クラウドファンディング開始から4週間が経過し、残り2週間を切りました。
皆さまのご支援と拡散のおかげで、進捗は50%を超えています!
プロジェクトの完遂に向けて、あともうしばらくお付き合いいただけますと幸いです。
さて今回の活動報告も前回に引き続き「Smooth」開発時のこぼれ話です。
今回は「Smooth」のレシピ構築の全体像について、生地作りの観点からお話したいと思います。
フレーバー面とテクスチャ面のバランス
「Smooth」の開発では、カカオそのものの芳しいフレーバーを新たな形で愉しんでいただくべく、シンプルな Bean to Bar チョコレートの「フレーバーリリースを変えること」と「テクスチャを柔らかくすること」を目指していました。
そしてそのための方法として「水分を含ませること」と「油脂の組成を変えること」を主な技術的アプローチとして採用し、前々回の活動報告では「油脂の組成」について深堀りしていきました。
この「油脂の組成を変えること」は「テクスチャを柔らかくすること」につながるアプローチで、一方の「水分を含ませること」は前回の活動報告に記した通り「水溶性香気成分の広がりを良くする」ためのアプローチであり、それぞれ主な目的が異なっています。
しかしながら、「油脂の組成を変える=バターや米油を加える」ことはテクスチャだけでなくフレーバーにも影響を及ぼしますし、逆にフレーバーリリースを変えるために「水分を含ませる」ことはテクスチャにも影響を及ぼします。
このように複雑な要因が絡み合うものを作っていくには、まずは上図のようにそれぞれの原材料が持つ役割を明確にしたうえで、それぞれの原材料を組み合わせた時、そしてその配合割合を変えた時にどのような変化が起きるのかを理論と現象の両面で大まかに掴んでおくことが重要です。
具体的には、まずは配合割合を大きく変えたレシピで8パターンほど作り、それぞれのレシピにおける理論的な予想と実際の仕上がりを比較してそのギャップを確認するとともに、それぞれのレシピ同士を比較することで配合割合を変えた時の仕上がりの変化についても大まかな傾向を掴んでいきました。
最終的には細かい部分を詰めていくために多くの試作を実施する必要はありますが、最初から全ての可能性を細かく試していくといくら時間があっても足りなくなってしまうため、仮のレシピで大まかにあたりを付けることから始めることで効率化を図ったわけです。
それでも実際には半年以上の試作期間を要したわけで、原材料が増えて要素が複雑になるほどチョコレートとしてのバリエーションは多様になる一方で、求めるフレーバーやテクスチャに近づけていくための検討には多大な時間がかかるということを改めて実感した開発プロセスとなりました。
混ぜ合わせる順番と温度の重要性
上記のような流れで「Smooth」のレシピを決めていったわけですが、実は原材料の配合割合だけでなく、それぞれの原材料を混ぜ合わせる順番と温度も重要なのです。
特に今回はチョコレートを含む油脂相と水分とを乳化させてガナッシュ状の生地にしていますので、混ぜ合わせる順番と温度が違えば乳化状態が変わり、その結果最終的なフレーバーやテクスチャも変わってしまいます。
例えば油脂相と水分を乳化させる順番として、「砂糖を水分に溶解させてから油脂相と混ぜて乳化させる」のか、それとも「油脂相と水分を乳化させてから砂糖を分散させる」のか、この違いで生地中の砂糖の存在位置が変わるため仕上がりは変わってきますし、小麦粉を入れるタイミングによっても構造の出来方が変わるので仕上がりは変わります。
また、均質な生地を作るためにはチョコレートを含む油脂相が溶けた状態を維持しながら水分と乳化させたり小麦粉を加えたりする必要があるため、生地を作り始めてから型に流し込んで焼成を始める前までの温度管理も重要になってきます。
このように原材料の配合割合だけでなく、混ぜ合わせる順番や温度も条件検討を行う必要があったため多くの時間を要してしまいましたが、今後の商品開発に活かせそうな知見もたくさん蓄積できましたので、意味のある試行錯誤だったかなと感じています。
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今回は「Smooth」開発時のこぼれ話、生地作り編をお届けしました。
原材料を増やす毎に配合割合のパターンが指数関数的に増え、そこに混ぜ合わせる順番や温度の要素も関わってきて仕上がりが変わっていくため、レシピ設計と試作検討に膨大な時間をかけた「Smooth」。
それだけ Bean to Bar チョコレートの、カカオの新たな可能性を感じた開発でしたし、この魅力をとことん追究して皆さまにお届けしたいという想いで試作に取り組んできました。
モノ自体が仕上がって販売され始めると、その開発過程の話をそこまで詳しく記す機会も無くなってくるかと思いますので、クラウドファンディングの期間中にご紹介して何かしら「なるほど」と思ってもらえると良いかなと思っています。
募集期間は残り2週間弱とわずかになってきましたが、引き続きプロジェクトの拡散にご協力いただけますと幸いです!