このプロジェクトが、クラファンまで進めることができたのは、福岡県八女郡の広川町社会福祉協議会の皆さんとの協働とそこでの深く得難い学びのおかげです。初めての訪問は23年9月、その年の7月に起きていた豪雨災害での被災状況や避難所運営についてお聴きするためでした。これまでずっと「広川町は大丈夫」と住民が何となく信じていた地域を襲った「町政最大の災害」。その生々しい被害をお伺いするとともに、災害ボランティアセンターの拠点になっていた社会福祉協議会の職員の皆さんの、未経験の混乱の中でもケアに満ち溢れた活動に心を打たれたのを憶えています(炎天下の中活動して帰ってくるボランティアさんのために、毎日洗濯して冷やしたタオルを用意して出迎えていらしたそうです!)。さらに、私たちの取り組みを試作品とともにご説明すると、「気になったのが汚泥やカビのにおいです。湿気のにおいというか。(水害を受けた町民の自宅では)濡れた畳とか、濡れたタオルとか、そういうものが結構においを発するんですよね。そういったにおいを除去する、改善するというのは大切なので、乾燥と一緒に対策ができるといいなと思います」「においを感じるシーンって、災害支援の中で結構あって。ただ、現場で『におうね』って言えないじゃないですか」「我々も正直、こういう現場にいると、においに対してもこれが当たり前なのかなと思ってしまうことがあるんですよね。(今回のようなプロジェクトで)連携ができたりすると、おもしろいですね」(事務局次長 江口信也さん)など、理解と興味を示してくださいました。とはいえ、私たちが日常で災害時のにおいを体験することは困難です。そして、そのようなにおいに私たちの試作品(ナノイー)はどれだけ効果を発揮するものなのか。そこで、12月には再度訪問して、災害時に気になっていたにおいが付着した現物、様々なアイテムを対象にした実験を開催しました。その結果、参加いただいた職員の皆さんが(実は私たちも)驚くほどの消臭効果を発揮!江口さんからは「正直、もともとのにおいが強いものだったので、体感できるほどの効果があるのかは不安でした。でも、効果が劇的に感じられて、本当にすごいと思いました。やっぱり避難所では、靴や下駄箱のにおいはみなさん気になさる。避難所にさりげなく置いてあったりすると、使いやすいのかなと。災害が起きなくても、いろいろなシーンで使えそうです」とコメントいただきました。ある学生は、職員さんの「そうそう、このにおい!」との声に、嗅覚が記憶と強くつながっていることを改めて認識。私は、実験に参加いただいた皆さんが「本当に臭わなくなってる!」と明るく盛り上がる姿に、緊迫感ある避難所におけるにおいケアの意義を強く感じました。この実験での手応えが、その後の共同での実証実験につながり、プロジェクトが大きく進む原動力になったのです。





