整経屋は、機屋さん、若しくは機屋さんに向けて発注されるデザイナーさんの望まれたことにお答えするのが役割です。通常は作家さんのように、自分の名前の付いたプロダクトに取り組むことはありません。
しかしながら、昔は多くあった難しい仕事や、新しい取り組みはどんどんと減っていて、ニーズはシンプルなモノ、ベーシックなモノの方へ大きく傾き、近年は震えるような仕事に出会える機会は多く無くて、充実感を得ることも難しく成っています。
それで、技術の向上を言い訳に、ほんの少しではありますがコソコソと個人的プロダクトに取り組むようになりました。
今回の取り組み、当初はもう少し伝わりやすいものを考えていたのですが、ある方の「安くて良いもの、多くの人が望む美しいもの、快適なものなら、我々のような企業でも実現できる。だから、我々には絶対に手出しできないモノが見たい。個人的には、例えば一度使ったら崩れ落ちるようなモノでも良いと思う」と言う言葉に痺れ、振り切ったコンセプトへ向け舵を切りました。
もちろん、出来上がったものは多くの方の理解を得られるものではありませんが、取り組んだ日々は私にとって大きな財産となっています。僅かでも、何処かの不要なものが必要な方のもとへお届けできたらステキだなと思います。