「ストライプで出来ることはし尽くされた」私がこの仕事を始めた頃に、よく言われた言葉です。整経は外から見れば、布を作る上でのほんの些細でつまらない一工程なのかも知れませんが、いくら仕事を重ねても、私にはまだまだ底が見えません。
もしもストライプの全てを知ることが出来て、1000本の経糸の布ならば、1000種の素材、1000種の太さ、1000種の色を自由にコントロールし切れたなら、一体どんな事が実現できるのかなと、たまに考えます。
もしかすると、動物の皮膚や、雨や風、水の流れや炎のような自然の造形にも、少しは迫れるかも知れません。
この「0.01」と言うプロダクトに取り組むにあたり、考えたことは「何故だかわからないけれど」と言う感覚についてです。
世の中には理由はわからないけれど、どうにも心惹かれたり、逆に不快だったり、そんな機会が溢れています。
実際にその正体が何なのかはわかりませんが、今回は、時間の経過や環境などによる、意識しないレベルの小さな変化や作用が影響していると仮定し、麻織物のストライプで、誰かの心に小さな引っ掛かりを生み出すことが出来ないかと考えました。それで、テーマとして取り上げたのが三日月の明かりでした。
職人の、おそらくは理解を得られないような偏った挑戦や過剰なこだわり、そんなものでは恐らく誰も救えはしませんし、空腹も満たせません。「難しいことをすれば良いわけじゃ無い」とか「なんの意味があるのか」とも良く言われますし、理解もしているつもりです。
けれど私は、そんな職人のエゴの塊のようなロマンチックなものが好きですし、もっとその先が見てみたいとも思います。個人的には、そんな仕事が許容される世の中なら素敵だなとも思うのですがー