今回のクラウドファンディングの目的は、写真集を製作して発行することですが、私のクラウドファンんディングをご覧になった方の中には「えっ?写真集は出版社が出すものなんじゃないですか? 個人が資金を集めなくてはならない写真集っていったいどういうことなのか?」という疑問を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。
その点について、現代の日本における出版事情というのを少し説明したいと思います。
皆さんのお近くにある本屋さんを思い浮かべて下さい。その書店には写真集のコーナーはありますでしょうか?
東京や大阪、名古屋、福岡などの都心部にお住まいの方でしたら、紀伊国屋やブックファースト、ジュンク堂などの大手の書店がありますから、アートのコーナーなどにきっと写真集は置かれていると思います。しかし地方の本屋さんや、駅前の小さな本屋さんではどうでしょうか。
写真集のコーナー自体がほとんど無い本屋さんの方が多いかと思います。
あっても、グラビアアイドルや女優さんの写真集ではないでしょうか。風景写真の写真家さんの写真集は既に人気のある売れ筋の方の写真集は少し置いてあるかもしれませんね。
答えは簡単です。売れないのです。
書店さんも、売れないので置かないのです。
売れ筋の本を置いて、それが売れることで出版社から数パーセントが支払われる訳ですから、売れるとベストセラー本や雑誌を置いていた方が利益が出るのです。商売なのですから当然と言えば当然かもしれませんね。
しばらく前から出版不況が続いており、今尚それは加速しています。
電車の中で小説などを読んでいる方を以前は見かけたかもしれませんが、今は皆さんスマホを見ている方が圧倒的に多い時代です。
写真集というのは、紙代や印刷費といった制作費が一般の本よりも多くかかります。それもあり出版社でも写真集は作りたがりません。内容や写真の良し悪し以前に、本屋さんが置いてくれないので作れないのです。作っても売れなければ在庫を抱えることとなり経営を圧迫するのでリスクを冒すことを避けるようになったのです。
日本は海外と比べても、写真展よりも写真集という文化が強かった国だそうです。
それは、たとえ一般読者に受けない内容だとしても「この重要な内容をウチが出さなければ、世に出ず埋もれたままになってしまう」そのような考えを持つ方々も多くいて、世に残る素晴らしい写真集も多く残ってきたのだそうです。売れる売れないという事とは別に、この先の未来に残すべき物という考えもつ方々に私たち写真家やジャーナリスト、言論人が支えられてきた歴史があります。
しかしながら、本が売れなくなり倒産する出版社や取次店も相次いでいるそうですし、近年ではこれまで多くの写真家を支えてきた大手写真雑誌もいくつか休刊となっています。
そうなってくると写真集などはますます世に出なくなります。作家や写真家たちは自費出版という手段で、自分で制作費をかけて本を作り、それを自分で売って回収する、という方法も増えていると思います。
それが趣味のレベルであれば構わないと思うのですが、広く世間の人に知ってもらいたいと自腹を切って取材したり、長年こつこつと積み重ねてきた大切なことなどが、このままの状況が続けば多くの目に触れないまま埋もれてしますのです。
それは果たしてみなさんにとってよいことなのか。
私がクラウドファンディングに可能性を感じ出版に関するプロジェクトを立ち上げたのは、そうしたすべてを自費出版という形でやらなければいけない状況を少しでも改善しながら、出版したいとの思いでした。
今回の写真集で出版社から私が提示された金額は、今回の目標金額でも足りません。残りの足りない分は私の持ち出しになり、今回の達成金額が、私が出版できる最低限の金額となります。もちろん、これまでの取材費などが出版社やどこからか出ているということもありません。
それでも、これからの未来に残る一冊の写真集を世に出したいと切に願っております。
それは、私にとっても冬青社としても、ずっと歴史に残る写真集となりますので高橋氏と編集を重ね、満足のいく一冊を作り上げお届けしたいと思っています。
皆さんお一人お一人のご支援が、出版への力となります。
今しばらくの間ご支援・ご協力を、どうかよろしくお願い申し上げます。
小関一成