みなさま、こんにちは。Cultiva代表の副田大介です。前回は、日本酒における「酒米の評価基準」について書きました。造り手が扱いやすい米という物差しだけではなく、「その米から、どんな酒が生まれるのか」という視点から原料を見る。Cultivaでは、まず品種の違いから酒の違いを見てきました。では、その視点をさらに産地や栽培まで広げるとどうなるのでしょうか。「この土地の酒」と言うだけで、テロワールなのかテロワールを語るとき、「地元の米を使う」「地元の水を使う」「その土地の歴史や文化を伝える」といった、酒と地域、人との繋がりが重視されます。もちろん、重要なことの一つです。ただ、それだけでは「この酒はこの土地から生まれた」という領域性を語るだけになり、ブランド産地を使ったマーケティングとの違いが曖昧になってしまいます。『テロワール ワインと茶をめぐる歴史・空間・流通』(赤松加寿江・中川理 編)に、印象に残った一節があります。「テロワールが発現していると判断される場面は、小さなテロワールが築かれるという場面において顕著だった。多様な変化を伴う小さな領域に独立して形成されてきたような生産の場は、それだけで何らかの魅力をもつことが実感として感じられた。その魅力とは抽象的なイメージとしての魅力ではなく、目にみえるものとしての価値として現れるものであった。」(強調は副田が加えた)私はこの一節をヒントに、テロワールを考えるための要素を、「領域性」「変化性」「可視化」の三つに整理しました。・どこの土地(圃場、畑)で生まれたのかという領域性。・場所や原料品種、農家の栽培法が変わることで、何が変化するのか。・違いを実際に感じたり、分析したりできる形で可視化すること。この三つを重ねることで、日本酒でもテロワールを考えられるのではないかと思っています。大事なのは「絶対化」ではなく、「相対化」Cultivaでは、「この土地だから、この味になる」と最初から決めることはしません。そのように断定するよりも、比較したときに、本当に違いがあるのか。その違いは、どこから生まれたのか。という順番で考えます。品種が違う。産地が違う。農家さんが違う。年度が違う。まず比較して、その変化を見る。そこで差が見えたなら、その背景にある土壌、気候、水、栽培、微生物などへ視点を広げていく。その積み重ねによって、土地や原料の輪郭が少しずつ見えてくる。私にとってテロワールとは、絶対化するものではなく、比較し、相対化することで見えてくるものです。酒の味を決めつけるのではなく、酒に現れた違いから、土地へ遡っていく。Cultivaでは、まず米(品種)の違いから、その差を見てきました。そして今、その外側にある土壌(微生物)、水、農家さんへと視点を広げようとしています。次回は、Cultivaが具体的に何を見ようとしているのか。そして、なぜ研究まで行おうとしているのか。「土着性」という言葉を手がかりに、書いてみたいと思います。参考文献赤松加寿江・中川理『テロワール ワインと茶をめぐる歴史・空間・流通』




