4月3日(日)の状況です。福動さんによる毘沙門堂の建ち起こしが終わり、床下での作業ができるように井桁を組んでお堂全体を嵩上げしています。ブルーシートを被せていますが、建ち起こしの前に屋根瓦は撤去しています。向拝(正面前面の2本の独立柱で支える、立ってお参りする部分)の柱は大きくねじれていたため撤去しており、新しい柱に取り替える予定です。向拝の梁や水害で外れた建具などは廃棄せず、できるだけ旧材を使うために敷地内に保管してもらいました。使えない場合も、同じ材料・寸法・形状で作りますので、とにかく保管しておく意味があります。ちなみに屋根瓦はセメント瓦で当初のものではなく、今回は新しい瓦に葺き替えますので、廃棄しました。基礎を作る前に、床下に溜まった泥を撤去する必要がありますが、床下空間には重機が入らないため、人力での大変な作業になります。基礎を作った後、再度土を埋める作業が必要ですが、これも大変な作業となるため、ボランティアの皆さんにご協力いただくワークショップを開催する予定です。正面中央の柱の足元は断面の半分近く腐っていますが、ここは根継ぎ(上部は旧材のまま下部だけ新材に取り替える。その際に構造的に弱くならないような継手で継ぐ。)で対応したいと思います。
ご支援いただいている皆さま、大変ご無沙汰いたしております。昨年7月3日の投稿以来、実に9ヶ月ぶりのお知らせとなります。当初のスケジュールですと3月末に修復工事は完了している予定でしたが、現在の進捗状況は、、、先月26日(土)にようやく修復工事の契約を締結することができた段階です。修復された姿を楽しみにされていた皆さまには、お待たせすることになってしまい、申し訳ございません。大幅に遅れた理由について、言い訳がましく長文となりますが少々お付き合いくださいませ。クラウドファンディング達成後に当初の予算で修復する設計案をもって地元大柿地区の代表者の皆さまと協議させていただいたところ、嵩上げしてほしいとの要望が出されました。当初より水害前の姿に復原することを前提に設計と見積もりを行なっており、嵩上げの予算は見込んでおらず、当然予算オーバーとなってしまうために、設計内容を見直す必要が出てまいりました。地元からは、建物を全部一旦解体して、嵩上げした後にその上に建て直してほしいとのご意見と、いっそのこと低予算で新しいお堂に建て替えてほしいとのご意見も出されました。低予算で新しいお堂に建て替えることは、元の建物と似ても似つかないものになってしまうし、聖地巡礼の場所を復興するという当クラウドファンディングの趣旨に反しますので、ご支援いただいた皆さまのご了解を頂けないとできませんし、ご了解を頂くことも不可能ですとお断りしました。また、嵩上げした上に建物を建て直す場合、盛土した後にすぐ建物を建てると不同沈下を起こしてしまうため、盛土が安定するまでに十分な養生期間を設ける必要があります。さらに、一旦建物を全部解体してしまうと、木材が傾いたまま長期間放置されて捻(ねじ)れた癖がついており、元の部材を綺麗に組み立て直すことはまず不可能です。そこで、基礎石の下に、既存の土間コンクリートと一体化させて新たに嵩上げ分の高さ80cmの基礎コンクリートを打設し、不同沈下を防止することにしました。また、建物は現状のままで解体せずに瓦を下ろして重量を軽くした上で建ち起こし、建物全体を床下での基礎コンクリートの打設作業ができる高さまで一旦嵩上げし、基礎を打設して、基礎の周りに土を入れた上で、建物全体を地盤まで再び下ろす工程を考えました。この作業で必要となるのが、曳家(ひきや)の技術です。曳家とは、建物を解体せずに水平方向や垂直方向に移動させる技術のことで、建物を修復する大工さんとは異なる専門的な職種です。そこで、地元人吉市内の曳家さんである有限会社福動(ふくどう)さんに、水害復興で多忙を極めておられるだろうと思いつつ見積もりをお願いしました。福動さんは、地元では曳家というよりむしろ解体業者として浸透しており、地元向けに曳家もできますよ、とアピールしたいと考えておられたそうで、快く引き受けてくださいました。クラウドファンディングの趣旨も説明し、宣伝費と思って見積り額も勉強してください!と図々しくお願いしたところ、格安にして頂きました。また、建築業者は人吉市のお隣の山江村の業者さんで、建築士会会員でヘリテージマネージャーの仲間でもある三宅建設株式会社にお願いしました。三宅建設さんにも予算内に収まるように諸経費を勉強して頂きました!ということで、無事にようやく、ようやく、ようやく契約まで漕ぎ着けることができ、一安心したのが上の写真です。写真左が有限会社福動・代表取締役の福嶋太郎さん、中央が中神町大柿地区の一橋國廣さん、右が三宅建設株式会社・代表取締役の三宅裕二さんです。これから三者の連携による修復工事過程をご紹介していきたいと思います!ちなみに、リターンについては当初の予定では5月発送としておりましたが、予定を早めて今月発送することにしました。ゴールデンウィーク中に人吉球磨アニメ通リズムマップを片手に人吉球磨を周遊して頂き、良ければ大柿毘沙門堂の修復現場もご覧頂き(安全対策として敷地の外からの見学をお願い致します)、修復に向けて作業中の福嶋さんや三宅さんに激励のお声掛けを頂ければ、さらにより良い修復工事になると思っております。引き続き応援のほど、ぜひぜひよろしくお願いいたします!長文・駄文失礼いたしました。
さる6月30日をもって、クラウドファンディングの募集を締め切らせていただきました。この間、一ヶ月間にわたって、絶えずご支援・ご協力をいただき、ありがとうございました。連日アップさせて頂き、皆様のタイムラインをお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。おかげさまで、どうにか終了30分前に目標額を達成する事ができました。私自身、初めてのクラウドファンディングでしたが、多くの事を学ばせていただきました。何よりもこのクラウドファンディングを通して、旧友や先輩・後輩と支援を通して久しぶりに交流を持てた事は大きな収穫でした。これから、大柿地区の皆さま、人吉市役所、ヘリテージマネージャー、建設業者さんと協議を重ねながら、また復興計画も見据えながら毘沙門堂を修復してまいります。今後も課題は次々と出てくるかと思いますが、この度の皆様からのご支援を支えに実現に向けて頑張ってまいります。写真は、今年の2月、市役所と地区の皆さんからの相談を受け、最初に毘沙門堂に伺った時に撮った写真です。この時は先が見えない状況でしたが、クラウドファンディングを提案し、Facebook上に「まだ希望はある!」と自分を鼓舞する意味も込めてアップしました。クラウドファンディングを終えた今、確信を持って改めて書きます。「まだ希望はある!」ご支援・ご協力、本当にありがとうございました。
先日紹介した山江村歴史民俗資料館に保管されている水害で被災した仏像・神像の中に、「小松さん」という可愛らしい仏像がありました。実はこれ、大柿毘沙門堂に隣接する五輪塔群の正面にある平重盛の供養塔に祀られていた石像坐像なんです。↑球磨工業高校伝統建築専攻科ブログより供養塔にはかつて石の壁や屋根で囲まれた覆屋がありました。4年前には地元にの球磨工業高校の伝統建築専攻科の学生さんの手によって修復されましたが、今回の水害で流失してしまいました。特徴的な壁と屋根の石は、水害後にバラバラになっていましたが、地元の皆さんが見つけてこられ、供養塔の傍にまとめて置かれています。↑球磨工業高校伝統建築専攻科ブログより実は、修復前のこの建物も五輪塔群とセットで「夏目友人帳」に登場しており、ファンの皆様には馴染み深い建物だと思います。↑球磨工業高校伝統建築専攻科ブログより毘沙門堂を修復後には、再び球磨工業高校の伝統建築専攻科にお願いして、こちらも再建したいと考えています。そのためには木材の材料費を負担する必要がありますので、ぜひ目標額を達成して周辺の一体的な整備まで実現させて、聖地としての価値がさらに高めたいと思っています。あと7時間と少しとなりましたが、最後までご支援・ご協力をお願いいたします!すでにご支援いただいている方も、シェアで広めていただけたら嬉しいです!よろしくお願いいたしますm(_ _)m
今日、暗くなってから毘沙門堂に行ってきました。球磨川の河川敷からはいろんな生き物達の鳴き声が聞こえてきて、夏目友人帳さながらの妖の世界観が漂っており、まさしく聖地にふさわしい場所だと実感しました。今日どうしても行きたかった目的は、芳名板の写真を撮りたかったからです。先日の取材の際、一橋町内会長さん達に、今回のクラウドファンディングでご寄付いただいた皆さまの芳名板を修復した堂内に掲げさせて欲しいとお願いし、快く承諾していただきました。毘沙門堂は、安永二年(1773年)の球磨絵図にも描かれており、古くは室町時代頃からこの地で信仰されていたようです。その後、文政六年(1823年)に火災に遭いながらも再建し、近代に入ってからも明治二十四年(1891年)に毘沙門天様に彩色が施されたり、昭和十五年(1940年)に屋根を修理したり(茅葺きから瓦葺きに変更か?)と、その時々の大柿地区の人々によって大切に守り伝えられてきました。現在、堂内には昭和五年と昭和五十九年の二つの芳名板が掲げられていますが、芳名板はその時々の人々の想いに触れることができる手段の一つだと思います。今回、おかげさまで160名を超える皆様にご寄付をいただきました。皆様おひとりおひとりのお名前を芳名板として堂内に控えめながらも掲示させていただき、未来へと想いを繋いでいきたいと思っております。ただし、個人情報保護の観点から希望される方のみとさせていただきます。残り一日となりましたが、最後までご協力のほどよろしくお願いいたします!