こんにちは。PLANETS編集部の小池真幸です。
いよいよ『モノノメ #2』の発売時期、そしてそれ以上に校了時期が間近に迫ってきました。ここ数日はほぼ自宅に籠もりきりで編集作業に明け暮れていますが、首都圏でも雪をはじめ厳しい寒さが続く中、寒さが苦手な僕にとってはむしろ好都合。一歩ずつ着実に、読者のみなさんにお届けできる状態に近づいていることを噛み締めながら、そして雑誌ができあがる頃には春の足音が聞こえてくることを期待しながら、今日もキーボードを叩いています。
……と言いつつも、「この繁忙期を抜けたらしたいことリスト」を頭の中で日々作り上げているのですが、その中の一つに、ベタながら「心おきなく映画を観にいく」があります。僕は観たい映画ができると、忘れないようにGoogleカレンダーに仮で「〜〜を観る」という予定を入れるようにしているのですが、立て込んでいる時期だと必然的に、その予定はどんどん後ろにスライドされていくことに。そして今、まさにそんな状態です。
ということで、せめてもの慰み(?)に、昨年観てよかった映画を振り返ってみると、ある日本人監督の作品が二つも入っていると気づきました──米アカデミー賞で日本映画で初の作品賞候補入り、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞もあわせて4部門にノミネートされた『ドライブ・マイ・カー』を監督された、濱口竜介さんです。
©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
個人的には、昨年公開された濱口さんの作品としては、最新作『偶然と想像』も昨年末に観てとても感銘を受けたのですが、その少し前に観た『ドライブ・マイ・カー』も圧巻でした。日本映画としては長尺の3時間があっという間に過ぎていく、とても上質な映画体験。それも、派手なアクションや手に汗握る展開で魅せるアッパー系の作品ではまったくなく、むしろ淡々と上質な画や会話、演技やストーリーを見せていく作品です。
ただ、その感想をしっかりと言語化しきることができずにいたのですが、『モノノメ #2』に掲載予定のある企画によって、一気に視界がひらけた感覚があります。
その企画とは、「[特別鼎談]「劇映画的な身体」をめぐって──『ドライブ・マイ・カー』から考える(仮)|宇野常寛×佐渡島庸平×濱口竜介」です。
「宇野さん、濱口と話してみない?」──編集長・宇野とは旧知の間柄である、株式会社コルク代表取締役社長/編集者の佐渡島庸平さんから届いた一通のメールから、この鼎談は生まれました。なんと佐渡島さんと濱口さんは、大学の同級生だったというのです。
『ドライブ・マイ・カー』を観て非常に感銘を受け、久しぶりに濱口さんと話したいと思った佐渡島さん。「せっかくだからこの作品についてより突っ込んだ話ができる人がいたほうが面白いし、濱口にとってもいいことなのではないか」と、編集長・宇野に声をかけてくれたのが、この企画の発端です。
宇野と濱口さんは完全に初対面でしたが、挨拶もそこそこに、映画の核心に切り込む議論に突入。現代の情報環境と劇映画の射程距離、言葉と身体、村上春樹の女性表象、ショットの内と外、演技の「文体」の問題……一本の映画から汲み出せる思考をとことん搾り取った議論となりました。
その盛り上がりをできるだけそのまま入れ込んだ、たっぷり2万字ほど、でもとてつもなく高密度な記事になっていると思います。『ドライブ・マイ・カー』についてはすでにさまざまな言説が出ていますが、そんな中でも特に深く/広い議論になったのではないでしょうか。個人的には、久しぶりに批評家・宇野常寛の本気を見たと感じました。
『ドライブ・マイ・カー』をまだ観ていないという方は、まだまだ絶賛上映中なので、あらかじめ観ておくと、より一層記事が楽しめるのではないかと思います。
僕は三人の議論を聞いて、自分がいかに表層的にしかあの映画を観られていなかったのかを痛感しました。『モノノメ #2』の制作が落ち着いたら、また観に行かなければ……という謎の義務感に駆られています。
そういうわけで、心置きなく観に行けるよう、最後の大詰め作業をがんばります。
『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。