次回作で、水を綺麗に撮る必要に迫られ、"水の魔術師"と言われている、アンドレイ・タルコフスキーに興味を持った。今まで難解そうで敬遠していて、「ローラーとバイオリン」と「惑星ソラリス」しか観ていなかったのだ。 1. 「ローラーとバイオリン」(1960) タルコフスキーの映画学校の卒業制作作品。46分。ニューヨーク国際学生コンクール第一位。 バイオリンを習っている少年とローラーで地面を馴らしている労働者の青年との一日の交流を 描いた作品。 主人公は、子供の頃、音楽学校に通っていたというタルコフスキーがモデルなのだろう。階級を越えて、芸術の果たす使命と言った事を描きたかったのではないか。男と女の距離も、さりげなく描かれていた。 唐突に出て来る廃墟の破壊のイメージは、古い体制と階級差の破壊を訴えているのか。 確かに、水やガラスや鏡の反射などをすでに多用している。太陽に反射する水。水面に映り込む景色。水面の太陽光の反射を浴びる主人公逹、などを使って演出していた。
3月31日から始まる朝の連続テレビ小説「花子とアン」の予告編を見ていたら、イメージしている茅葺き屋根が映っていた。 場所は、甲府らしいが、山の斜面の棚田に一つだけ貧しい小さな茅葺き屋根の小屋が建っている。あまりにもできすぎてるので、おそらくNHKの美術スタッフが建てたセットではないかと思う。 もう一つ驚いたのは、主人公の吉高由里子の妹役で、黒木華がキャスティングされていたことだ。実は、今回の作品の村の娘のイメージ・キャストは、彼女だったのだ。 彼女は、「世にも奇妙な物語」の「ある日、爆弾が落ちて来て」を見て以来のファンだったのだ。 まさに、茅葺き屋根の農家で、貧しい農家の娘というのを、先にやられてしまった。こちらは、低予算映画なので、プロの俳優さんは使えないが、悔しかった。 最も、先日観た山田洋次監督の「小さいおうち」でも、山形から出て来た貧しい農村の娘をやっていたから、そういう雰囲気を持っているのかもしれない。 雪が溶ける前に、もう一度ロケハンに行きたいのだが。
映画評論家の町山智浩氏が、"雪と氷の表現が素晴らしい"と絶賛していたので、これは見ておかねばと、「アナと雪の女王」(2D・字幕版)を観て来る。 素晴らしかった ! アンデルセンが原作らしいが、私にはティム・パートンの「シザーハンズ」とピクサーの「MR.インクレディブル」のアイスマンのキャラクターを合わせ、ディズニーの「眠れる森の美女」を混ぜたようなストーリーだった。 ミュージカルと知らずに観たのだが、楽曲も素晴らしく、姉妹のキャラクターがどちらも魅力的で、表情と仕草が演技賞ものだ。 確かに、実写ではできないようなカメラワークと映像で、全てのカットがアイディアに溢れていた。 氷と雪の冷たさが伝わって来る様にリアルだった。原題は、「Frozen」。 今度は、3D版でもう一度観てみようと思う。
今回の作品のラストに、吹雪のシーンがあるので、黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」を見直してみた。 ソ連で撮影された1975年アカデミー賞外国語映画賞受賞作だ。 探検家と地図を作るために同行した先住民のガイドとの出会いを通して、自然と文明の葛藤を描いている。 自然の厳しさを描きながら、それを美しく撮っている。どうやったら、あんな風に撮れるのだろう。 原発再稼働の今こそ、予言的で、多くの示唆に富んでいる、全ての人に見て欲しい映画だ。
今回の作品に大きな影響を受けた作品が、宮沢賢治の「虔十(けんじゅう)公園林」という短編です。 昔、ある村の農家に、いつも笑っている虔十という少し頭の弱い少年がいました。 虔十は、ある時、学校のそばの荒れ地に杉を植えたいと言い出します。両親は、初めての虔十のお願いなので、苗を買ってあげます。 村の人々は、あんな土地に杉が育つはずがない、と馬鹿にしますが、虔十は構わず毎日、水をやります。 杉の苗は少しだけ伸び、いつのまにか子供達の遊び場になりました。 やがて虔十はチブスで死んでしまいます。戦争が起こり、町は大きくなりましたが、学校のそばの林だけは子供達の遊び場になってます。 虔十が死んで二十年たってから、村から出てアメリカの教授になった博士が講演に来ました。そして、立派な杉林を見て、昔いた虔十のことを思い出します。 「ああ、全く誰が賢く、誰が賢くないかはわかりません」 博士の提案で、この林を「虔十公園林」と名付けて、保存することにします。村出身で偉くなった人から、たくさんのお金が集まり、虔十のうちの人たちは、喜んで泣きました。 それから、この公園林を訪れた人々に、本当の幸いが何だかを教えるのでした。 新潮文庫「銀河鉄道の夜」に収められています。短いので、是非一度、読んでみて下さい。