
1.はじめに
ヴィヴァルディ《四季》は、クラシック音楽の中でも特に多くの人に親しまれている作品のひとつです。その理由は、聴いた瞬間に「情景」が目に浮かぶようなわかりやすさと、豊かな表現力にあります。
今回は、《四季》の中から「春」第1楽章をご紹介します。
2.鳥のさえずりから始まる春の情景
冒頭の華やかなテーマは、まさに"春が来た!"という喜びに満ちています。軽やかなリズムと明るい音色の中に、小鳥たちのさえずりを模したフレーズが登場します。これはヴァイオリンで短い音符を連ねることで描かれており、実際に演奏していても、その音がまるで跳ねるように生き生きとして感じられます。
さらに、水のせせらぎのような背景が流れたり、春の雷(いかずち)を表す激しいパッセージが突然あらわれたりと、音楽はさまざまな自然の変化を描き出していきます。
3.ヴィヴァルディが仕掛けた"聴く絵画"
《四季》には、それぞれの楽章に対応した「ソネット(詩)」が付けられており、作曲者自身がどのような情景を描こうとしたかが示されています。
たとえば「春」第1楽章には、こんな内容の描写があります:
小鳥たちが喜びの歌をうたい交わす
泉がそよ風に揺れながら流れる
空が曇り、雷が鳴り渡るが、やがて再び穏やかな空気に戻る
これらの場面が、音楽の進行に合わせて順番に展開していくことで、まるで短編映画のような「聴く絵画」になっているのです。
4.小池彩夏のコメント
冒頭の鳥のさえずりを奏でるたびに、音が空へ舞い上がるような高揚を感じます。弓の繊細な動きが草花の揺れや風の流れを描き、自然と一体になる瞬間がとても好きです。雷の場面では、張りつめた空気を弓に乗せて放つように。音が風景を描く、この楽章はまさに春の詩だと思います。
(南さんは今回のステージ構成では《四季》は演奏されませんので、コメントは小池彩夏が担当します)
5.次回予告
次回は、《春》第2楽章をご紹介します。にぎやかな第1楽章から一転して、穏やかで牧歌的な雰囲気に変わります。「春の日のまどろみ」のような空気感を、どのように表現するのか。どうぞご期待ください。






