2023/02/04 06:00

皆様、

おはようございます。とらいふ武蔵野の井口でございます。


 とらいふぁーむでは、春に向けて、育てる植物に関して検討を進めています。近日中に、こちらの活動報告を通じて、皆様にご報告いたします。リクエスト等がございましたら、ぜひ とらいふ武蔵野 までご連絡ください!


* * *


 とらいふぁーむの試みは、端的に言えば、高齢者ケアは本質的に福祉だけでなく社会全体にかかわるものである、という観点を原理にしています。高齢者福祉事業は、決してただ「福祉の専門家たちによって確立された知識と技術を、施設内で利用者に適用する」という活動に限定されてはなりません。2000年(平成12年)に先達たちによって導き出された介護保険法の成立と、いわゆる「介護の社会化」がもたらしたものは、社会集団、家族、個人といった関係のあり方に、ひいては政治にも資本主義にも密接に関わってきました。


 老人ホームという施設もまた、利用者と家族、職員やその他の成員がいっしょに形成するひとつの「社会」である以上、施設の内と外の社会を、どのように接続するかが本質的な課題でるといえます。施設の内と外に暮らす人々の共生の場が創造されるとき、利用者は「要介護者(ケアされる人)」を、職員は「ケアする人」を演じることなく、互いに関係を深めることができます。仮に、施設が閉塞した空間である場合には、施設自体も、外の社会を模倣しうる形で(「個人主義」や「自己責任論」に依拠して)諸個人の疎外や地域コミュニティの希薄化を亢進させる場所になりかねません。その意味で、高齢者介護施設という場所をどのように構成するかを考えることは、現代日本を生きる私たち全員にとって、未来世代に対する宿題であるとも言えます。


ー GO SLOW:ていねいに生きよう ー


 2025年を目前に控えた今、介護職員の「担い手不足」は深刻な課題として現前し続けています。その真因が政治イデオロギーにせよ、パンデミックにせよ、昨今は人と人との「つながり」をますます確認しにくい状況となっています。そのような中で、極言すれば、「自分とは何の接点もない老人の世話をさせるための人手を、できるだけ安価で補填し続けようとすること」では事態の好転は望めません。言うまでもなく、このような視座にある限り、「人手」による不正行為や虐待事件が止まることはあり得ません。

 いっぽうで、複雑な法律・制度の制約のもとで運営される福祉事業所の中には、経営と公益のあいだで、いまこの瞬間も筆舌に尽くし難い倫理的ジレンマを抱えながら働いている管理者や職員たちがいます。利用者の人生に大いに関わる「介護」という仕事は、人との「つながり」を感じられるか否かで、その「質」が大きく変動します。種々の制約の中で、「つながり」よりも目の前の作業の「量」に追われ、やりがいを見失い、介護の仕事自体から離れてしまうというケースは珍しくありません。


 しかしながら、このような状況は、昨日今日に始まったものではありません。世界中と比較しても先駆的と言える高齢者福祉事業を実装してきた武蔵野市内においては、地域福祉をリードしてきた有志たちがいち早く集い、「地域包括ケア研究会」が発起されました(2022年12月13日発足)。この研究会では、未来世代に対して武蔵野市という場所をどのように継承していくかについて、福祉の視点から濃密な議論がなされています。


 とらいふぁーむにおいても、先輩方の叡智にはまだまだ到底及びませんが、自分たちにできることを日々考え、実践していきたいと思っています。もちろんそれらは、「公助【ではなく】互助・共助こそが重要だ」と主張するものではありません。とらいふぁーむの目的のひとつは、イヴァン・イリイチ(Ivan Illich, 1926-2002)の言葉を借りれば、「人間的な相互依存のうちに実現された個的自由」の達成を目指す居場所をつくることであると言えます。


ー CONVIVIALITY:おたがいさま ー


 私たち「とらいふ武蔵野」は引き続き、法人理念である「人の幸せ・地域の幸せ・福祉文化の創造」を実践して、地域の皆様に必要とされる施設であり続けるために尽力して参ります。



今朝の武蔵野市は曇天ですが、大寒波が到来した先週よりは少し暖かく感じます。

よい週末をお過ごしください。



とらいふ武蔵野
井口 佳亮