調律師の松本安生さんがオーバーホールの前段階として、状態をチェックしに来ました。松本さんの手によって細かに分解され、100年前の息吹がそこかしこに漏れる気配を感じた3時間。1㎜ほどの狂いも許さないピアノ設計の精密さも然る事ながら、100年前の手仕事とは思えぬ根気の要る調整の数々、それをこの100年間さまざまな人々の手によって修繕されてきた痕跡を見ると、楽器もまた人の身体と同じように、絶妙なバランスで生きているのだ…と実感しました。何しろ弦の張力が1本80㎏以上、全体で20tもの張力が鋳鉄やピン板に掛かっており、それを解くことで筐体そのものが崩壊する可能性もあり、豊かな経験と感性がモノを言う仕事。⇒松本さんによれば、少なくとも一度は弦を総入れ替えしているとのこと。 鍵盤のセラミックやハンマーヘッドも交換されているそう。 清水さんご夫妻がご尽力されたに違いありません。今回の修繕ではピン板(弦を張りを保つピンをトルクで支える板)が重要なポイントとなっており、音色の個性を生み出すところとして国産ではなくドイツ製の板でなければならない…と松本さん。その土地の風土で育った木を使うことで、ドレスデン生まれの『100歳ピアノ』は本来の音色を響かせるのだ…というお答えが、この短絡的社会の近視眼的思考に冷や水を浴びせるようで、非常に印象的でした。田中音友堂の田中直彦さんと岩井社長、調律師松本安生さん。いやはや本物であろう…とする指向性こそが、人を育てるのだと心底思った次第です。このあと、部品調達や塗装のタイミングなど細やかな設計をして、『100歳ピアノ』はいよいよ長い修繕期間に入ります。また報告いたします。【bozzo】#photobybozzo






