
製造免許を取得するための申請――
それは、ただ書類を整えて出せば終わり、というものではありませんでした。
実際、税務署とのやり取りは8〜9回におよびました。過去の先人たちの申請書を参考にしながら、形式は整えたつもりでも、それだけでは十分ではありません。痛感したのは、**「結局、意味を理解していなければ、まったく意味がない」**ということ。
「なぜその情報が必要なのか」「どんな目的で提出するのか」を本質的に理解しなければ、審査は前に進まないのです。さらに追い討ちをかけたのが、計画変更に伴う事業計画書類の再提出でした。想定外のトラブルで醸造所の計画が変わり、それにあわせて提出資料のすべてを見直す必要が出てきたのです。
税務署の担当官からは、**「このままだと審査は通らない。一度申請を撤回してはどうか」**とまで言われました。その言葉が突き刺さった日の夜、パソコンの前で、ひたすら調べ、資料をつくり直し、翌日再度提出に税務署へ――そんな日々が続きました。
正直、心が折れそうにもなりました。それでも続けられたのは、「楽しい未来」を想像し続けたことと、「自分の役割は絶対に果たす」と信じたこと、それだけです。
そして、ついに。「製造免許の交付式の行いますので、7月2日に大船渡税務署まで来ていただけますか」という知らせを受けたときは、言葉にならない感情が込み上げてきました。
同時に思ったのは、**「これはゴールではなく、スタートだ」**ということ。うれしさとプレッシャーが混ざり合う中で、いよいよ私たちの酒づくりが始まろうとしています。





