
支援者のみなさま、こんばんは。
株式会社アニマルウェルフェア/JAWCO 代表の岩田です。
今日は5月5日、こどもの日。 連休も、もうすぐ終わりますね。
夜のお時間に、少しだけ重めのお話を、させてください。
獣医師として、そして、これから来る時代を生きていく子どもたちの大人として―― 「AIの時代に、人間が失ってはいけないもの」について、 ぼくなりに、考えてきたことを書きます。
1|AIと、向き合う日々
正直に申し上げます。
ぼくは、AIをとても便利に使わせてもらっています。
文章を整える助けにも、調べ物にも、資料の整理にも。 獣医師として、JAWCOの代表として、 日々のあらゆる場面で、AIに頼る時間は確実に増えています。
それは、否定しません。
しかし、それと同時に――「これは、人間が考えなければいけないことだ」と、ハッとする瞬間も、確実に増えています。
今日の活動報告は、その「ハッとする瞬間」のお話です。
2|AIは、たぶん、こう答える
たとえば、AIにこう聞いたら、どう答えるでしょうか。
「畜産において、もっとも効率的な飼育方法は何ですか?」
たぶんAIは、こんなふうに整理して答えてくれます。
単位面積あたりの収益最大化のためには、 集約飼育、自動給餌、最適化された餌、 病気予防のための定期投薬――
いいえ、文句のつけようのない、合理的な答えです。
でも――
AIの答えのなかには、豚の「いま」がありません。
豚は、土を掘りたい。 豚は、群れで眠りたい。 豚は、走り回りたい。
そういう「豚にとっての一日」は、 効率最大化の式のなかには、最初から、項目として存在していないのです。
3|「最適解」が見落とすもの
AIは、与えられた条件のなかで、最適解を出してくれます。
でも、「何を条件に入れ、何を入れないか」―― それを決めるのは、人間です。
ここに、ぼくは、強い危機感を持っています。
AIが導き出す効率は、すばらしい。 でも、その効率の式に、
動物の感じる痛みや喜び 環境への長期的な負荷 その地域に暮らす人の誇り そして、命というもの自体の重み
これらが項目として組み込まれていなければ、 最適解は、最適解の顔をした、何かの取りこぼしになってしまう。
ぼくは、そう感じています。
4|事例ひとつ|AIによる「家畜の表情解析」
具体的な話を、ひとつ。
近年、AIを使った「家畜の表情・行動解析」が、世界各地で実用化されつつあります。 カメラで豚や牛の様子を24時間モニタリングし、 ストレスや病気の兆候を、人間より早く検知する仕組みです。
これ自体は、素晴らしい技術です。 獣医師として、ぼくも歓迎しています。
でも、ここで問われるのは、 「異常を検知した、その先で、人間は何をするのか」です。
AIが「この豚はストレスが高い」と教えてくれた。 そのとき――
「環境を変えて、ストレスを減らそう」と動くのか 「投薬で症状だけ抑えて出荷しよう」と動くのか 「効率が悪い個体だから、早めに処分しよう」と動くのか
この判断は、AIにはできません。人間が、自分の倫理観で、決めるしかない。
技術は中立です。 それを「命を守る方向」に使うか、「効率最優先」に使うかは、最終的に、人間の生命倫理の問題です。
5|事例ふたつ|遺伝子編集と「設計される命」
もうひとつの事例を。
遺伝子編集技術は、すでに畜産分野でも進んでいます。 病気に強い豚、より大きく育つ牛、 特定の栄養成分を多く含む卵を産む鶏――。
技術的には、もう、できるのです。
ここでもまた、AIによる遺伝子配列の最適化が、 「効率」をどんどん加速させていく。
でも、ぼくは思うのです。
「私たちは、命を、どこまで設計してよいのか」
この問いに、AIは答えを持ちません。 科学技術も、答えを持ちません。
これに答えられるのは、生命倫理という、人間だけが持つ問いの作法だけです。
6|動物の扱いは、人間の扱いとつながっている
ここまで、動物の話をしてきましたが、 ぼくが本当にお伝えしたいのは、もう一段深いところにあります。
動物をどう扱うかは、人間をどう扱うかと、つながっている。
効率優先で動物を「処理」する社会は、 やがて、効率の悪い人間も「処理」しはじめます。
設計された命を当たり前とする社会は、 やがて、人間にもデザインを求めはじめます。
これは、極端な未来予想ではなく、過去の歴史が、何度も示してきたことです。
だからこそ、ぼくは、 動物のアニマルウェルフェアを問うことが、人間自身のウェルフェアを守ることにつながる――
そう、本気で信じています。
これが、One Welfareの本当の意味です。
7|AIに任せてはいけない問い
AI時代に、人間が失ってはいけないもの。 それは何か。
ぼくは、こう答えます。
「答えのない問いを、自分の言葉で問い続ける力」
AIは、答えをくれます。 でも、AIは、「問うべき問い」を選んでくれない。
「効率」を問えば、効率の答えが返ってくる。 「コスト」を問えば、コストの答えが返ってくる。
でも、
「この命を、どう扱うべきか」 「次の世代に、何を残すべきか」 「私たちは、どんな社会で生きたいのか」
こういう問いは、人間が、人間の言葉で、問い続けないと、消えてしまう問いです。
そして、消えてしまった問いは、 誰にも答えられないまま、 社会の片隅で、静かに腐っていきます。
8|こどもの日の夜に、思うこと
今日、こどもの日。
ぼくは、AIの時代に育っていく子どもたちに、 「AIに答えを聞けるようになる力」より、 「AIに任せてはいけない問いを見分ける力」を、 渡していきたい。
そう、強く思っています。
技術は進む。 それは止められないし、止めるべきでもない。
でも、技術が進むほど、「人間にしかできないこと」の輪郭は、はっきりしてくる。
その「人間にしかできないこと」のひとつが、 生命倫理です。
そして、生命倫理の最前線にあるのが、 ぼくたちの食卓に並ぶ、命の扱われ方なのです。
9|支援者のみなさまへ
少し重いお話を、最後までお読みくださってありがとうございます。
THE HOUBOQの一頭は、 ただのお肉ではありません。
それは、AI時代にあっても、 人間が手放してはいけない「命を見つめる目」を、 ぼくたちなりの方法で、社会に取り戻すための試みです。
ネクストゴールに向けて、 最後まで、共に走らせてください。
明日で連休最終日ですね、 みなさまにとって、 やさしい夜となりますように。
株式会社アニマルウェルフェア
代表 獣医師 岩田憲明



