パンダノン島滞在3日目。私たちは突如、大きな問題に直面しました。今後の授業で使うはずだった大切な教材や道具類を、まとめて紛失してしまったのです。メンバーの荷物はもちろん、直前まで滞在していたマクタン島のホテルにも問い合わせましたが、どこにも見当たりません。途方に暮れつつも、午前中は急遽、手元にあるものだけで行えるよう授業計画の再構築に追われました。そんな絶望的な状況に、希望の光が差し込みます。事情を知ったNGO「ゴーシェア」の皆さんが、マクタン島から必要な資材を緊急で届けてくれることになったのです。マクタン島からパンダノン島までは、船で1時間以上。天候によっては2時間近くかかる道のりです。決して簡単なことではないのに、まさかその日のうちに届けていただけるなんて……。迅速かつ温かいサポートに、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。もし彼らの支援がなければ、と思うとゾッとします。午後は無事に届いた資材のおかげで気持ちを切り替え、「ネットリテラシー」と「折り紙」の授業を実施できました。実はパンダノン島でも、近年少しずつスマホが普及し始めています。コインを入れると一定時間Wi-Fiが繋がる機械の周りには、スマホを手に集まる島の人々の姿が日常的に見られます。だからこそ、今この島でネットリテラシーを伝えることには大きな意味があると感じています。また、島内には「レンタルスマホ」という独自のサービスがあり、1台のスマホを家族や友人と共有して使える仕組みが整っています。子どもたちはこれを利用して、TikTokやInstagramを見たり、アニメを楽しんだりしています。このように、情報に触れる機会が急速に増えているからこそ、インターネットの安全で正しい使い方を伝えるべく、私たちはネットリテラシーの授業を行うことにしました。島で実施する初めての座学だったため、いくつかの不安がありました。「途中で飽きて帰ってしまう子がいるのではないか」「小さなお子さんにとって『ネット上の見知らぬ人への警戒』というテーマは難しすぎるのではないか」そこで私たちは、イラストを使った丁寧な解説やクイズを交えるなど、子どもたちを置き去りにしないための工夫を凝らして授業に臨みました。しかし、そんな心配は無用でした。誇張抜きで参加者全員が、まっすぐ私たちの目を見て話を聞いてくれたのです。授業は、私たちの英語をゴーシェア所属の「シーモンキー」が現地のビサヤ語に通訳する形で進めました。英語に馴染みのない子どもたちにとって、私たちの言葉そのものは理解しづらかったはずです。それでも、言葉の壁を越えて真摯に耳を傾けてくれる姿勢に、胸が熱くなりました。「伝えたい」という私たちの思い以上に、彼らの「知りたい」「受け止めたい」という真っ直ぐな姿勢がそこにはありました。国境や言語を超えて心を通わせるために本当に必要なのは、流暢な言葉ではなく、相手と向き合う誠実な姿勢なのだと教えられた瞬間でした。こうして初の座学を無事に終え、続いて「折り紙体験プログラム」に移りました。実はこの授業、事前にメンバー全員が折り紙の折り方を完璧にマスターしておく必要があったのですが……ここで私たちが苦戦していた裏話は、また別の機会に(笑)。まずは比較的易しい「紙飛行機」からスタート。子どもたち約10人に対してメンバー1人が付き、小さなグループを複数作って丁寧にレクチャーしていきました。全員が難なく紙飛行機を完成させられたため、次は「誰が一番長く、遠くまで飛ばせるか」を競う紙飛行機大会を開催しました。より遠くへ飛ばそうと工夫を重ねる彼らの姿に、私たちの取り組みが思考力や探究心を育むきっかけになっていると実感しました。比較的簡単な紙飛行機は全員が滞りなく作成できたため、飛行時間と飛距離を競う「紙飛行機大会」を開催しました。優勝を目指して試行錯誤する姿に活動の手応えを感じていたところ、優勝をさらっていったのは大人のシーモンキー(笑)。そんな微笑ましい一面もあり、大会は大盛況に終わりました。子どもたちの見事な手裏剣裁きには、こちらが圧倒されるほどでした。PS.【PS. 活動を振り返って】今回の活動で僕の心が一番揺さぶられたのは、まさにこの手裏剣づくりの瞬間でした。折り紙初体験の子どもにとって、複雑な構造の手裏剣づくりは非常に難易度が高い作業です。案の定、最初の数工程で止まってしまう子もいれば、器用に完成までたどり着く子もいて、進捗に大きな差が生まれました。全員のペースを合わせる難しさに直面し、一人ひとりに対応しようとすればプログラム全体に遅れが出てしまう。僕は現場で完全に困り果てていました。そんな焦りを払拭してくれたのは、子どもたち自身でした。手裏剣を完成させた子が、苦戦している友達の元へ駆け寄り、ごく自然に手を差し伸べ始めたのです。互いに助け合うその姿は「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉そのものでした。その助け合いに深く感動すると同時に、彼らの主体性を信じきれていなかった自分自身への反省が込み上げました。教室の中で「教える存在」は、決して教員一人である必要はない——。未来の教員を目指す人間として生涯忘れたくない大切な視点を、この小さな島で受け取った気がします。3日目 完





