私たちが開設した学校図書室で出会った双子の兄弟、チュン君とチェン君の話をします。
ふたりが住む、ヴィエンチャン県ムーン郡は首都から車で5時間、海抜300メートルほどの田畑の多い丘陵地です。私たちは2015年に、ふたりが通うナムプーン中等学校に図書室開設の支援をしました。チュン君チェン君をはじめほとんどの生徒は、この図書室で初めて教科書以外の本と出会いました。
読書の楽しさを知ったチュン君チェン君は毎日図書室に通い、1か月に16~7冊の本を借りているとのことです。
おばあさんと暮らすふたりの両親は、彼らが2歳の時に離婚し、それ以来、お父さんとは音信不通、お母さんはタイに出稼ぎに行っていて、年に一度の帰省の時にしか会えません。休日には、片道2時間かけて山道を歩き、畑へ行き、唐辛子の収穫を手伝います。収穫した唐辛子は、大きな袋に入れて、頭や肩に引っかけて、山から持ち帰ります。そして小分けにして、市場で売ったり、近所の家々をまわり売り歩いたりするそうです。
好きな本について尋ねたら、チェン君は、ラオスの民話『カンパーと歌うジャコウネコ』と答えました。「主人公のトンとジャコウネコが、村の人を喜ばせるシーンがかっこよくてワクワクする!ぼくもトンみたいに優しく立派な大人になりたいんだ」と元気よく話してくれました。主人公に自分を重ねて、勇気をもらったそうです。
チュン君は、もぞもぞしながら小さな英語の絵本を手にしていました。アメリカのテレビ番組「セサミストリート」のキャラクターが表紙になっている薄い絵本。私たちの団体がご寄付でいただいた絵本を図書室に置いたものでした。
小さな子ども向けの絵本なので、中学生としては、ちょっと照れくさかったのかもしれません。「えっと、この子はエルモっていってね、色々なところへ行くんだ。」と、本の内容を一生懸命に説明してくれました。
「もっともっと英語を勉強して、色々な外国の人と話せるようになりたいんだ」とのこと。
「英語話せる?」ときくと、「うん、ちょっとだけ・・・・・Nice to meet you!」
1冊の本との出会いが、世界への扉を開けて、翼となって、彼らを飛び立たせるようにみえました。そんな彼らの姿に私たちも勇気をもらっています。