こんばんは、監督の山﨑です。
樹木希林さんが亡くなって二年、明日、あっという間に三回忌を迎えますね。
希林さんには、これから私が映画を撮っていく中で「山﨑組の常連さん」になって欲しい、そんな思いでご出演いただきました。それがたった一作だけで終わってしまったことが悔しくて悔しくてなりません。
映画とはどういうものだ、監督とは、役作りとは……いっぱいいっぱいいろんなことを教わりました。いつも飄々としていて、おかしくて、おふざけが過ぎることもありますが、決して品格を損なうことなく、凛としていて……希林さんを形容するのは難しいですね。
今回は希林さんを偲んで、撮影時の思い出を綴ってみようと思います。
「この映画は私が出るべき。私が出たらもっと良くなる」
希林さんへの連絡手段はFAXのみ。一か八かでオファーしたところ、すぐにプロデューサーの携帯にご本人から「受けます」との電話がありました。その次の言葉がこれだったとか(笑)
「写楽役にはいいのがいるわ」
希林さんに初めてお目にかかったのは「かつら合わせ」の時です。終わってから、助監督を交えて近くのファミレス(笑)へ。平日の昼間に希林さんが若いスタッフを連れてホットケーキを食べてる光景は、なんかの番組の撮影に見えたと思います。
実は、その時点ではまだ写楽の役は決まっていませんでした。
「写楽は決まってないの? 一人いいのがいるわ。ただ、台詞がねえ……」と希林さん。
きょとんとする私たちに向かって
「『バカヤロー!』とかね、そういう瞬発的なのはいいんだけどね……」と畳みかけます。
「え、誰ですか?」
「内田裕也」
「(一同)……」
「カレーにキムチのような女優でありたいわ」
撮影中のある日、私たちのご飯はカレーでした。昼から制作部が寸胴鍋でコトコト。スタジオの外にはいい匂いが漂ってました。
さあ、メシ休(ご飯休憩)になったとき、希林さんが大量のキムチを持ってきました。毎回豪華な差し入れをしてくださるんですが、「え、キムチ?」と一同唖然。
そして、希林さんは「ちょっと載せて食べてみなさい」と手ずから一皿一皿にキムチを添えるんです。
意外な組み合わせに首を傾げながら食べたところ……これが実に美味! カレーにもうひと味が加わって絶妙なバランスになるんですね。スタッフのそんな様子を見たときの希林さんの嬉しそうな顔。
「そうなの。ほんのちょっとだけど、ちょーっと変わるのよ」と。
「希林さん、これいいですね」と伝えたら、「カレーにキムチのような女優でありたいわ」といたずらっ子のような顔をしてスタジオに入っていきました。
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いただいたことば、思い出は尽きません。
あれ、勝手に使ってるって?
希林さん宅の留守電のメッセージをご存じですか?(笑)
こちら希林館です。
留守電とFAXだけです。
なお過去の映像等の二次使用はどうぞ使ってください。
出演オファーはFAXでお願いします。
(希林さんの思い出は次回に続きます)