これまでの活動報告は、明るい記事が多いですが、現実はそう明るくもありません。美しくもありません。 高次脳機能障害は、様々な脳の疾患を、しかも「人生のなかばで」患ったために引き起こされる障害です。症状は多様ですが、そのなかでも、次のような特徴がある場合が多いです。 ・相手の気持ちがわかりにくい・感情のコントロールが難しい・依存的になる・意欲が低下する すべての患者さんにこの特徴があるとは限りませんが、他の障害に比べ、高次脳機能障害には、このような「社会的行動障害」が特徴であるとされています。患者さんのことを以前から知っている人であれば、ある日を境に、別人のように、人が変わってしまったように感じるでしょう。たとえ軽度であっても、生活の中で「今までと何か違う」という場面はあり、軽度には、軽度であるがゆえの苦しさがあります。そして、家族はそんな現実を目の当たりにし「こんな人ではなかった」という思いを抱えながら、それからの生活を送ることになります。 人間関係の多くは会話によって成り立っています。気持ちがすれ違ったり、言い争いになるも会話によるものですが、それを修復するのも、さらにお互いの理解を深めるのも会話です。その会話のやり取りが難しくなるのが、高次脳機能障害の症状の一つです。 一番話を聞いてほしい人が目の前にいるのに、自分の気持ちを汲んでほしいのに、その人からは「発してほしい言葉」が出てこない。その辛さは、介護している家族にしかわからないもの。仕事で家族さんと接していて、何よりも大変だと感じるのは、当事者から「感謝」の言葉がないことです。当人も、家族に対し、けして感謝していないわけではないのですが、口に出していう必要性を感じていなかったり、人生の中途で障害者となった自分のことでいっぱいだったりするから言えないということもあるでしょう。家族にしてみれば「これだけ尽くしているのに」という気持ちがわいてくるのは当然です。また、そんな家族を、労い、支える公的制度はありません。今後も厳しいでしょう。 高次脳機能障害者で、病前過ごしていた普通の生活と、今のうまくいっていない状況を比べて、ストレスを溜める人はとても多いです。また病気が原因で、社会に出ることが少なくなると、毎日接する人は家族だけとなりがちで、感情のはけ口は、家族だけに向かいます。当事者は、わかっていても止められない、やめたいのにまたやってしまったなど、感情を爆発させたあとの後悔は深いものです。そして、病気がさせているとわかっていても、感情のはけ口となっている家族は辛いものです。長年、臨床に携わっているお二人の言葉を紹介します。 橋本圭司先生「治ったから社会に戻るのではなく、社会に戻ったから治る」渡邊修先生「社会的行動障害は対人関係のおける行動だから、人と関わることでしか治らない」 つまり、障害を抱えながらでも、「社会に出ていく」ことがとても重要なのです。当然、最初はトラブルが生じるでしょうし、思うようにいかないことも多いでしょう。そして、それを見ている家族は、不安を募らせ、社会へ参加を諦めたり、躊躇したりすることもあるかと思います。そんな家族の思いに寄り添い、励ます人も必要となります。当事者がなんらかの形で社会に参加する、家族を支援する、この二つは両輪なのです。そのためには、この障害についての社会の理解が必要なのです。 障害のせいで社会的行動が取れない、変な人と思われる、それを感じて社会に出るのをやめる、家に引きこもる、家族に当たる、家族が辛い目に遭う、家族と患者が世の中に背を向け引きこもる。この悪循環を断ち切り、好循環に変える為には、「社会の理解」が重要なカギを握ります。同じ疾患同士の集いの場や、医療福祉の現場は必要ですが、もっとダイナミックに社会に戻る為に、私たちひとりひとりの「理解」が要るのです。 高次脳機能障害は、誰にでもなる可能性がある障害です。予防注射もありません。小さい赤ちゃんからお年寄りまで、どんな人でもなる可能性がある障害です。そして、その後の人生をずっと障害と共に歩むのです。まずはこの障害のことを知ることが大切です。人間は、知っているというだけで、姿勢を変えられる生き物です。他者への理解があると、人は、助ける側へと力強く変われるのです。この力強さ、たくましさは、障害者とその家族にとってどれだけ心強いことでしょう。 そしてこの「知る」ということで始まる好循環は、高次脳機能障害に限らず、すべての障害者に通じて言えることだと思います。私たちReジョブ大阪は、このクラウドファンディングやその他活動を通じ、まずはこの障害について知ってもらうよう、これからも発信し続けます。皆様の強い支援に、感謝しております。 Reジョブ大阪 西村紀子
こんにちは。Reジョブ大阪の石原です。クラウドファンディングのご支援、本当にありがとうございます。高次脳機能障害当事者、下川さんの手記出版プロジェクトとして、出版資金の支援をお願いしていますが、この度、出版記念パーティーを大阪東京で開催する予定で、新リターンに設定しました。ぜひ皆さん参加してくださいね。その前に本を完成させなくては! こちらの作業も急ピッチで進めております! さて、高次脳機能障害当事者の下川さんですが、ほぼ毎日、私にお電話をしてくださいます。クラウドファンディングの進捗状況を毎日確認してくださっているようで、 「少しずつ集まっていますね!」「お世話になった人にも、本を紹介しに行きたいです!」 と、意欲に満ちた発言をなさっています。その度に、私もとっても嬉しい気持ちになります。今まで、障害のせいで閉じこもりがちだった方が、社会との繋がりを得られるようになってきた、そして「意欲」まで持つ。なんてすごいことなんでしょう! さらに、下川さんは、なんとスマートフォンも練習されています。そして、下川さんは「LINE」でメッセージを送る練習をされているのですが、内容がいつも、とっても面白いのです。Reジョブ大阪の西村のTwitterで見られますので、是非、見てみてください。 西村紀子(くるみ)Twitterhttps://twitter.com/tadacchi70 最初は、ひらがなばかりで読みにくかったついLINEも、漢字変換ができるようになったり、絵文字が入ってきたり、進化しているのです! ひらがなばかりだったころのTwitterネタが私のことのようです(笑) 漢字変換できるようになりました そして、絵文字も!絵文字は、私たちもそうですが、気持ちを表す補助的な手段として大いに威力を発揮しますね。高次脳機能障害の方の感情表現に向いているのかもしれません。 LINEを打つ下川さん こうして、日々努力されている様子が伝わってきてとても感動いたします。また下川さんは関西人なので、とてもユーモアがあって、内容も面白いのです。 下川さんの原稿を読んだり、LINEを見たりしていると、自分の悩みなんて、小さいことだなと思えてきます。そして「もっと宣伝頑張るぞ!」「仕事も頑張らなきゃ!」「感謝して生きよう!」「母にも感謝しなきゃ、お母さんありがとう!」と自分のモチベーションも上がりまくり、周囲にも感謝しまくりです。とっても良い人になっちゃいます。 夢は広がります。下川さんが、自分でTwitterできるようになったら、是非Twitterで「悩み相談」をしてほしいと思っています。とっても流行ったりして(^^)
皆様、クラウドファンディング開始後1ヶ月、目標金額の100万円を達成することができました。ご支援くださり、本当にありがとうございます。また100万に達したあとも、続々と支援が拡がっています。本当に感謝の気持ちで胸がいっぱいです。 キャンプファイヤさんの後押しもあり、また、Reジョブ大阪の今後の活動の為にも、もう少し挑戦を続けると決意し、ネクストゴールを設定しました。あと50万円です。 こういう仕事をしていると、たまにですが、変なことを言われます。 「NPOなんだよね?お金儲けてどうするの?」 つまり、100万達成したのなら 「ありがとうございました」 で終わりにすべきなのでは?という意見ですね。 こう言われるのには、NPOの認識が間違っているということもあります。非営利とは、株主に利益を分配しないという意味で、利益を出して再投資することは禁じられていないのです。むしろ、きちんと儲けて、きちんと使う。例えば、こんな感じです。 「NPOなんだよね?お金儲けてどうするの?」「社会を良くするの!」 例えば、アメリカでは、予算規模40億円の教育系ソーシャルベンチャーもあります。それだけの予算が組める資金力があれば、国の改革を待たずとも、貧困地域の劣悪な教育環境をダイナミックに変えることもできます。そこまで大きなことはできないかもしれませんが、きちんと利益を上げていれば、私たちでも、近い将来、それこそ高次脳機能障害者を雇うことも可能なのです。また、私たちは、会社員の方がプロボノとして活躍できる場所になる可能性もありますし、NPO側に不足しがちな、組織の運営力や、商品開発力、またコンプライアンス部門のスキルが私たちには必要で、そこをとても重要なものと、私たちの方も考えています。実際、私たち理事(NPO審査中)も、本業はそれぞれ持っているのですが、足りないところだらけです。そういう意味でも、ここで色々な人達と繋がることも大切だと考えています。 ちょっと話が先に進みすぎましたが、要するに、「もっともっと仲間がほしい」ということです。「100万円をくぐったら150万が見えて来た」というより、「もっともっと大勢の仲間と繋がっている自分たちの姿が視界に入ってきた」という感じです。「その夢に向かい、もう少し頑張ってみる!」そういう意気込みでのネクストゴールチャレンジです! ネクストゴール設定に伴い、新しくリターンを追加しました。追加として申し込むこともできます。 【出版記念パーティ[大阪]参加権】Reジョブ大阪が主催する、下川さんの本の出版記念パーティに参加する権利です。リハビリ施設の見学をしたり、嚥下食の試食をしたりする、他にはちょっと見られない、Reジョブ大阪らしいパーティを計画中です。大阪会場では著者の下川さん自身にも、また他の患者さんにも、お話をしていただく予定です。(患者さんの健康状態により変更もあります。その点はご了承ください) 【出版記念パーティ[東京]参加権】Reジョブ大阪が主催する、下川さんの本の出版記念パーティに参加する権利です。リハビリ施設の見学をしたり、嚥下食の試食をしたりする、他にはちょっと見られない、Reジョブ大阪らしいパーティを計画中です。東京会場では、著者の下川さん自身のお話や他の患者さんのお話をビデオで紹介します。 このパーティに関しましては、もちろん私たちも色々な人に交渉中ですが、参加予定者である皆様からのアイディアも募集したいと思っています。いわば、一緒に作り上げるパーティです。 みなさま、引き続きのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
目標額達成しました! このクラウドファンディングを開始して、ちょうど1ヶ月経った昨日、目標金額の100万円を達成することができました!ご支援くださいました皆さま、本当にありがとうございました。皆様には、支援するだけでなく、このプロジェクトをSNSでシェアしたり、ブログに書いてくださったりなど、情報の拡散にもご協力いただきましたこと、感謝しております。私たちの友人知人だけではなく、新しく今回のプロジェクトで私たちのことを知った方からも、たくさんの応援メッセージをいただきました。それは、皆様が情報を拡散してくださったからだと思います。本当に本当にありがとうございます。 なぜクラウドファンディングという方法なのか 「100万円あれば本を1冊出すことじゃなく、もっと多くの人が救えるのでは」そんなメッセージもいただきました。たしかにその通りです。そういう支援の方法はダイレクトでストレートで分かりやすいものでもあり、ほとんどの大手の支援がそのような形で寄付を募っています。でも私たちは、この活動を通じ、ずっと一緒に関わってくれる「仲間」が欲しかったのです。私たちのしていることを応援、拡散して、社会に届けてくれる「仲間」が欲しいのです。「1口寄付したよ」「ありがとう」の一往復ではなく、これから何年も続けていく私たちの活動に、しっかり関わってくれる「仲間」が欲しいのです。 「活動報告」の欄でも記載していますが、リターンである「文字入力」に、高次脳機能障害者の方が関わってくれています。左手しか使えないのに、一生懸命、下川さんの思いを打ち込んでくれました。また、この活動を通じ、他にも、数人の脳損傷の患者さん、患者さん家族と繋がりを持てました。そして、情報提供や家族の相談に応じることで、小さな一歩ではありますが、私たちの活動を始めることができています。これもみなさんのおかげです。感謝しております。 ネクストゴールと新しいリターン キャンプファイヤからの打診もありましたので、活動期間の残り40日、ここで「ネクストゴール」を設定することにしました。プラス50万円の挑戦です。 そこで、大阪で、下川さんを迎えた、出版記念パーティを開催します。これもまた、よくある「達成記念」とは趣を変え、できるだけ多くの人の思いを巻き込んだものにしようと計画中です。例えば、会場を病院にし、介護や検査の器械をみなさんに見ていただくようにすること、食事は「嚥下食」にして、それがどのようなものかを体験してもらうこと、今回のクラウドファンディングで知り合った患者さんたちにも登壇してもらうこと等々、前代未聞の記念パーティにするつもりです。そして、このパーティに関してプレスリリースをし、世の中にも、皆さんの心に起きたような、小さな、しかし確実な波を起こしたいと考えています。下川さんの障害の関係で、東京に彼を連れて行くことはできないのですが、大阪のパーティの様子などを、これまた支援者に手伝ってもらって収録し、関東の支援者の皆さんにも届けたいと思っております。このパーティの参加すること、「参加権」という新たなリターンを作り、近日中に設定致します。会場についても、今から病院をあたり、相談することになりますので、会費などは厳密に計算できないのですが、差額は活動資金の寄付にするという参加権として用意したいと思っています。もしよろしければ、是非、パーティにもいらしてください。そして、その時、私たちに直接お礼を言わせてください。 引き続きのご支援、ご協力、応援を、どうぞ宜しくお願いします。 Reジョブ大阪 石原玉美、西村紀子、松嶋有香
クラファンでつながった仲間 クラファン終了まで残り46日となりました。現在94%の達成率。あともう少しです。支援してくださっている方はのべ152人。すごい数字です。感謝しております。 クラファンが始まって、初めに一気に埋まったのが文字入力のリターンでした。 【スタッフになって本に名前を載せる権利】下川さんの手書きの原稿を、入力する作業です。完成した本に、スタッフとして名前を載せます。 こちらが募集した5枠が、あっという間に集まりました。支援金を支払った人達に入力させるという、一風変わったリターンなのですが、最近はこのような「チーム参加型」のリターンが人気です。さっそくその5人に連絡を取り、チームを結成しました。初めに、5人に意気込みを伺ったのですが、その中で一通のメールが私たち理事の心を強く揺さぶりました。 メールよりこのプロジェクトのぺージを読んで、2年半前に脳梗塞で高次脳機能障害になった弟と一緒に支援したいと思いました。リターンにエントリー出来てとても嬉しいです。入力作業を主に弟に手伝ってもらいたいと思っています。弟は仕事もなく家にずっといますので、この話をしたときとても喜んでくれて、早速、新聞の記事を使って入力の練習を始めています。左手しか使えないこともあり、時間がかかってしまいますので、編集作業が遅れることのないよう、フォローは私が責任をもっていたします。そして、本をひとりでも多くの人の手にとってもらって、下川さんのやりがいに結びつくよう、がんばります! 高次脳機能障害者である下川さんの手記を出版したいと思ってすすめてきたこのプロジェクトですが、当初から私は、下川さんと同じような人が必ずいるはずだと思っていました。つまり、病気になってから職を失っている人。けれども、これまで自分がやってきた仕事と似ていることや自分が好きなことで社会と関わりたいと思っている人です。そして、同じように、何か社会と関わって欲しいと願っている家族もいるはずだと。 彼の病気について、私は詳しく伺ったことがありませんが、メールに書かれている症状から「前頭葉」という最も高次な脳の働きを司る場所の機能が低下しているのではと推測しています。(その後、左前頭葉に梗塞があることを教えてくださいました)前頭葉損傷の場合、いわゆる「やる気」が起きない人が多いのです。病気になって2年半、もう一度、慣れない左手で時間がかかることではあるけれど、この作業に取り組んでみようと思ってくれたことに、強く心を打たれました。しかも、新聞を使って練習を始めるなんて! リハビリの先 医療におけるリハビリだけでは、どうしても越えられない壁があります。そう、リハビリの先には「何か」が必要なのです。その「何か」のために、地味でしかない、苦痛でしかないリハビリを、患者さんは頑張るのです。その「何か」とは「社会とのつながり」であったり「自分の役割」なのでしょう。 例えば、車椅子に座れるようになりたい、それは車椅子で出かけたい場所があるからです。言葉が喋れるようになりたい、それは話をしたい相手がいるからです。 リハビリの「先」がないと、やる気が起きにくいのに、医療の現場ではそれを「意欲低下」とカルテに書いて、症状の一つとして終わりにしていることが非常に多いのです。私はそうではないと思います。リハビリをする気が起きないのは、その人にとって、そのリハビリをすることで何かを得られる希望がないからで、ごくごく当たり前のことではないかと思います。高次脳機能障害者ならなおさらです。 私は、普通の人でさえ、その先に何かがないとできない単純作業を、この弟さんが「やろう」と思ってくれたこと、そのことに感動しました。 リレーされる思い メールより新聞のコラムで練習をしているときに、ちゃんとできるかどうか様子を見ていたのですが、 私が言わなくても勝手に練習しているところをみると、PCでの文字入力作業自体、彼にとって全然苦にならないのだとわかりました。もともとSEの仕事をしていたので、パソコン作業が好きなのでしょう。ただ、本人の集中力を考えると、1回の作業として、新聞のコラムの量ぐらいがちょうどいいのかなと感じました。1日家にいるので、体力に合わせてやってもらったらいいと判断しています。根を詰めてやると疲れてしまうこともわかったので、原稿の入力は最初は1日1枚から始めました。だんだん慣れてきて、今日は、休憩を取りながらですが、2枚と少し、約90分、作業してくれました。入力作業の感想を聞くと「やりごたえがあった」とのことです。 高次脳機能障害の下川さん、その下川さんの原稿を入力する高次脳機能障害の弟さん。思いはリレーされています。 「まずは目の前の一人から!」と始めたこのプロジェクトですが、今回のことを含め、もう数名の患者さんととつながることができました。「自分がやりたいこと、得意なことで、社会と関わりたい」これは、障害があろうとなかろうと、みんなが望むことだと思います。 まだ先かなと思っていたそんな活動を、すでに始めることができて、大変嬉しく思っています。