山﨑監督による映画や歌舞伎にまつわるコラム、第二弾をお届けします。
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ドラマ『半沢直樹』は歌舞伎俳優のポテンシャルの高さを見せつけたドラマでした。
台詞術や表情の作り方などの極端な部分<歌舞伎ガカリ>も注目されました(前回コラム:『半沢直樹』にみる「歌舞伎ガカリ」)が、思わず引きつけられる存在感のようなものも大きいと思います。
しかし、歌舞伎俳優たちがその魅力を映像で発揮したのは今に始まったことではありません。
是非、市川崑監督の『炎上』(58)をご覧いただきたいと思います。
三島由紀夫の『金閣寺』(58)を原作に、時代劇スター・市川雷蔵が主演。三島氏自身も大絶賛するほどの、日本映画史に燦然と輝く傑作です。
60年以上前の作品ですが、すでに歌舞伎俳優のポテンシャルの高さは存分に発揮されています。
主演の市川雷蔵は歌舞伎の出身です。20歳までは歌舞伎俳優として舞台に立っていました(37歳で没)。
そして、もう一人の主演ともいうべき老師を二世中村鴈治郎が演じています。
この二人の存在が尋常ではありません。
歌舞伎ガカリは微塵もなく、内面を掘り下げた徹底的なリアリズムです。思わず引きつけられる歌舞伎俳優の魅力が全開といってもいいでしょう。
我らが愛之助さん、『宮城野』の矢太郎はどうでしょうか?
内面も掘り下げつつ、歌舞伎ガカリも時折見せてくれます。
欲張りですね。
そりゃそうです、日本で一番歌舞伎を愛する監督が作ってますから(笑)
映画『宮城野』監督 山﨑達璽
Twitter:@yamazakitatsuji