いつも思うことがある。朗読は難しい。今配信中の『SynchronicityシーズンⅢ~十戒。天使と悪魔の境界』は、主人公と悪魔。男二人の会話が中心だ。原稿を読み、声の高低なども含み、それぞれの個性や情景を考えながら練習する。そして本番。自分のイメージでは、くっきりと個性の違いを出し、大げさなくらい、それぞれの特徴を出している「つもり」だ。だけど、録音したものを聴いてみると、さほど違いを感じない。声の高低すら、危うい。「つもり」でしかないことに、泣きそうにがっかりする。でも、毎回まいかい、ひとつずつ、ひとつずつ…一生勉強だと思っている。(有城見萌)
久しぶりに、有城佳音のデビュー作『雨のように、きこえる』収録作品をすべて読んだ。27歳、作家になる決意をしてからの数年間に執筆した作品ばかりだけれど、どの作品も今と同じテーマで驚いた。主人公は、ほんの些細なことから心の闇にアクセスしてしまう。その対象として、必ず女性が存在する。女性の奥深く、頑丈に鍵をかけて閉じ込めている「禁忌」を引き出し、犯させ、犯す。それはいつも共犯という形で、闇の先に進んでいく。女性の「禁忌」に押し込められている「感性」を取り込み、主人公は人生の糧にする。もちろん、それで平気なわけではない。深く傷つくし、衝撃を受けて人生を顧みたりする。殺すわけではない。でも禁忌を犯すことは、心を殺す。それは主人公も女性も同じように、今までいた平和な領域を超え、 殺し、殺される「共犯」なのだ。当時はストーリー自身に広がりのある『雨のように、きこえる』を表題作に選んだけれど、今なら『無意識の森』を選ぶだろう。今、YouTubeに連載配信している『Synchronicityシリーズ』の、主人公の生き方や運命の道筋が、すでにここにあった。そして当時語られなかった、「殺し、殺され」た後の運命についても、これからの物語の中で、語られるのではないかと思う。CAMPFIREと提携したBASEで、『B-Books』という本のお店を開く予定だ。今、このプロジェクトのリターン限定本以外に、有城佳音のデビュー作、『雨のように、きこえる』のB-Books版を作っている。(有城見萌)
去年の12月、本の表紙に使う紙を選ぶため、神戸市内の紙の卸の会社に行ってみた。見本紙1万種類以上をそろえているそうだ。見たい種類をいくつかピックアップして出かけたけれど、行ってみると全然違う紙に魅力を感じる。厚さ、手触り、見た目など、あれもこれもと、目移りする。紙の種類がこんなにもあるなんて、驚いた。一目ぼれした紙を何種類か見つけ、担当の方に価格なども踏まえて相談してみる。残念なことに、選んだ紙は悉く廃盤になっていた。すると、やはりそこはプロの技なのか、一瞬にして、好みに合わせた別の紙を選んでくれた。凹凸感、手触り、風合い。これなら、小説の世界観を表現できる表紙に仕上がりそうな紙だと思った。何の世界でも、しっかりとプロの仕事をしている人は、大げさかもしれないけれど、人を救うことができると、感動した。このプロジェクトのリターン限定本『Synchronicity~Ⅰ全裸の女たちとアウシュビッツ、文字たちの集団脱走/Ⅱ天使たちの原罪』を作るにあたり、わくわくするような、励みになる一日をもらったので、私はわくわくするような本を作ろうと思った。(有城見萌)
このページをご覧いただき、ありがとうございます。今日は金曜日。21時、YouTube配信。「⑥殺す女を愛し飢え~守護悪魔のレクチャー~十戒。天使と悪魔の境界/SynchronicityⅢ」朗読録音のとき、作者の佳音さんがモニターしながら、途中で止めることがある。声で聴く文章と目で辿る文章では、印象がまったく違う。耳で聴く文章は、会話の続く箇所はスピード感が必要なので、場合によって、合間の描写をごっそり削ることもある。ひとつひとつ、その場で直接原稿を変えていく。朗読は、耳に流れの良い言葉に変わるのが、面白い。そのあと、書籍版として、膨らませて加筆していく。書籍には人物の動き、時間の流れに沿った描写が、その場面の温度や質感を伝えていく。また、そこに至ったエピソードも加わる。朗読は、素早く流れをとらえ、世界を楽しんでほしい。書籍では、ゆっくりと、ひとつひとつを辿ってほしい。そんな願いを込めて、『Synchronicity』を作っている。(有城見萌)
本日より、クラウドファンディングを開始しました。初めてなので、緊張しています。ゆっくりとB-factory12の世界を楽しんでください。よろしくお願いします。