山西セイケイの「セイケイ」漢字に直すと「整経」と書きます。『整=ととの(える)』+『経=たて(糸)』の意味で出来たと思われる言葉で、織物のたて糸を準備する仕事です。「経」の字は地球の緯度経度の漢字をイメージすると解りやすいかもしれません。普通に生活していたら、先ず巡り会わない言葉なのではないでしょうか。
機屋さん(布を織る仕事)から注文を受けて、お預かりした糸を、必要な巾に、必要な本数、適切な密度、均等な張力、必要な長さ、指示通りのデザインで、織機に仕掛けるためのパーツ(ビームや千切りと呼ばれるもの)に、巻き取って納品します。
経糸で作る柄であるストライプは整経屋の仕事で、ボーダーは機屋さんの仕事、チェックは合作だとイメージして頂くとわかりやすいかも知れません。
分業の発達した京都などの産地では「下職」と呼ばれる仕事の一つで、預かった材料の形を変えてお客様に返すことから、糸染屋さんなどと同じく、一括りに「加工屋」と呼ばれることもあります。
整経には一般的に「手整経」「一本整経」「部分整経」「荒巻整経」の四種類があって、手>一本>部分>荒巻の順に糸のロスが少なく、小ロットでの生産に向いています。けれど逆にそのぶん時間や手間がかかるため、たくさん作らなければならない場合、向いているのは逆になります。
ほかにも、それぞれの整経方法には、色々な制約やメリット、デメリットがあって、上手く使い分けながら色々な布が作られています。山西整経で出来るのは、その内の「部分整経」で他の整経は出来ません。
使っている部分整経機は、 随分古いシンプルなモノですが、余分なモノがほとんど付いていないので、人の入る余地が多く残されていて、手間さえ掛ければ、柔軟に幅広い要望に対応出来る利点があります。
整経(セイケイ)雰囲気だけでも感じていただけたでしょうか?
こんなたった一点に特化した物づくりを、それほど多くの方にご支持いただけるとは思えませんが、そんなものも少し面白いなと思って頂けたら幸いです。