「山﨑さんってホントに歌舞伎が好きでしょ」とはよく言われます。
確かに、ホントに歌舞伎が好きだと思います。
溝口健二、小津安二郎、黒澤明など、その昔は映画監督には歌舞伎やお能の素養がある人が多くいました。たぶん映画監督が立派な文化人たり得た時代の嗜みだったと思います。
今でも好きな人は少なからずいると思いますが、私は日本で一番好きな監督だと自認しています(笑)
では、歌舞伎の魅力って何か?と言われると、これが難しいんですね。
頑張って言葉にすると……
一つは、儚いこと。
舞台全般に言えることではありますが、一期一会でもう二度と同じ舞台は観られません。
だからこそ尊くて美しくて。
絶対に我が物にすることは叶いませんが、どうにかして自分だけものにしたくなったり、この時が永遠に続けばいいと思えたり。
私が生業とする映像文化は、再現を目的に、記録をし続ける仕事であって、舞台とは正反対のもの。それゆえに歌舞伎に惹かれるのかもしれません。
そして、矛盾するようですが、歌舞伎を永遠のものにしようとする、その人間の「主体性」にも惹かれます。
芸は、それを永遠のものにするために、親から子、師匠から弟子へ継承されていきます。
それを観た観客の思いも次の世代に伝承されていきます。
ただ、放っておけば永遠になるわけではなく、そこには積極性が不可欠です。
さらには、その時々の現代性が注入されるとも言えます。最近の「配信」がまさにそれですね。
それが400年以上続いているわけで、そこには惹かれるどころか、畏敬の念が生まれてきます。
映画『宮城野』監督 山﨑達璽