今からさかのぼること、35年前の1986年。
私が初めて持ったクラスにM君という華奢な体つきをした小さな男の子がいました。
この子は、周りの子と一緒に遊ぶよりも、自分の世界に浸って、一人遊びを好むような子でした。
当時、半ドンだった土曜日の午前の授業が終わっても、帰宅しようとせず、いつまでも教室に残って帰ろうとしません。
教室の後ろの床の上で、一人遊びをしています。
「早く帰りなよー。」
と声をかけますが、返事がありません。
近寄ってみると、床の上で消しゴム人形でサッカーをやっています。
「ほらほら、教室の中ではサッカー禁止でしょ。」
そう言って帰らせようとすると、
「違うもん。サッカーじゃないもん。ゴルフだもん。」
結局、まだ学校に残っていたいだけなのでした。
このM君、たった一年間受け持っただけなんですが、私に会うために、数年前に、カンボジアにまでやってました。
現在、二人の娘と奥様と4人で、アメリカで暮らしています。
某大手企業の海外駐在員として働いているようです。
当時、私のベルトラインほどだった背丈も、追い越すほどに。
そして、こちらの長女。
当時のM君と同じ年で、体型や面影が瓜二つ。
しかも、不思議なことに、しぐさや一人遊びに浸る姿なんかは、当時の彼を彷彿させるんです。
私はタイムスリップしたかのように、1986年当時の彼の言動と重なりました。それは、とても不思議な感覚でした。
話をうなずきながら聞いてあげると、独り言のように次々と話してきます。それも、当時の彼と同じ。
聞いてあげる、受け止めてあげるというのは、最高のコミュニケーションなんですね。
私のイメージは、当時の彼そのもの。
「ねえ、ねえ、明日も来るでしょ。」
「私、ずっと一緒にいてほしいんだけどな。」
と、素直な気持ちをそのまま言葉にする娘さん。
一日行動を共にし、ナイトマーケットで食事をした後、お別れしました。
M君ファミリーは、この後、シェムリアップへ。
私にとっては、とても不思議な体験でした。
今、私がカンボジアで支援活動をやっているということに対しても、彼からは一切のコメントはなし。
ただ、微笑みながら聞いているだけ。是もなし可もなし。
おそらく、当時の私が、子どもたちに伝えていたこと。
「今のあなただから輝いているんだよ。」
そのマインドが、彼の中に生き続けているんだと思いました。
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