本プロジェクトにあたり、女流義太夫・鶴澤寛也さんより応援メッセージをいただきました。
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毬谷友子さんと片岡愛之助さん(半沢直樹での黒崎)のW主演。竹本綾之助師匠と私は、劇中劇で日本髪のカツラを被って義太夫を演奏しました。
目の前での毬谷さんの演技は、無垢な童女でもありコケティッシュな女郎でもあり、重層的で凄絶な美しさを放っていてとてもとても魅力的でした。どうか世界中の皆様にこの映画が届きますように!
鶴澤寛也(女流義太夫三味線)
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映画『宮城野』で女流義太夫を担当してくださったのが、竹本綾之助さんと鶴澤寛也さんでした。簡単に解説をします。
「義太夫(ぎだゆう)」とは、文楽(人形浄瑠璃)や歌舞伎の伴奏音楽の一種です。三味線を伴奏にして、太夫(たゆう)が台詞や描写を語ります。「歌う」と言わないところがポイントで、叙情的な力強さを持っています。
「女流義太夫」とは、文字通り女性による義太夫のことで、明治から大正にかけて絶大な人気を誇りました。本作では、毬谷さんに合わせるため女流義太夫にご出演にいただきました。
「出語り」とは太夫と三味線奏者が舞台上に姿を出して語ることをいいます。本作では押し入れの襖がくるりとまわって登場します。これを「文楽廻し」といい、美術スタッフがこだわったところです。
物語は終盤、宮城野が七歳の夏の思い出を語る場面です。ここは宮城野が己の性分を伝える重要な描写になります。
ただ喋るだけではなくて、この映画ならではの、観客の印象に強く残る演出をしたいとの監督の思いから、いろいろとアイディアを出しあって「女流義太夫の出語りによる所作」という演出が生まれました。
本作の詞章(語りのテキスト)は、狂言作者の竹柴潤一さんによる書き下ろしで、節付(作曲)もまた鶴澤寛也さんによるオリジナルです。
<詞章>
一天俄に かき曇り 篠突く雨に 風 いかづち
幼いながらも逃げまどう
地肌は崩れ森は折れ 一際だちたる雷は 眼前尺余にほむらを落とす
「モシ仏神様 天道様
わたしを助けてくださらば 向後いかなる辛き目に遭うとも 不平は申すまじ
これぞ今生後生の願い たのむ」
と云えども 辺りは 火炎わきたち 岩流るる
不思議や紅蓮の奥よりも
「川さ飛び込め」
の声ぞして はずみにしぶきを上げにける
振付もまた、所作指導も担当されている舞踊家の藤間貴雅先生が一から作りあげたオリジナルです。
撮影・照明にもこだわり、瀬川カメラマンは印象派の画家エドガー・ドガの『踊り子』のような映像を目指したといいます。
……と長くなってしまいましたが、このように監督の「初期衝動」を叶えるために、一流のスタッフたち、そして毬谷さんがフルスロットルで作り上げた場面となっています。
あらためて本編をご覧の際にご注目いただけますと幸いです。
最後になりましたが鶴澤寛也さん、応援をいただきありがとうございます。
鶴澤寛也さんは女流義太夫演奏会へのご出演、「女流義太夫 浄瑠璃を学ぶ会」で講師を務めるなど、多岐にわたりご活躍中です。最新の情報はHPで、Twitterでもさまざま発信されています!
▶︎鶴澤寛也さん公式HP
▶︎Twitter(@tsuruzawakanya)