皆さんこんにちは。Legacy3.11実行委員の中村奈保子です。
私は13年前の東日本大震災のとき、子どもがちょうど小学校に上がる直前でした。あの時は東京もものすごく揺れ、何度も襲ってくる余震、全ての電車が止まり街中に歩く人が溢れ、テレビで見た地震や津波の映像、そして原発事故・・・。
それから、子どもの命を守りたいという想いで、NPO法人みんなのデータサイトの事務局の仕事をしています。みんなのデータサイトは、誰でも簡単に検索して知ることができるよう、全国の市民放射能測定室の測定データを連結して公開しています。
目に見えない放射性物質を測定値という客観的なデータとして知ることは、ひばくを避けるということが目的ですが、原発事故というのがどのようなものだったのかを後世にきちんと記録として正しく残していくこともまたとても大切だと考えています。なぜなら、記録として残っていないものは、いずれ忘れられ、あるいは忘れさせられて「なかったこと」になってしまうからです。
さて、そんな私がこの展覧会にかける想いは、「伝えたい」ということです。
13年たった今、海外の方にとって、東日本大震災はどのように受け止められているでしょうか。そもそもどれくらいご存知だったでしょうか。イタリアもまた地震や噴火があり、日本同様に災害の多い国でもあります。その方々に、この東日本大震災から生まれた表現を見ていただき、どんな語らいができるでしょうか。
今回会場にいらっしゃる海外の方が 東日本大震災がどのようなものだったのか? もしかしたら全然知らないか忘れているかもしれない、そんなことも想定し、入り口を入ってすぐのエリアで、資料を展示するコーナーを考えてきました。
のべ4000人の市民の力で描いた、東日本全体の土壌を測定してその放射能濃度を明らかにした地図も展示します。また、地震、津波、原発事故このことをふかんできる資料として、せんだいメディアテーク3がつ11にちをわすれないセンター、そして、東日本大震災原子力災害伝承館に協力いただきました。 映像や写真、グラフ等の資料の選定や翻訳などの準備に関して、この2つの施設の方々には昼夜を問わず親身に相談に乗っていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
そして、出展されるアーティストさんとやりとりをしたり、その作品のモデルになった方々の思いをお聞かせいただくなかで、私自身も改めて東日本大震災について振り返り、理解を深め、被害に遭われた方々の想いを受け止めており、ミラノ でお伝えしたいことは日々増えています。希望を得た人もいれば、まだまだ渦中にいる方も。しかし皆さん、前を向いて懸命に生きていらっしゃる。その尊さを伝えることが、Legacy3.11展の開催の意味ではないかと思います。
『社会彫刻』 という言葉があるそうです。 それは、ドイツのヨーゼフ・ボイスの提唱した概念で、あらゆる人間は自らの創造性によって社会の幸福に寄与しうる、すなわち、誰でも未来に向けて社会を彫刻しうるし、しなければならない、という呼びかけである。とあります。
つまり、より良い未来を作るために、社会に変化をもたらしたく起こす行動や活動であれば、誰もが社会彫刻家になりえる、ということなのかな?と私は理解しました。
今回クラウドファンディングという苦渋の決断になってしまいましたが、開始数日にして、思ってもみなかった多くの方々に参加していただいていることには、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。より良い未来になるよう、拡散やご支援を通じてともに社会に引っ掻き傷をつけるお仲間が増えているということなのかも!と、勇気と力をいただいています。ほんとうにありがとうございます。
最後にこの展覧会の実現のために尽力してくれている IULM大学のグイド・フェリッリ先生、後援をいただいたミラノ市、そして日本総領事館に深く感謝申し上げます。皆様からのお気持ちを無駄にしないよう、この展覧会を無事開催することがご恩に報いると思い、引き続き準備を頑張ります!
8月30日午後5時時点の支援金額は、1,187,100円(14%達成) 残り62日です。
どうか周りの人に「こんなことやってる人たちがいるよ」と伝えていただければ幸いです。
写真:2023/11/13 おれたちの伝承館(福島県南相馬市小高区)にて
左から 平井有太・中筋純・柳澤史樹・中村奈保子