
支援者のみなさま、こんにちは。
株式会社アニマルウェルフェア/JAWCO 代表の岩田です。
昨日は、こどもの日に向けて「命の文化」のお話をさせていただきました。 お読みくださったみなさま、本当にありがとうございました。
今日は、少しだけ硬めのお話をさせてください。
意見の分かれるテーマかもしれませんが、獣医師として、そしてこの国でアニマルウェルフェアの仕事をする者として、 どうしても、お伝えしたいことがあります。
1|憲法記念日に、考えたこと
今日は、5月3日。憲法記念日でした。
ぼくは憲法学者ではないので、難しい議論はできません。
しかし、法律を守り、実行させる門番としての公務員経験が長かったです。
ただ、この日になると、いつも考えることがあります。
法律は、誰のためにあるのか。
そして、法律は、誰の声を拾っているのか。
2|「愛護法」という、この国の現実
日本には、「動物の愛護及び管理に関する法律」―― 通称、動物愛護法(愛護法)があります。
この法律で、ぼくたちはずいぶん長いあいだ、 動物に関するすべての問題を、 処理してきました。
ペットの問題も、 畜産動物の問題も、 実験動物の問題も、 野生動物への餌やり問題も、 多頭飼育崩壊の問題も――
ぜんぶ、愛護法ひとつに、ねじ込んできたのです。
その結果、何が起きているか。
3|たとえば、ハトの事件
先日、こんなニュースがありました。
ハトに餌をやっていた方が、動物愛護法違反として書類送検された、というのです。
正直、最初に見たとき、 ぼくは、目が点になりました。
ハトに餌をあげる行為が、なぜ「動物愛護法違反」?
愛護法は、本来、動物を虐待することを罰する法律です。 それを、餌のやり過ぎ問題に「迂回適用」している。
担当者の方も「エサやりそのものを禁止する法律がない」とコメントされていました。 要するに、ほかに使える法律がないから、愛護法に押し付けたということです。
これは、誰が悪いという話ではありません。
法律の側に、穴があるのです。
4|「愛護法」は、誰のための法律か
ここで、ぼくがずっと感じてきた、率直なことを書きます。
愛護法は、本当の意味で「動物のための法律」ではありません。
愛護法は、 ペットを「可愛い」と思う人、 動物を「可哀想」と思う人――
つまり、人間の感情を守るための法律です。
「可愛い動物が傷ついているのを見たくない」 「可哀想な動物がかわいそうだから救いたい」
その気持ち自体は、もちろん尊いものです。 ぼくも、それを否定する気は、まったくありません。
でも、それと、動物そのものの権利・福祉を守ることは、別の話です。
5|だから、産業動物は「対象外」になる
愛護法が「人の感情を守る法律」だから、何が起きるか。
人の目に触れない動物は、事実上、対象外になります。
たとえば、産業動物。
豚も、牛も、鶏も―― ぼくが16年間、と畜場で見続けた命たちは、 愛護法の「精神」の中には、ほとんど入っていません。
なぜなら、産業動物は、 ふだんスーパーで「可愛い」とも「可哀想」とも、 思われない存在だからです。
人の感情の網に、引っかからない。
だから、何百万頭の命が、 法律の「空白地帯」で扱われ続けてきました。
6|獣医師として、悔しいのです
正直に申し上げます。
愛護法という枠の中で、 産業動物の福祉を改善しようとする努力は、 ずっと続けられてきました。
でも、根っこが「人の感情を守る法律」である以上、 そこから産業動物に光を当てるのは、構造的に無理なのです。
ハトに餌をやった人を罰する力はあるのに、 何百万頭の豚の生涯を変える力は、ない。
それが、今の愛護法の現実です。
獣医師として、これは、本当に悔しい。
そして、おかしい。
7|だから、AW法(アニマルウェルフェア法)が必要なのです
ぼくが、いま、本気で訴えていること。
それは――
この国に、新しい「アニマルウェルフェア法」が必要だ、ということです。
愛護法を否定するわけではありません。 愛護法は、ペットや伴侶動物の福祉のために、これからも必要です。
でも、それとは別に、動物そのものの「センチエンス(感受性)」を法益とする、新しい法律を、 日本にもつくらなければならない。
EUにはすでにあります。 イギリスにも、ニュージーランドにも、 形は違えど、AW法的な考え方が根づいています。
日本だけが、「愛護法ひとつでぜんぶ処理する」という、世界から見れば、かなり奇妙な状態にあります。
8|JAWCOは、その「先取り」です
ぼくが、株式会社アニマルウェルフェアを立ち上げ、 JAWCO(日本動物福祉認証機構)をつくったのは――
国の法律ができるのを、待っていられないからです。
法律ができるのには、5年、10年、いえ、もしかしたら20年かかるかもしれません。 でも、その間にも、命は毎日、扱われていきます。
だから、まずは民間で、 獣医師主導で、第三者認証として、 「人の感情ではなく、動物そのものの福祉を見る基準」をつくり、 動かし始めました。
そして、その先で、国にAW法を実装することを目指していきます。
THE HOUBOQの一頭は、 その壮大な道のりの、最初の一歩です。
9|支援者のみなさまへ
法律の話なんて、難しいし、退屈ですよね。
でも、ぼくがこの活動報告に書きたかったのは――
今の日本の法律のままでは、産業動物の命は守れない、 という、ひとつの事実です。
そして、その事実に向き合っているのは、 今のところ、JAWCOと株式会社アニマルウェルフェア、 そして、みなさま支援者の方々です。
愛護法が悪いのではありません。愛護法が背負わされすぎているのです。
その負担を解きほぐし、 産業動物には産業動物のための、 野生動物には野生動物のための、 それぞれふさわしい法律を整えていく。
それが、ぼくの、これからの仕事のひとつです。
ネクストゴールに向けて、 最後まで、共に走らせてください。
株式会社アニマルウェルフェア/一般社団法人日本動物福祉認証機構(JAWCO)代表 岩田 憲明



