みなさまこんにちは!車内からお送りする今日の西田は、徳島県上勝町へ向かっています。走行距離12万キロを超えた商用タウンエースに乗って、1人6時間半の車旅。最高だぜ!アメリカン!!(?)
今回、西田はTOUCAというフィールドワークプログラムに参加させていただき、「ゼロ ウエイスト宣言」を掲げる上勝町に2泊3日の視察研修に行きました。
さあ、ここまでですでにいくつかの新しい情報がでてきたため、まずはそれぞれについて簡潔にご説明いたします。
TOUCAとは?
TOUCAとは、“地域”をフィールドに遊び学ぶ、コミュニティ。
文化、くらし、食、自然、循環など、多様なテーマに地域の最前線で向き合う人と地域を巡る人が出会い深め、観光にとどまらない人と地域の関係性を探索し、未来の世代へ繋げていくことをテーマに集まった人々によるフィールドワークを実践する会です。
このプログラムに参加をするのは2度目、前回は富山県・彫刻の町「井波」に赴きました。
徳島県、ゼロ・ウェイストのまち上勝町
今回訪れた徳島県上勝町は森林が89%を占め、人口も1,700人程度、5年後には1,000人を切ると予想され、町民平均年齢も59.2歳と、いわゆる限界集落です。
野焼きも焼却炉も使えなくなり、上勝町はごみの多分別という独自の道を歩み始め、上勝町は2003年、日本初のゼロ・ウェイスト宣言を掲げます。
そこから2017年、ごみの45分別でリサイクル率80%を達成しました。
上勝町のゼロ・ウェイストは、ゼロ・ウェイストに関心を持つ消費者を増やし、製造者が作った物に最後まで責任を持つ社会をつくることを目指します。
そんな場所に一体何をしに行くのか?
私はこのTOUCAの活動以外にも、年に複数回、日本の地方部へ視察研修に赴きます。
日本の個々の地域に潜む個性。それは急に現れたものではなく、連綿と受け継がれ、今なおその時の面影を残し続けるものです。実に長い歴史を持つ日本という国。その個性は十把一絡げに語るのは難しい。
そうした地域の昔と今を知ることで、「私が温泉津でできること」を模索したりするのです。
どの地域にも、まちに関わっている人たちがたくさんいます。それは有名な方もいれば、静かにコツコツと取り組んでいる方もいらっしゃる。それぞれの視点とやり方と関わり合い方、得意分野は違えど、目指すところは同じ。
もちろん、うまくいくことばかりではありません。今回の上勝町でも、輝かしいゼロ・ウェイスト宣言が生んだ陰りがありました。
グローバルからローカルへ。ネットワーク社会の受付を作った二人の留学生
INOW Kamikatsu。海外へ、上勝の “Sustainability & Zero Waste” を紡ぐ語りべです。
ある日、INOWのカナさんとシルさんで、研究テーマであるサステナビリティのリサーチで日本を調べた際に上勝を知りフィールドワークを実施。ゼロ・ウェイストセンターはあるけれど、ナビゲーションがなかった時代。彼ら自身で地域をフィールドリサーチし、キーマンらと出会いコミュニケーションを進め、今となっては移住され、こうした「学びの旅」のコーディネーター & ナビゲーター的役割として上勝のグローカルネットワークの窓口にとなっているようです。
上勝町には、こうして「ゼロ・ウェイスト」を起点に、それに関連する地域への経済効果と新たな貢献の形が生まれています。
祖母の田畑を継ぐ際に見えた課題と自分ができること
私はここで、シシトトラ - 浅野農園 - 秀美さんのお話にとても心を打たれます。
Uターンで京都から地元上勝町に戻り、祖母の田畑を継ぐべく、秀美さん自ら山に入る。先祖が代々大切にしてきた山のその奥の山。そこにはあまりにも多くのゴミが山積みになっていたそうです。
45品目分別によるリサイクル。とても容易にできることではなく、特にご高齢の方であればあるほど、うまくできない。なかなか人にも聞けない、歳を重ねれば重ねるほど、「今さら?」と思われてしまうかもしれない。地元に貢献したい思いが強くありながら、それができていない自分に恥じ入る。
そのとき、とても孤独を感じておられたのではないかと思います。そして、それは私たちを含め、すべての人に訪れる事象かもしれない。
そうした現実を目の当たりにしながら秀美さんは、山間部を先祖代々開拓した歴史、祖父母が大切に守ってきた農園、そして自分ができることとは何かを考え、「100年以上続けてきた農業をこの先100年先も続くように」と事業を引き継がれています。
そんな彼女は、上勝町がゼロ・ウェイストを掲げることは大切だと語ります。
ご自身の目で山積みになったゴミを目の当たりにしたという現状があり、そしてそれを我々フィールドリサーチに来た人にも、しっかり現実課題として語りつぐ。とても、とても貴重だと思いませんか?
光ある取り組みの陰にある課題、こうしたところも包括して自分ができることを考えていこうと、より一層決意が固まった日でした。
西田がおもったこと
どう考えたって、ゼロ・ウェイスト宣言の実践は大変です。めんどくさいです。とは言いながら慣れたらできそうです。
もっとダイナミックに環境を変えたりシステムを入れられないの?という声も聞こえてきそうです。はじめ、西田はそう思っていました。でもなんかそうじゃないな、と旅の終わりには思いはじめました。
ともにTOUCA合宿に参加された、Green Cities, Inc. の山崎 ミツさんが面白いプレゼンをしてくださいました。
人口が急激に増加した期間のほうが異常値で、そこからいずれ近似曲線による緩やかな増加地点に戻る時が来るだけと考える。
日本の人口は明治維新以後の150年間に急激に増加。そして、100年間で急激に減少します。約75年後の2100年で、100年前の明治後半ぐらいの人口に戻ります。
これから減少をたどる過程で、大量消費大量生産の工業的プロセスは経済効率も悪く不要となり、足るを知る暮らしが一般的になったとしましょう。そうすると、旅の冒頭で思った「ダイナミックに環境を変えたりシステムを入れられないの?」という考えがふわりとどこかに飛んでいきました。
上勝町の町民は、町民のみなさま自身の日々の取り組みが如何にすごいことか、気づかれていないのではないかしらんと思いました。
世界から、サステナビリティモデルの町として注目を集める上勝町。知らず知らずのうちに、積み上げてきた20年がその関心を集め、世界から人を呼び込む「機会」になっている。
もう一つ。上勝町にある産業のはっぱビジネス「イロドリ」。これもゼロ・ウェイストの一つであると私は考えます。かやぶき学校の溜本さんの既存資源のリユースの取り組みも、秀美さんの柚香(ゆこう)の高付加価値化もゼロ・ウェイストの一つではないでしょうか。
在る資源。それは人の手で生み出され人の手で始末される。
私達が生きている今もすべては過程に過ぎませんが、やっぱり考え続けることが大切だなと思った次第です。
以上で「ゼロ ウエイスト宣言」を掲げる上勝町で2泊3日の視察研修のレポートを締めくくります。
最後に、今回上勝町が持つ機会と課題を呈し、それを考え議論する場を設けてくださった SPEC BIO LABORATORY, inc の田中達也さん。今回が、私にとってはあまり考えたこともなかった「社会と福祉」の観点から、自らの地域の課題にも考えを巡らせるとても大切なきっかけになりました。本当にありがとうございます。
そしてTOUCAプロジェクトのみなさま、いつも貴重な学びな機会をありがとうございます。
ここまでのご精読ありがとうございました!!