知的障害のある人の「外出の自由」を、ガイドヘルパー養成であたりまえに

知的障害のある人の「出かける自由」は、いまだ十分に保障されていません。外出を支える制度があっても、それを担う「ガイドヘルパー」が足りないためです。大田区でガイドヘルパー養成研修を行い、その実践をもとに、企画・運営・資金調達などを「スターターキット」としてまとめ、全国へ広げます。

現在の支援総額

209,000円

13%

目標金額は1,500,000円

支援者数

24人

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2026/09/01に募集を開始し、 24人の支援により 209,000円の資金を集め、 2026/10/27に募集を終了しました

知的障害のある人の「外出の自由」を、ガイドヘルパー養成であたりまえに

現在の支援総額

209,000円

13%達成

終了

目標金額1,500,000円

支援者数24人

このプロジェクトは、2026/09/01に募集を開始し、 24人の支援により 209,000円の資金を集め、 2026/10/27に募集を終了しました

知的障害のある人の「出かける自由」は、いまだ十分に保障されていません。外出を支える制度があっても、それを担う「ガイドヘルパー」が足りないためです。大田区でガイドヘルパー養成研修を行い、その実践をもとに、企画・運営・資金調達などを「スターターキット」としてまとめ、全国へ広げます。

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多様性と寛容さを取り戻し、矜持ある地域社会に障害のある人を排除する社会は、何を失うのでしょうか。排除される人が、暮らしの自由や機会を失うことは、もちろん大きな問題です。でも、僕はもう一つ、考えてみたいことがあります。それは、排除している側の社会も、大切なものを失っているのではないか、ということです。自分たちとは違う人と出会う機会。違いを受け止める経験。今までの当たり前を、変えていく力。そうしたものを失いながら、僕らの地域社会は、少しずつ不寛容になっているのではないでしょうか。「普通」だけでできた街街には道路があり、商店があり、交通機関があります。でも、街の大切な働きは、それだけではありません。人と人が出会い、顔を覚え、挨拶を交わす。ときには困ったことを相談する。そんな関わりを通して、人は地域社会の一員として暮らしていきます。僕はこれを、街の「メンバーシップ機能」と呼んでみたいのです。メンバーシップ(membership/メンバーシップ=集団や社会の一員であること)という言葉があります。ここで言いたいのは、誰かが街の一員になることを許してもらう、という話ではありません。その街に暮らしている人は、最初から街の一員です。ところが、街の仕組みや人間関係が、障害のない人や多数派の暮らし方だけを標準にしていたら、どうでしょう。そこから外れる人の存在が見えにくくなり、多様なメンバーを取りこぼし、特定の人たちにとっての「普通」が、街全体の「普通」になっていきます。「普通」が、排除の理由になる例えば、買い物に時間がかかる人がいる。大きな声を出す人がいる。言葉でのやりとりが難しい人がいる。そんな人をすぐに「困った人」「迷惑な人」と見てしまうとしたら、それは本人だけの問題なのでしょうか。さまざまな人がいることを想定せず、一部の人に都合のよい仕組みをつくってきた街の側に、問題があるのではないでしょうか。自分たちの「普通」から外れる人を排除する。排除するから、違う人と出会わなくなる。出会わないから、違う人と一緒に暮らす方法を考える機会も失われる。そして、ますます自分たちの「普通」だけが正しいと思いやすくなる。マジョリティの誤学習が生じるのです。ここで「普通」ってなにか?数が多い人たちの常識ってだけでなく、力の強い人たちの都合や常識に合わせられることです。下品なはなしです。かつての地域社会では、女性を対等なメンバーとして扱わないことが「普通」でした。例えば、女性に地方議会の選挙権・被選挙権が認められたのは1946年です。街のことを決める政治に、女性が参加する権利さえ認められていなかったのです。女性たちが声を上げ、反差別の取り組みが積み重ねられるなかで、そんな「普通」は大きく変わってきました。もちろん、いまも差別は残っています。内閣府の2025年のデータでは、自治会長に占める女性は7.8%。地域の意思決定に、誰が参加しているのか。まだ問い直す必要があります。こうして街は、排除される人の自由を奪うだけでなく、自分自身が変わっていく機会まで失ってしまうのではないでしょうか。地域社会を回復するということでは、地域社会の回復とは、どういうことでしょう。僕が考える地域社会の回復とは、本来メンバーである多様な人たちが同じ街の一員として暮らす中で、街の側が変わっていけるようになることです。違う人と出会えば、摩擦が起きることもあるでしょう。出会うだけで、誰もが寛容になるわけでもありません。でも、そのたびに誰かを遠ざけるのではなく、どうしたら一緒に暮らせるのかを考える。必要なら、ルールや環境、関わり方を変えていく。地域社会を回復するとは、違いのある人を排除せず、違いをきっかけに自分たちのあり方を変えていく力を取り戻すこと。そんな姿勢こそが、地域社会の矜持なのだと思います。僕は、そう考えています。ガイドヘルパーを増やすことから僕らがガイドヘルパーを増やしたいのは、知的障害のある人が、行きたい場所へ出かけられるようにするためです。買い物をする。食事をする。散歩をする。誰かと話すこともあれば、ただ一人の時間を楽しむこともある。そんな当たり前の外出が、地域の人たちと出会う機会になることもあります。そこで、これまでの街の仕組みでは対応できないことに気づくかもしれません。だったら、街の側を変えていけばいい。もちろん、障害のある人に、地域社会を変える役割を押しつけたいわけではありません。本人が自分の望む時間を過ごせること。それが出発点です。その当たり前の暮らしを実現していくことが、結果として街を変えるきっかけにもなる。ガイドヘルパーを増やすことは、その可能性を増やすことでもあると思っています。障害のある人が暮らしやすい街をつくることは、障害のある人だけのためではない。街全体が、多様な人とともに生きる力を取り戻すことでもあるのです。僕らは、そんなことを考えながら、ガイドヘルパー養成研修を続けています。知的障害のある人の「外出の自由」を、日本のあたりまえに。クラウドファンディングは10月27日まで。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。文責 中村和利


親友が欲しい、でも友だちはいない友だちが欲しい、でも知り合いがいない知り合いが欲しい、でも家から外にでていない僕らは、いったい何人の人たちと関わりながら暮らしているのでしょう。家族、友人、職場の同僚。いつものお店の店員さん。近所で顔を合わせる人。たまに会って立ち話をする人。親しい人ばかりではありません。名前も知らないけれど、顔は知っている。そんな関係もあります。そうした人たちとの関わりが、僕らの暮らしをつくっています。暮らしを支えているのは、専門職だけではない例えば、いつものお店に買い物に行く。何度も通ううちに、店員さんが顔を覚えてくれる。「こんにちは」そんな挨拶を交わすようになる。特別なことではありません。その人にとって、そのお店は単に買い物をする場所ではなくなっていくかもしれません。そこには、自分を知っている人がいる。自分のことを知っている人が、街の中にいる。それは、暮らしの豊かさの一つだと思います。知的障害のある人の暮らしを考えるとき、僕らはつい、どんな福祉サービスが必要なのか、何時間の支援が必要なのか、といったことを考えます。もちろん、それも大切です。でも、暮らしを支えているのは福祉サービスだけではありません。福祉サービスは障害のある人の暮らしの「一部」でしかないのです。一人ひとりの「関係人口」を増やす「関係人口」という言葉があります。まちづくりの分野では、そこに住んでいる人でも、観光で訪れる人でもなく、ある地域とさまざまな形で関わる人たちを指す言葉です。過疎の地域などで、いきなり移住支援で定住人口を増やすのではなく、何らかの取り組みで継続的に地域と関わる人を増やしていくことが大切なアプローチとなっています。僕は、この考え方を、一人ひとりの暮らしにも当てはめてみたいと思います。その人のことを知っている人。その人と挨拶を交わす人。一緒に何かを楽しむ人。困ったときに、ちょっと気にかけてくれる人。そして、その人自身もまた、誰かと関わり、誰かの暮らしの一部になっている。そんな関係が、地域の中に少しずつ増えていくこと。それが、人の暮らしを支え、豊かにするのではないでしょうか。僕らの暮らしには、深く関わり合える人も必要です。でも、最初からそんな関係があるわけではありません。ちょっとした挨拶や、何気ないやりとり。そんな小さな関わりの積み重ねの中から、大切な人との出会いが生まれるのだと思うのです。ガイドヘルパーは、人と地域をつなぐガイドヘルパーは、知的障害のある人と一緒に街へ出かける仕事です。でも、目的地まで安全に送り届ければ、それで仕事が終わるわけではありません。一緒に買い物をする。食事をする。散歩をする。そうした外出を重ねる中で、本人と地域の人たちが出会う機会が生まれます。ガイドヘルパーが、本人の代わりにすべてをやりとりしてしまったら、せっかくの出会いを奪ってしまうこともあります。だから、必要なときには手伝うけれど、必要のないときには一歩下がる。本人と地域の人が、直接関わる機会を大切にする。そんなことも、ガイドヘルパーの大切な仕事だと思っています。もちろん、誰と関わりたいのか、どんな距離で付き合いたいのかを決めるのは本人です。関係が多ければ多いほどよい、という話でもありません。大切なのは、関わりを選べること。そして、関わりを広げたいと思ったときに、その機会があることです。そして、ガイドヘルパー自身も「地域の人」なのです。ガイドヘルパーとの出会いも、地域の人との出会いの始まりの一つなのです。ガイドヘルパーを増やす、その先にガイドヘルパーが増えれば、外出の機会を増やせるかもしれません。外出の機会が増えれば、出会う人が増えるかもしれません。何度も顔を合わせるうちに、知り合いができるかもしれません。そして、地域の中に、自分を知っている人が少しずつ増えていく。そんな変化を、僕らは大切にしたいのです。ガイドヘルパーを増やすというのは、単に福祉サービスの担い手を増やすことではありません。その人が地域の中で、自分の暮らしをつくっていくための条件を増やすこと。そして、知的障害のある人と出会い、関わる人が増えることで、地域そのものも変わっていく。僕らは、そう考えています。今年度、風雷社中では3回のガイドヘルパー養成研修に取り組んでいます。一人でも多くのガイドヘルパーを育て、その先にある、一人ひとりの豊かな暮らしにつなげていきたい。そして、この取り組みを、大田区だけでなく、ほかの地域にも広げていきたいと思っています。クラウドファンディングは10月27日まで。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。文責 中村和利


鍵のかかった扉を、開けようとは思わなくなる。開いたことのない扉の向こうへ、行こうとは思わなくなる。今日、2026年度第2回ガイドヘルパー養成研修が始まりました。風雷社中では、知的障害のある人の外出を支えるガイドヘルパーを増やすため、今年度3回の養成研修に取り組んでいます。今回は、少し違う角度から、なぜガイドヘルパーを増やす必要があるのかを考えてみたいと思います。「行きたい」と言っていた人が、いつの間にか言わなくなる。それは、本当に出かけたくなくなったからでしょうか。「行けない」が続くと、「行きたい」もなくなる?例えば、映画に行きたいと思っても、一緒に出かける人が見つからない。友人に誘われても、ヘルパーの調整がつかずに断る。そんなことが何度も続いたら、どうでしょう。次からは、誘われる前に諦めるかもしれません。そもそも、映画に行く予定を考えなくなるかもしれません。2016年に発表された経済学の論文『Poverty and Aspirations Failure』(ポヴァティ・アンド・アスピレーションズ・フェイリャー=貧困と希望・目標の縮小)では、こんなことが指摘されています。“Aspirations failure is a consequence of poverty, rather than a cause.”「希望や目標を抱けなくなることは、貧困の原因ではなく、むしろその結果である」(日本語訳)。これは貧困についての理論研究ですが、僕らの取り組みにも通じる視点だと思います。希望がないから、機会がないのか。機会がないから、希望を持ちにくくなるのか。この順序を取り違えると、問題の所在まで見誤ってしまいます。「どうせ言っても変わらない」心理学には「学習性無力感」(がくしゅうせいむりょくかん=自分の行動では状況を変えられない経験が、その後の行動や対処に影響すること)という研究があります。もちろん、この研究だけで知的障害のある人の気持ちを説明できるわけではありません。それでも、こんな場面を考える手掛かりにはなります。「買い物に行きたい」「今度の日曜日、出かけたい」そう言っても、いつも返ってくるのは「ヘルパーがいないから無理」。何度言っても変わらない。そんな状況が続いて、本人が何も言わなくなったとき。「特に外出の希望はありません」そう記録してしまったら、それでいいのでしょうか。2025年に公表された、知的障害のある人の自己決定に関する研究では、15件の研究に参加した246人の経験が分析されています。そこでは、本人抜きで生活上の決定が行われることや、希望を伝える機会が少ないこと、そもそも別の選択肢があることを知らない、といった経験が報告されています。この研究は、ガイドヘルパー不足を直接調べたものではありません。それでも、本人が何も言わないことを、希望がない証拠にしてはいけないと考える理由になります。希望を言えること。言ったことが受け止められること。そして、実現できる道筋があること。そのどれもが大切なのだと思います。「家にいたい」も、大切な希望ここで、間違えたくないこともあります。外出しない人に対して、「本当は出かけたいはずだ」と決めつけることはできません。家にいることを本人が望んでいるなら、もちろん、その希望も尊重されるべきです。でも、ガイドヘルパーが不足していると、外出の1か月前から調整して、ようやくヘルパーが見つかる。そんな状況もあります。当日、本人が「今日は行きたくない」と思っても、次に出かけられるのは、またひと月後かもしれません。今日行かなければ、次の機会がなかなかない。そんな状況では、その日の本人の気持ちを大切にすることさえ難しくなってしまいます。「出かけなかった外出」は、数字にも残らない例えば、ある人が1か月間、一度も外出しなかったとします。その数字だけでは、その人が家で過ごすことを望んでいたのか、出かけたかったけれど出かけられなかったのか、分かりません。そして、最初から諦めて予定にしなかった外出は、もっと見えにくい。2024年には『Uncovering Suppressed Travel』(アンカヴァリング・サプレスト・トラベル=実現しなかった移動を明らかにする研究)という論文が発表されています。障害のある人や高齢者などの、移動の制約によって実現しなかった外出を、どう捉え、調べるかという研究です。実際に出かけた回数だけを数えていては、見えてこない暮らしがあります。僕らの地元、大田区でもでは、僕らがガイドヘルパー養成研修を続けている大田区では、どうでしょう。2025年度の「大田区障がい者実態調査」では、18歳以上の知的障がいのある回答者588人のうち、28.4%がレジャー・余暇等では「ほとんど出かけない」と回答しています。一方、同じ知的障がいのある回答者の34.4%が、今後「外出・移動のサポート」を利用したいと答えています。もちろん、これは別々の質問に対する集計です。「ほとんど出かけない」と答えた人が支援を希望している割合でも、ヘルパーが見つからず外出を断念した人の割合でもありません。さらに、同じ調査の事業所向けアンケートでは、新規のサービス提供依頼に対応できていない28事業所のうち60.7%が、その理由に「職員の数が足りないため」を挙げています。こちらも、移動支援だけの数字ではありません。それでも、外出の実態、移動のサポートを求める声、そしてサービスを提供する側の人手不足が、同じ地域の調査に並んでいることは見過ごせません。「出かけていない」ことを、「出かけたくない」ことと同じにしない。出かけられる条件が乏しいために、希望そのものが見えなくなってはいないでしょうか。「行かなかった」のか、「行けなかった」のか。そして、「行きたい」と考えることさえなくなってしまったのか。僕らは、そこにも目を向けたいと思っています。だから、ガイドヘルパーを増やしたい僕らがガイドヘルパーを増やしたいのは、今、「外出したい」と言っている人の希望に応えるためだけではありません。外出できないことが当たり前になり、希望を言うことさえ諦めてしまう。そんな状況を変えていきたいのです。行きたい場所を考える。誰かと約束する。予定を立てる。当日になって気が変わる。そして、また次の外出を考える。そんな当たり前の暮らしを支えるためには、実際に一緒に出かけられる人が、地域に必要です。「行きたい」と言わないことを、希望がない証拠にしない。まずは、行ける条件を増やしていく。そのために、僕らはガイドヘルパー養成研修を続けています。そして、この取り組みを、ほかの地域にも広げていきたいと考えています。今日から始まった第2回研修も、そのための一歩です。一人でも多くの人が、誰かの「行きたい」を支えられるように。そして、誰もが「行きたい」と言える地域を増やしていけるように。引き続き、皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。知的障害のある人の「行きたい」が、当たり前に実現できる地域を、一緒につくっていきましょう。NPO法人風雷社中参考にした研究・資料① Dalton, P. S., Ghosal, S., & Mani, A.(2016)Poverty and Aspirations Failure. The Economic Journal, 126(590), 165–188.https://doi.org/10.1111/ecoj.12210※貧困と希望の相互作用についての理論研究です。② Maier, S. F., & Seligman, M. E. P.(2016)Learned Helplessness at Fifty: Insights from Neuroscience. Psychological Review, 123(4), 349–367.https://doi.org/10.1037/rev0000033※制御できない経験とその後の反応を扱う研究です。③ Sheerinら(2025)Perceptions of People With Intellectual Disabilities on Autonomy and Decision-Making in Daily Life: A Systematic Review and Synthesis of Qualitative Studies.https://doi.org/10.1111/jir.70035※知的障害のある人の自己決定に関する既存15研究のレビューです。④ Palmら(2024)Uncovering Suppressed Travel: A Scoping Review of Surveys Measuring Unmet Transportation Need. Travel Behaviour and Society, 36, 100784.https://doi.org/10.1016/j.tbs.2024.100784※実現しなかった外出を調べる研究レビューです。⑤ 大田区(2026年4月公表)『令和7年度大田区障がい者実態調査結果報告書』。レジャー・余暇等の外出頻度(164頁)、サービス利用意向(79頁)、事業所の職員不足(356頁)。https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/ota_plan/kobetsu_plan/fukushi/syougaisyahukushi/r07_syougai_jittai-chousa.html※28.4%と34.4%は別設問の集計です。60.7%は新規依頼に対応できていない事業所を対象とし、移動支援事業所だけの数値ではありません。【注】複数の異なる対象・方法の研究を参照しています。日本の知的障害者のガイドヘルパー不足が希望の表明を減らす因果関係を、これらの論文が直接証明したわけではありません。本文は研究を踏まえた風雷社中の考察です。


ガイドヘルパー養成研修の受講後に、出てくる問いは、「資格は取った。で、どこで働けばいいのか?」です。そう言えば、「知的障害のある人の外出を支えるガイドヘルパー募集」って求人、あまり見かけないですよね。風雷社中のYouTubeチャンネルで配信している【福祉NPO教養番組:風雷トーク】で、庭野拓人と一緒に、ガイドヘルパーとして働く介護事業所をどう探し、どう選ぶのかを話しました。風雷社中の「ガイドヘルパーを増やしたい」って思いに繋がるか話なので、ここでも共有させてもらいます。◯まず、どうやって探すのか一番分かりやすいのは、やはりインターネットです。「知的障害 移動支援 ヘルパー募集」そんな言葉で検索すると、Indeedやジョブメドレーなどの求人サイトが出てきます。求人サイトは便利です。時給や勤務地、勤務時間などを比較するには、とても使いやすい。でも、ちょっと待って。それだけで決めるのは、まだ早い。求人サイトは、どうしても同じようなフォーマットの中に情報が入ります。その事業所が普段どんなことを考えているのか。どんな人が働いているのか。利用者さんとどんな関わりをしているのか。そこまでは、なかなか見えてきません。だから求人を見つけたら、その事業所自身のホームページやSNSも見てみる。更新されているか。自分たちの言葉で書いているか。実際の活動の様子が見えるか。それも、一つの手がかりになります。もちろん、ホームページが立派だから良い事業所だ、という単純な話ではありません。ただ、「自分たちが何をしているのかを外に伝えようとしているか」は、見ておいていいと思います。介護の仕事を辞めた理由を見ると、「職場の人間関係に問題があった」「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があった」といった理由が上位に挙げられています。※つまり、時給だけ見ても分からない。「誰と、どんな考え方の事業所で働くのか」も、かなり大事なんです。自分の「こんな仕事をしたい」にマッチした事業所を探しましょう。◯求人を出していない事業所もある配信では、大田区が公開している移動支援事業所の一覧も見ました。こうした自治体の一覧には、求人サイトには出てこない事業所も載っています。人を募集していないように見えても、問い合わせたら、「ちょうど人を探していた」ということもあります。シャイなんですよ、介護事業所って。地域で働きたいなら、自宅の近くにある事業所へ直接問い合わせてみるのも一つの方法です。養成研修を受けた人なら、研修を実施した団体や講師に聞いてみるのもいい。実際、福祉の仕事は人からの紹介でつながることも少なくありません。◯時給だけでは分からない働く側からすれば、時給は大事です。高い方がいい。これは当然です。ただ、ガイドヘルパーの仕事には、時給の数字だけでは分からない部分があります。例えば、・記録を書く時間は勤務時間に入るのか・利用者さんの都合で急にキャンセルになったとき、どう扱われるのか・一日に複数の現場へ入る場合、現場間の交通費はどう精算されるのか・「この仕事は自分には難しい」と思ったとき、断ることができるのか・旅行や家庭の都合で休むことはできるのかこういうことです。求人票を読んだだけでは分からなければ、面接で聞けばいい。僕は、面接は事業所が働く人を選ぶためだけの場所ではないと思っています。当たり前ですが、働く側が、その事業所を知り、選ぶ場所でもあります。◯初めて働く人ほど、「現場を見せてくれるか」を聞いてほしい特に、これまでガイドヘルパーとして働いたことがない人には、働くことを決める前に、必ず一度、実際の現場を見せてもらってください。僕は、これはかなり大事なことだと思っています。どんな仕事なのか分からないまま、「採用します」「働きます」と決めてしまわない。まず、実際の仕事を見る。もちろん、ガイドヘルプは利用者さんの暮らしそのものです。誰でも勝手に見学していいわけではありません。でも、だからこそ大事なのは、事業所が利用者さんと「見学の人が来るけど、どうする?」という話ができているかだと思います。言葉で意思表示する人もいれば、別の方法で意思を伝える人もいます。その人に合ったやり方で説明して、嫌なら断れる。そのコミュニケーションが取れていることが前提です。そして、「まず見てみませんか」と言ってくれる事業所は、丁寧だと思います。採用された後も、初めて利用者さんと会うときはどうするのか。誰かが顔合わせに同行するのか。利用者さんの情報はどのように共有されるのか。一人で支援に入るまで、同行研修を何回くらいするのか。こういうことをちゃんと聞きましょう。むしろ、聞かれたことにちゃんと答えられる事業所であってほしいと思います。◯良いことだけを言わない事業所配信の後半で、Realistic Job Preview(リアリスティック・ジョブ・プレビュー/仕事の良い面だけでなく、大変な面や弱みも事前に伝える考え方)についても話しました。求人では、どうしても、「うちはこんなにいい会社です」と言いたくなります。でも、「ここはまだ弱いです」「こういうところは大変です」「働いている人から、こんな不満が出ています」そんなことまで言える事業所の方が、僕は誠実だと思います。良いところも悪いところも知った上で、「それでも、ここで働きたい」と思える。その方が、働き始めてからの「こんなはずじゃなかった」を減らせます。介護人材が足りないからこそ、とにかく採用するのではなく、合う人と出会い、長く働いてもらうことの方が大切なのではないでしょうか。◯養成研修は、資格を渡して終わりではない今回、改めて思ったことがあります。ガイドヘルパー養成研修は、資格を渡して終わりではありません。研修を受けた人が、「やってみようかな」と思い、自分に合う事業所を見つけ、実際に利用者さんの外出を支えるところまでつながっていく。そこまで含めて、人を育てるということなのだと思います。▼今回の風雷トーク介護事業所の探し方、選び方|ガイドヘルパーで働こう https://youtube.com/live/d3CFTzXDEaY風雷社中では今年度、ガイドヘルパー養成研修を3回実施します。さらに、これまで研修を続ける中で作ってきた書類や進行管理の仕組み、広報の方法などを、他の地域でも使える「ガイドヘルパー・スターターキット」としてまとめていく予定です。ガイドヘルパーが足りないのは、風雷社中だけの問題ではありません。研修を開く。働く人を増やす。そして、その人が安心して働き続けられる事業所につながっていく。資格を取った。その先をどうするか。そこまで考えて、ガイドヘルパーを増やしていきたいと思っています。※公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」。直前の介護関係の仕事を辞めた理由(複数回答)では、「職場の人間関係に問題があったため」24.7%、「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」17.6%などが挙げられています。https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_jigyousyo_honpen1.pdf


9月16日の「風雷トーク」では、風雷社中のガイドヘルパー養成研修で講師をお願いしている、合同会社起差点代表の小幡寛さんと話しました。テーマは、「ガイドヘルパー養成研修で、何を学ぶのか」です。ガイドヘルパーになるためには、もちろん介助の方法を学びます。障害の特徴や疾病についての基礎知識も必要です。でも、風雷社中が養成研修で伝えたいのは、それだけではありません。◯ 「障害」から、その人を見ていないか小幡さんが研修で大切にしていることの一つが、「初めて会ったこの人は、どんな人なんだろう」というところから関係をつくることです。「この人は自閉症だから」「知的障害があるから」と、障害名からその人を見るのではない。まず、一人の人として出会う。当たり前の話のようですが、福祉の仕事を長くしているほど、逆に難しくなることがあります。知識がある。経験がある。だからこそ、「この人は、きっとこうだろう」と、本人を見る前に判断してしまうことがあるからです。◯ 小幡さんが「はっ」とした出来事配信の中で、小幡さんが最近のガイドヘルプで経験した話をしてくれました。20代の女性利用者さんと一緒に信号待ちをしていたときのことです。近くにいた、同じくらいの年齢の女性がやってきて、「服の紐を結んでもらえませんか」と声をかけてきました。小幡さんは、自分に頼まれたと思って、すぐに紐を結びました。でも後になって、はっとしたそうです。「あの人は、僕じゃなくて、隣にいた利用者さんに頼んだんじゃないか」と。利用者さんは、言葉でのやり取りが難しく、紐を結ぶことも難しい。小幡さんは、それを知っています。だから無意識に、「この場面では自分が対応する」と思ってしまった。でも、それは同時に、「この利用者さんは、誰かから助けを求められる人ではない」と、自分が決めていたということでもあります。 ◯ 支援者の「安全のクセ」僕にも似た経験があります。利用者さんとバスに乗ったとき、他のお客さんと利用者さんが隣り合わないように、無意識に自分が間に入ろうとしていました。トラブルが起きないように。より安全に。困らないように。ガイドヘルパーとして働いていると、そういう行動が身についていきます。でも、その「安全のため」が、本人が誰かと関わる機会や、本人自身が状況に合わせて行動する機会を、先回りして減らしていることもある。小幡さんとの話の中で、改めてそんなことを考えました。◯ 障害特性を学ぶ。でも、それに縛られない養成研修では、知的障害、自閉症、ダウン症、脳性麻痺などについての基礎知識も学びます。それは必要なことです。ただし、「自閉症だから、この人はこういう人」と決めるために学ぶわけではありません。小幡さんは、もう一つ大切な役割として、エセ科学や、根拠のないデマを訂正することを挙げました。今でも、「親の育て方が悪いから障害になった」といった、科学的根拠のない情報が出てくることがあります。そうした情報を、そのまま信じないための基礎知識も必要です。つまり、知ることは必要。  でも、知識だけでその人を決めない。この両方が必要なのだと思います。◯ 障害社会モデルから考える研修では、障害社会モデル(しょうがいしゃかいモデル/障害を本人の身体や機能だけの問題ではなく、社会や環境との関係で捉える考え方)についても学びます。例えば、車いすを使う人が階段の前で進めなくなったとき。「歩けない身体」が問題なのか。それとも、「階段しかない環境」が問題なのか。障害をどう捉えるかによって、支援の考え方も変わります。ガイドヘルパー養成研修は、「障害者への対応方法を覚える研修」ではありません。自分が、その人をどう見ているのか。そこから考える研修でもあります。 ◯ ガイドヘルパーを増やすために配信の後半では、クラウドファンディングについても話しました。ガイドヘルパーが不足している。そのために、外出したいときに外出できない人がいる。この課題を知っても、「自分はガイドヘルパーとして働くことは難しい」という人もいると思います。でも、関わり方は一つではありません。知る。誰かに話す。シェアする。資金で支える。小幡さんは、「まず知ってもらう。そして、その人にもできるアクションを示すことが大事」と話していました。今回のクラウドファンディングも、そんな参加の方法の一つだと思っています。 ◯ 動画はこちら「ガイドヘルパー養成研修で何を学ぶ?|障害理解と『その人を見る』支援【風雷トーク】」https://youtube.com/live/3WaYPcxAnBg ◯ 全文文字起こし風雷社中ホームページには、今回の配信を読みやすく整えた全文文字起こしも掲載します。[https://fuu-rai.org/guide-helper-training-disability-understanding-transcript-2026-09-16/]ガイドヘルパーを増やす。そのためには、資格を取る人を増やすだけでは足りません。どんな視点で、その人と関わるガイドヘルパーを育てるのか。そこも大切にしながら、養成研修を続けていきたいと思っています。文責 中村和利


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