
[謹賀新年]
新年明けましておめでとうございます。
旧年中は格別のご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
新春を迎えるにあたり、スペインの伝統的な食文化であり、私たちが誇りを持ってお届けする生ハムについて、その深い歴史と魅力をご紹介させていただきたいと思います。
スペイン2大生ハムの違いから、その奥深い世界まで、分かりやすく解説しております。新年最初のお時間に、ぜひゆっくりとお楽しみください。
スペイン2大生ハムを徹底解説|歴史から楽しみ方まで
スペイン産生ハムの魅力に惹かれながらも、種類の多さや価格帯の違いに戸惑いを感じていませんか? 本場スペインでは、生ハムは単なる食材ではなく、長い歴史と伝統に裏打ちされた誇り高き食文化です。
しかし、「ハモン・イベリコ」と「ハモン・セラーノ」の違いや、それぞれの特徴を正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
本日は、スペイン産生ハムについて、歴史から製法、種類、そして楽しみ方まで、詳しくご紹介します。
高級品として知られる「ハモン・イベリコ」から、日常的に親しまれている「ハモン・セラーノ」まで、それぞれの特徴や魅力を分かりやすく解説していきます。このコラムを読めば、あなたもスペイン産生ハムの奥深い世界を存分に楽しめるようになるはずです。

スペイン産生ハムとは?
基本的な特徴
スペイン産生ハムは、豚のもも肉を塩漬けにし、自然乾燥させて作られる伝統的な加工食品です。スペイン語で「ハモン(jamón)」と呼ばれ、他のヨーロッパの生ハムとは異なる独自の製法と味わいを持っています。最も特徴的なのは、スペインの気候を活かした自然熟成方式で、寒暖の差が大きく乾燥した気候が、独特の旨味と香りを生み出します。
製造工程の特徴
生ハムの製造は、まず新鮮な豚のもも肉を厳選することから始まります。その後、以下のような工程を経て完成に至ります
塩漬け 海塩のみを使用し、肉の重量に応じて約1日/kg程度の塩漬けを行います。
塩抜き 余分な塩分を取り除き、肉を均一な状態にします。
乾燥 温度と湿度が管理された環境で、徐々に水分を抜いていきます。
熟成 最も重要な工程で、製品によって12ヶ月から48ヶ月以上の期間をかけます。
この製造過程では、添加物や保存料を一切使用せず、塩と時間、そして空気だけで旨味を引き出していきます。
品質管理と認証制度
スペイン産生ハムの品質は、厳格な基準によって管理されています。特に高級品については、原産地呼称保護制度(DOP Denominación de Origen Protegida)によって、生産地域や製法が厳しく規定されています。これにより、伝統的な製法と品質が守られ、消費者は安心して本物の味を楽しむことができるんです。

スペイン産生ハムの歴史
古代からの継承
スペインにおける生ハムの歴史は、紀元前にまで遡ります。フェニキア人が豚をイベリア半島に持ち込んだことが、現在のスペイン産生ハム文化の始まりとされています。当時は冷蔵技術がなく、塩漬けによる保存が肉を長期保存する唯一の方法でした。この保存方法が、やがて独自の食文化として発展していきました。
ローマ時代の発展
紀元前2世紀頃には、すでにローマ帝国でスペイン産生ハムが珍重されていたという記録が残っています。古代ローマの博物学者プリニウスの著作には、イベリア半島産の塩漬け豚肉の味わいについての記述があり、当時からその品質の高さが評価されていたことが分かります。
中世における転換点
スペインの生ハム文化に大きな影響を与えたのが、8世紀から15世紀まで続いたイスラム教徒による支配とその後のレコンキスタ(国土回復運動)です。イスラム教徒が豚肉を食べないことから、豚肉の消費はキリスト教徒のアイデンティティを示すものとなりました。特に、生ハムの製造と消費は、キリスト教文化の象徴として重要な意味を持つようになりました。
近代化と品質向上
19世紀以降、交通網の発達により、生ハムの流通範囲が広がりました。20世紀に入ると、品質管理技術の向上や衛生基準の確立により、より安全で高品質な生産が可能になりました。1986年のEU加盟後は、原産地呼称保護制度(DOP)の導入により、伝統的な製法と品質が制度的に保護されるようになっています。
現代における評価
現在、スペイン産生ハムは世界中で高い評価を受けており、特にハモン・イベリコ・デ・ベジョータは、世界最高級の食材の一つとして認められています。スペイン国内では年間消費量が一人当たり約5kgに達し、日常的な食材としても愛されています。

スペイン産生ハムの種類
ハモン・セラーノの特徴
ハモン・セラーノは、白豚(主にドゥロック種、ランドレース種、ラージホワイト種など)から作られる生ハムです。熟成期間は12〜24ヶ月で、繊細な塩味と程よい旨味が特徴です。鮮やかなピンク色で、脂身は白色を呈し、初めての方でも食べやすい味わいです。比較的手頃な価格で、スペイン産生ハムの約90%を占めており、日常的に楽しまれています。
ハモン・セラーノの等級
ハモン・セラーノは熟成期間によって、ボデガ(最低12ヶ月熟成)、レセルバ(最低15ヶ月熟成)、グラン・レセルバ(最低18ヶ月熟成)の3つに分類されます。
ハモン・イベリコの特徴
ハモン・イベリコは、イベリア豚から作られる最高級の生ハムです。24〜48ヶ月以上の熟成期間を経て作られ、濃厚な旨味と甘み、豊かな香りが特徴です。深い赤色で、脂身は黄味がかった白色を呈し、室温でとろけるほど柔らかく、オレイン酸を多く含んでいます。高価で、特にベジョータは最高級品として扱われています。
ハモン・イベリコの等級
イベリコ豚の飼育方法と血統により、ベジョータ、セボ・デ・カンポ、セボ、イベリコ交配種の4つのランクに分類されます。最高級のベジョータは、100%イベリア豚の純血種を使用し、どんぐりを中心とした自然放牧で育てられます。セボ・デ・カンポは牧草地での放牧と穀物飼料、セボは穀物飼料による畜舎飼育で育てられます。それぞれ黒、緑、白のタグで識別されます。
ハモン・イベリコの産地
主要な原産地呼称保護地域(DOP)
スペインのハモン・イベリコ生産は、厳格な原産地呼称保護制度(DOP)によって管理されています。中でも四大産地として知られているのが、デエサ・デ・エストレマドゥーラ、ハブーゴ、ロス・ペドロチェス、そしてギフエロです。
デエサ・デ・エストレマドゥーラは、エストレマドゥーラ州に位置し、広大などんぐりの森(デエサ)を有する最大の生産地です。標高400〜700メートルの高地に位置し、夏は暑く冬は寒い大陸性気候が、生ハムの熟成に理想的な環境を生み出しています。
ハブーゴは、ウエルバ県シエラ・デ・アラセナ地方に位置する伝統ある産地です。年間を通じて安定した気温と適度な湿度により、独特の風味を持つ生ハムが生産されています。山岳地帯の気候を巧みに活用した熟成方法は、他の産地には見られない特徴となっています。
コルドバ県北部に位置するロス・ペドロチェスは、比較的小規模な生産地ながら、その品質の高さで高い評価を受けています。乾燥した気候と標高の高さを活かし、凝縮された旨味が特徴的な生ハムを生み出しています。
サラマンカ県のギフエロは、最も古い生産地の一つとして知られています。標高約1,000メートルという高地に位置し、寒暖の差が大きく乾燥した気候が、生ハムに深い味わいを与えています。
気候と地理の重要性
生ハムの品質は、その土地の気候と地理的条件に大きく左右されます。標高の高い場所での乾燥した空気は、生ハムの適切な熟成を促します。また、寒暖の差が大きい気候は、旨味成分を凝縮させる効果があります。各産地では、その土地特有の気候を活かした熟成方法が確立されており、それが独自の味わいを生み出す要因となっています。
伝統的な生産方法の継承
各産地では、何世紀にもわたって継承されてきた独自の製法が今も大切に守られています。塩漬けの期間や方法、乾燥室の環境管理、熟成庫での保管方法など、細部にわたる技術が職人たちによって受け継がれています。これらの伝統的な製法と、その土地特有の気候風土が組み合わさることで、それぞれの産地ならではの味わいが生まれているのです。

スペイン産生ハムとワインのペアリング
基本的な相性の考え方
スペイン産生ハムの魅力をより一層引き立てるのが、適切なワインとのマリアージュです。生ハムの種類によって異なる旨味や香り、塩味の強さを考慮し、それらと調和するワインを選ぶことで、より豊かな味わいを楽しむことができます。ハモン・セラーノは、繊細な塩味と程よい旨味を持つため、軽やかな味わいのワインと好相性です。特に、フレッシュな白ワインや若い赤ワインがおすすめです。スペインの白ワイン「アルバリーニョ」や「ベルデホ」は、生き生きとした酸と爽やかな果実味が、ハモン・セラーノの味わいを引き立てます。一方、ハモン・イベリコ、特にベジョータは、濃厚な旨味とナッツのような複雑な風味を持つため、より力強いワインと合わせるのが理想的です。スペインを代表する赤ワイン「リオハ」の熟成タイプや、「リベラ・デル・ドゥエロ」の豊かなボディと果実味は、ベジョータの深い味わいと見事なハーモニーを奏でます。
シェリー酒との素晴らしい出会い
スペイン産生ハムとの相性を語る上で、欠かせないのがシェリー酒の存在です。特にフィノやマンサニージャといった辛口タイプは、生ハムの塩味と脂の旨味を絶妙にバランスさせます。シェリー酒独特の複雑な香りと、生ハムの熟成香が織りなす味わいの調和は、スペインならではの食文化を体現しているといえるでしょう。
時間帯や季節による楽しみ方
生ハムとワインのペアリングは、時間帯や季節によっても変化をつけると楽しみが広がります。夏の昼下がりには、冷えた白ワインやシェリー酒と共に軽やかに。夕暮れ時には、赤ワインと共にじっくりと味わう。そんな風に、その時々の気分や場面に合わせて楽しむことで、スペイン産生ハムの多彩な魅力を存分に味わうことができます。
食事全体のバランスを考える
生ハムとワインを楽しむ際は、他の料理とのバランスも大切です。例えば、オリーブやナッツ類、スペイン産のチーズなども一緒に供することで、より豊かな食事の時間を演出することができます。ワインの選択も、これら全体のバランスを考慮して行うと、より満足度の高い食事となるでしょう。

まとめ
スペイン産生ハムは、数千年の歴史と伝統に支えられた珠玉の食材です。ハモン・セラーノの親しみやすい味わいから、ハモン・イベリコ・デ・ベジョータの極上の風味まで、その種類は豊富で、それぞれに異なる魅力があります。製法や産地による違いを理解し、ワインとの相性を考慮することで、より深い味わいを楽しむことができます。また、スペインの食文化における生ハムの重要性を知ることで、単なる食材以上の価値を見出すことができるでしょう。ぜひ、このコラムで得た知識を活かして、皆様も本場スペインの味わいをご自宅で楽しんでみてください。



