through friendship”という言葉があります。仲間を通してお客様にサービスを提供することを言います。ある繊維会社の顧客の話です。一流大学出身の年齢も若く野心的な購買マンでした。会社の利益を上げるため、少しでも工場の物品を効率的に買いたいという思いがありました。私はその購買マンとよく話をする間柄になりました。その中である使い捨ての製品の価格を下げたいという考えがあることをお聴きしました。私は原料を変更し、使用後に資源ゴミとして有償回収できるスキームを提案しました。非常に興味を持っていただき、何回かの試験の後、採用していただきました。価格も抑えられ、産業廃棄物処理費用もなく、逆にお金がもらえます。全体のコストを大きく下げることに成功しました。その購買マンは社内表彰を受けたとお聞ききしました。これは私の社外のネットワークを用いて、単に製品を安く作って納品するだけでなく、製造から回収までのコストを考えたものです。その購買マンは、後にアメリカの子会社へ出向し、将来の役員候補として嘱望されています。
1982年に発刊された、20世紀に最も売れたアメリカのビジネス書「エクセレント・カンパニー」の共著者であるトム・ピーターズは、この本のはじめの言葉をホテルについての文章で始めています。私たちは夕食を終えてから、ワシントンで二日目の夜を過ごすことにした。仕事で忙しく、最後の都合の良いフライトに乗れなかった。ホテルの予約は入れてなかったが、近くにあたらしいフォーシーズンズがあった。以前にも一度泊まったことがあり、気にいったホテルだ。ロビーを歩いていきながら、一部屋用意してもらえないかと拝み倒すにはどうしたらベストかとあれこれ考え、夜遅くにやってきた客がたいてい直面する冷たい態度を想像して身構えた。驚愕したことに、コンシェルジュは顔をあげるとほほえみ、私たちに名前を呼びかけ、変わりがないことをたずねた。「ピーターズさん、ご無沙汰いたしております」。私たちはたちまち悟った。フォーシーズンズがオープン間もなくして、この地域で、「滞在すべきホテル」となった理由を。コンシェルジュは個人秘書、補佐官、ツアーガイド、旅行会社、オーガナイザー、親友、奇跡のように優秀な部下が融合したものだ。私は、コンシェルジュのやり方を営業マンにも融合させたらどうかと考えました。基本的な精神を「Noと言わない営業マン」とします。顧客からの要望に、「できません」とは絶対に言いません。お客様が何を求めていて、どうしたいのか、それをするにはどんなことができるを考え、提案します。もし不可能な場合は、代替案を提案します。自分の商品、製品がどんなに優れているかよりも顧客が何を望むかを重要視します。例えば、自社で作る製品を売りたいのは当然ですが、顧客の望むものが違う場合は、顧客の望みが叶うことを優先します。そこで顧客に便利性を享受してもらい、信頼を勝ち取り、次の機会に自社製品を買ってもらうのです。 (続く)
会社の組織図をひっくり返して逆三角形にします。上になった底辺は現実のお客様、顧客との接点です。「真実の瞬間」ではないですがこの部分が会社において収益を生む部分です。一番大切な部分です。ここが不調になると事業の根幹の売上が揺らぎます。下の部分の管理職、エグゼクティブは後方支援だと言います。企業理念においても、社員、顧客の満足が第一だ!と言っている会社が多いです。また社員の慰労パーティでエグゼクティブが社員向けにサービスをして日頃の労に感謝するようなことをやっている会社もあります。ただ本心ですか?と問いたいです。現実の忙しさに流され、現場に行かず、エグゼクティブルームに入り切りのエグゼクティブを見かけます。部下とのミスコミュニケーションも発生し、言っていることとやっていることが不一致なので、社員からも、お客様からも信頼を失う事になります。世のCEO、COOの皆様、現場に行きましょう!そして現場で苦労している社員の様子を見ましょう!労いましょう!心から。たまにはランチに誘ったり、差し入れをして上げましょう。社員は粋に感じより頑張ってくれると思います。するとお客様は喜んで買ってくれ、売上は上がって行きます。私は両方をたくさん経験しました。
実際のインタビューですが、インタビューの冒頭に、「インタビューの目的」、「コンサルタントの立ち位置」、「インタビューの扱い方」を説明します。「本当に感じていること、危機感であったり、期待感であったり、本音の部分をぜひ話して下さい。コンサルタントとして雇われている私にどこまで本音を話せるかというところはあると思いますが、会社が活性化し、売上を伸ばすことの範囲の中で、どこにネックがあり、どうすれば顧客を満足させ、売上を上げられるかをぜひお話いただきたいです」「このインタビューは貴方様の上司に報告を上げますが、その前に貴方様に確認していただきます。事実誤認があったり、この部分は削除してもらいたいと言う部分があれば遠慮なく言ってください。それ報告以外は秘密保持契約により口外しません」このようにしておくと安心して本音の話をしてくれます。コンサルティングの中で、現場の本音の聞き取りが大切な出発点です。
私のコンサルティングのSTEP1は「真実の瞬間」と名づけました。中小企業は社員数が多くないので社長から社員までなるべくたくさんの人とのインタビューを行い、皆様の本音を引き出したいと思います。その中にたくさんの真実を見出すことができます。特に顧客と接点を持つ最前線の社員の意見は貴重です。engagemateと言うサイトでこのように言っています。スカンジナビア航空をV字回復させたヤン・カールソンという方がビジネス用語として「真実の瞬間」という言葉を初めて使いました。年間1,000万人の搭乗者に対し、従業員5人が1人の顧客と接点を持つ時間は僅か15秒ほど。「この約15秒間の顧客と接する時間(真実の瞬間)を充実させることこそが経営の成功に繋がる」と考えたカールソンは、顧客のニーズに最適な対応ができるよう社員の育成に注力し、根本からの意識改革を行ったことで経営回復を実現させました。カールソンは後に自叙伝で「企業は顧客の支持があってこそ成り立っているもので、顧客と日常的に接している従業員を大切にすることが企業成長に繋がる」と述べています。私の「真実の瞬間」はカールソンの言う「真実の瞬間」とは違いますが、経営を執行している社長、役員、現場のマネジメントしている部課長、そして顧客と接点を持つ社員、この方々の苦しい、悔しい、そしてワクワクする本音に触れるインタビューは「真実の瞬間」です。この「真実の瞬間」にスポットをあてて経営に生かすことで会社の改革、業績のV字回復を図ります。まさにスカンジナビア航空と同じです。