いよいよ、クラウドファンディングも終了まで 2 週間ほどとなりました。アルジェリアの天文団体「シリウス天文協会」を主宰する Jamal Mimouni 教授(Mentouri 大学)から、メッセージが届いたのでご紹介します。 日本の皆さんへ ~Jamal Mimouni教授(Mentouri大学) CAP2016 での経験は、私にとって特別なものでした。「Communicationg Astronomy the With People(CAP)」は間違いなく、同様の趣旨の研究会の中で最大のものです。そこでは多くの参加者と経験を共有し、さまざまな成功事例について聞くことができるのです。そして同時に、成功体験を共有したり、天文学を通じて楽しく教育する新しい手法を学ぶ場でもあります。自分よりも豊かな経験を持つ人と交流することによって自らを省みることもできます。また、違った視点から自分の経験を見直し、より広くさまざまなものに関連づけて考えるヒントも得られるでしょう。100 人以上の参加者と内容の深い濃密な時間を過ごすことになるので、精神的にも肉体的にもハードな四日間となります。でも、もしあなたが、それに耐えられる覚悟があるのなら迷わず参加しましょう! (CAP2018スタッフ日本語訳) Jamal さんの CAP 大会に対する熱い思いが伝わってくるコメントです。世界中から同じような思いを抱いた人たちが、きっと今度の大会にも集まってくることを思うとワクワクしますね。 ひとりでも多くの人に参加してもらうために、残りのクラウドファンディングを頑張っていきます。 皆様の応援をよろしくお願いいたします。
今回は、2011年のCAP大会についてご報告します。 世界天文コミュニケーション会議CAP2011は、2011年10月10日-14日に、中国・北京市内の西安ホテルで開催されました。CAPは2005年にミュンヘンで最初に開催され、その後はアテネ、ケープタウンで開催されています。従って、初めてのアジア開催となりました。今回のテーマは「New Territories for Science Outreach」。訳すと「サイエンスアウトリーチの新領域」でしょうか?この時期、世界中で科学コミュニケーションが注目されていたので、それを意識したテーマとなっていました。 CAP2011では、約18ヶ国から50人が参加しました。それまでに比べるとなんかかなり少ない。日本からは4人が出席。アジア開催であることを考えるとこちらもなんか物足りない。まだ日本では知名度が少なかったのかもしれません。それでも、地元中国からは大勢参加していましたし、香港、インドネシア、スリランカ、フィリピンからの参加者がありました。特に、フィリピンから参加したセセさんは筑波大学の大学院生だったこともあり、日本語が非常に達者でした。 初日と2日目の前半には、「世界天文年2009のその後」ということで、2009年の世界天文年の各国の取り組みについて報告がなされました。 世界天文年が一過性のイベントにとどまらず、 継続的に取り組まれていることがわかりました。日本からも、世界天文年のときに行なわれた「君もガリレオ!プロジェクト」について報告がありました。 今回、特にヨーロッパ南天天文台(ESO)のアウトリーチ部門の存在感を随所に感じました。ESO関係者の発表者が目立っていたというのもありますが、「画像の使い方」や「ライティング」に関する発表など、まるで研修を受けているかのような質の高い内容でした。また、「Universe Awareness」というキッズ向けの取り組みが関心を引きました。「Outrageous Outreach」(意訳すると、型破りなアウトリーチ?)と銘打ったユニークな取り組みの発表もありました。具体的には、映画やファッションショーとのタイアップした活動などです。 3日目の午後には、北京天文館や古観象台の見学ツアーが行われました。北京天文館は近代的な展示やプラネタリウムを備えた施設で、デジタル形式の投影システムを導入していました。個人的には、中国各地の星座の呼び方を紹介した展示が興味深かったです。古観象台は明の時代に造られたもので、15mの高台に、渾天儀や天球儀など8種類の天体観測の道具が設置されています。中国の天文学の歴史を感じさせるものでした。 最終日の最後に、CAP2011の実行委員の一人であるデニス・クラブツリー氏(カナダ)が、各講演の要旨に頻出する以下のキーワードを元にこの会議の総括を行いました。 世界天文年(IYA2009)、メディア(media) 国際性(international)、児童(children) 聴衆(audience)、読みやすさ(readability), 国際天文月間(Global Astronomical Month) 金星太陽面通過(Transit of Venus), 型破り?(Outrageous) などなど。多様なテーマ・観点の発表があったことがわかります。 2011年から7年の時を経て、来年の2018年は、久々のアジアしかも日本の福岡で、世界天文コミュニケーション会議が開催されます。この7年間に天文コミュニケーションをとりまく環境が変わり、新しい取り組みも生まれています。いったいどんな話題が飛び出すのか、今から楽しみです。 そして、せっかくのアジア開催なので、日本だけでなく近隣のアジア各国から大勢の参加者がやってくることを期待しています。そのための旅費を支援するために、クラウドファンディングに挑戦しています。 ぜひ、クラウドファンディングにご協力いただければ幸いです。
世界の天文コミュニケーションを体感〜CAP2016コロンビア大会のワークショップ〜 CAP2016コロンビア大会に参加した、国立天文台の柴田です。今大会は、レクチャーや口頭発表だけではなく、ワークショップ(W.S.)が12種類も実施されて世界の天文コミュニケーションの実践例を体感することができました。私が参加した3つのワークショップと国立天文台の仲間と一緒に企画した4次元デジタル宇宙ビューワーMitakaのワークショップをみなさんにご紹介したいと思います。 Podcasting & YouTube: from content creation to community building-ポッドキャスティングとYouTube: コンテンツ制作からコミュニティービルディングまで- 講師を務めたのは、普段から音声や映像コンテンツのウェブ配信で積極的に活動している、Pamela GayさんとRicardo Garcíaさんです。YouTubeでは毎日50億回も動画が再生されているなどネット動画の影響は大きく、それが彼らの活動の動機になっているということでした。視聴者を増やすための工夫として、配信頻度やコンテンツの長さや構成は毎回揃えることが大事だそうです。音声レコーダーやカメラや照明など使いやすい道具の紹介もありました。 Using behavioral insights to inform project design in astronomy for education and development-教育と開発のための天文プロジェクトの情報発信に行動科学を使おう- 講師のEli Grantさんは、評価手法の分野で博士号を持ち、国際天文学連合のOffice of Astronomy for Developmentでプロジェクトマネジメントを担当しています。このワークショップでは、行動科学で「ナッジ」と呼ばれる、人々の行動に作用する様々な要素を天文教育や普及のプロジェクトに取り入れてみようというものでした。 ナッジの考え方は環境対策で人々により良い行動を促すための情報発信によく使われるそうで、ナッジの例として、人々の規範意識に訴えるとか、燃料の消費量をわかりやすく表示したりすることなどが紹介されました。私を含め多くの参加者にとって初めて聞く考え方だったので、天文コミュニケーションの分野にどう取り入れるかという議論で苦労しましたが、新しい視点を得られた有意義なワークショップでした。 Using art in astronomy education-アートを使った天文教育- 講師は今大会の会場の一つとなったメデジンプラネタリウムのÁngela Pérezさんでした。彼女は子供向けの天文教育プログラムをいくつも開発していて、今回はアートを使った3つのプログラムを紹介してくれました。 ひとつ目は星空を描くアクティビティでした。歯ブラシの毛先につけた白、黄色、赤、青などの絵の具を指ではじくように飛ばして黒い紙の上に細かい点々を散りばめて星空を表現しました。子供達はこの体験を通して星にも様々な色があることを学ぶことができます。 2つ目は色粘土を使って惑星を作りました。色の違う粘土で何層かに分かれた球体を作って惑星に見立て、半分に切って惑星の内部構造を確認しました。 最後に、参加者みんながガスや塵の役になって太陽系形成の歴史を再現する『太陽系形成ダンス』を演じました。どれも自分の手や体を使うので子供達にとっても楽しい体験になるだろうと感じました。 Exploring the universe using Mitaka software-Mitakaで宇宙旅行- Mitakaは国立天文台の4次元デジタル宇宙プロジェクトが開発している、天文学の観測データやシミュレーションデータを見るためのソフトウェアです。ワークショップでは、参加者それぞれのパソコンにインストールして操作する体験をしました。地球を出発して宇宙空間を自由に移動しながら、太陽系の惑星や衛星を観察したり、銀河系を飛び出してさらに遠くから宇宙の大規模構造を俯瞰するなど、宇宙旅行を楽しみました。スマートフォンで表示する開発中のソフトの体験も好評でした。 次回のCAP2018福岡大会ではどのようなワークショップが集結するのでしょうか。ぜひ多くの方に体験してもらいたいです。世界からより多様な実践例が集まり、それを多くの方が体験し、またその活動がさらに世界に広がるよう、旅費支援のためのクラウドファンディングに挑戦しています。発展途上国からも多くの天文コミュニケータや学生が参加できるよう、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
今回は、前々回の大会の様子について報告します。世界天文コミュニケーション会議CAP2013は、2013年10月14日から18日に東欧のポーランドの首都ワルシャワのワルシャワ工科大学とコペルニクス科学センターを会場に開催されました。CAPは2005年にドイツのミュンヘンで開催されたのが最初で、CAP2013は通算5回目の開催となりました。初日の10月14日はワルシャワ工科大学でオープニングセレモニー。このあと、メイン会場をコペルニクス科学センターに移して行われました。コペルニクス科学センターは、ワルシャワの中心地からやや北東、ワルシャワ市内を流れるヴィスワ川の川べりに位置します。近くにはワルシャワ大学も。プラネタリウムを備えたとても立派な科学館で、2010年に開館したばかり。科学館のそばの道路には見学者のバスがたくさん駐車されていて、館内でも見学の子どもが元気いっぱいに各展示物を体験していました。 また、コペルニクス科学センターの名前の通り、そう、ポーランドはコペルニクスの出身地。市内にはコペルニクスの像、さらに、コペルニクス通りという名前の通りもあります。会議後には、コペルニクスの生家のあるトルンへのツアーも企画されました。余談ですが、ワルシャワはショパンやキュリー夫人の出身地でもあり、ワルシャワ市内にはショパン博物館やキュリー夫人博物館もあります。 さて、CAP では、毎回テーマが決まっていて、CAP2013では「Challenges in Communication of Astronomy and Space Exploration」日本語に直すと、「天文宇宙コミュニケーションへの挑戦」といったところでしょうか? 世界40カ国から約200 人が参加。特に、地元ポーランドからの参加者は多かったです。CAPはほぼ毎回プラネタリウムがあるところで開催されます。CAP2013でもプラネタリウムのある科学館が会場。ということで、プラネタリウムを使ったフルドームセッションが企画され、盛況でした。プラネタリウムの真ん中には日本でもおなじみのプラネタリウム投影機「メガスター」が。各国のフルドームのプログラムがデモ上映されたり、プラネタリウムを使った実践例が紹介されました。最近では大口径の望遠鏡で観測された高解像度のデータが取得されており、それを高解像度を維持したまた投影するのはなかなか大変、という苦労話的な発表が印象に残りました。このほか、2015年の国際光年に向けたパネルディスカッションやアンコンファレンス(Unconference)セッション、一般向けの公開講演会など多彩なプログラムでした。CAP2013の様子は、ストリーミングで中継され、日本でも中継越しに発表を視聴した人もいたようです。 今回、CAP2013 には日本から5人参加しました。いくつか発表内容を紹介すると、縣秀彦さん(国立天文台)が「国立天文台の天文教育活動の紹介」、佐藤奈緒子さん(和歌山大学)が、「電波天文学のアウトリーチ活動と電波望遠鏡の開発」、矢治健太郎(国立天文台、筆者)が「太陽科学における天文コミュニケーション」というタイトルで発表しました。 そして、CAP の楽しみとしては、まさに「コミュニケーション」をあげることができます。いろんな国の人との交流は毎回楽しみです。久しぶりに会った人、そして今回初めて会った人。レセプションや、昼食や休憩時間、あるいはたまたま隣の席同士、そういった機会に思い切って、たどたどしい、あるいは、あやしい英語で話しかけます。でも、意外と通じるもので、これが思いのほか楽しい。日本からの参加者はすでに述べた通りですが、今回、アジアからの参加者も例年より多く、香港、マレーシア、フィリピン、インド、インドネシア、スリランカといった国々から参加していました。彼ら彼女らとのコミュニケーションは各国の天文事情を知る絶好の機会です。CAP のあともSNS などを通して今も交流が続いています。 来年、福岡で開催されるCAP2018では、海外からの多くの参加者を期待しています。ぜひ、CAP2018に参加して、いろんな国の人たちと交流を深めてほしいと思います。また、われわれのご近所のアジア・太平洋地域の発展途上国からももっと参加してほしいと願っています。そこで、今回の会議「CAP2018 in 福岡」に、より多くの途上国の方々が参加できるよう旅費の支援を行いたい。その想いから、今回クラウドファンディングに挑戦しています。ぜひ、クラウドファンディングにご協力いただければ幸いです。
6月5日(月)~7日(水)、全国プラネタリウム大会2017が、広島市こども文化科学館を会場として開催され、全国から217人もの参加がありました。CAP2018の主催団体の一つである国立天文台は、大会のブース出展と研究発表において、会員の皆様にCAP2018についてご紹介してきました。 会場では国立天文台ブースに多くの方が訪れて、CAP2018についての情報にも熱心に耳を傾けていただきました。短い時間ではありましたが、研究発表の枠でも、CAP2018の開催をお知らせし、ぜひ参加してくださるよう、お願いすることができました。特に会場である福岡市科学館プラネタリウムドームで予定されているドームセッションには、興味を持っていただいたのではないかと思います。 全国プラネタリウム大会は、日本プラネタリウム協議会(JPA)が、毎年一度、6月ごろの3日間を会期として開催しているものです。日本全国のプラネタリウム施設やプラネタリウム関連企業のスタッフが一堂に会し、研究発表や、ベンダー発表、ポスター、ブース出展を通して、プラネタリウムに関する、新しい試み・技術・手法・問題点などについて、活発な情報交換を行います。国立天文台は、様々な研究成果の提供を通して、プラネタリウム施設に協力しており、また、自ら「4D2Uドームシアター」を運営する施設でもあることから、JPAの会員として、例年大会に参加し、研究発表や、ブース出展などを行っています。 プラネタリウムというと、あるいは、今日見える星空を投影し、星座の解説をするだけ、という印象を持たれるかもしれませんが、近年では、デジタルプラネタリウムが普及し、地上から見える星のみならず、宇宙の様々な様子を体感的に見ることができるようになっています。デジタルプラネタリウムシステムでは、最新の天文学のデータを速やかに上映できるようにするための試みも多く行われており、プラネタリウムは、天文コミュニケーションのツールとして、大いに注目されています。CAP2018の会場である福岡市科学館も、こうした最新式のプラネタリウムシステムを有する施設です。 CAP2018において、「プラネタリウムをどのように天文コミュニケーションツールとして有効に使っていくか」についても、活発な議論が行われるよう期待しています。