親友ヨッシーの名店「マルショウ アリク」が閉店した。建物取り壊しのため。2年ぐらい前から、期限が延びたりもしつつ、ついに昨日がその日となった。
僕がヨッシーに会ったのは、アリクが開店して数週間後のこと。たまたま、松陰神社の商店街を歩いていたら、店の前に野菜を並べ、販売しているのが目に止まった。声をかけるととても気持ちのいい青年が応対してくれた。僕の大好物の牡蠣の専門店ということも分かった。
数日後に再訪。彼の考え方、行動、こだわりは、めちゃくちゃ面白かった。状況を楽しむ才能もあった。最初に聞いた印象的な話は、アリクを開く直前にポスティングのアルバイトをしていたときの話。単にポストに紙を入れるだけでなく、庭や建物を観察し、自分の琴線に触れるものがあれば、持ち主に語りかける。アリクの商圏に、どんな面白い人が存在しているか、把握していると言った。
大事な友人を連れて行く店だった。シャルソンの給○スポットもお願いした。何度かコラボイベントもした。推定36年ものの岩牡蠣を食べさせてもらったことがある。「市場に行ったら、すごい牡蠣があって、恭さん来ると思ったから買っといたよ」。
そういえば、アリクで飲み物以外注文した記憶がない。いつも絶妙なタイミングで、期待を超える美味いもんを食べさせてもらった。
最終日は、店の周りが大混乱していた。みんな幸せそうな顔をしていた。騒がないように、近隣の迷惑にならないようにと、声を掛け合っていた。アリクの最終日を、いい形で締めくくりたい、自分もその中の一部になりたいと誰もが願っていた。
閉店の日は忙しいものだ。全てのお客さんが、一度に話しかけてくる。食べる量、飲む量も半端ではない。僕はそっと、遠くから見つめるだけにしておこうと思っていた。
夜10時を過ぎ、いい感じて人流も落ち着いてきた。詩人が朗読のパフォーマンスをし、スタッフ1人ひとり、思いを述べた。
ヨッシーは照れていた。しゃべることはないから、なんか質問してくれと言った。そこで突然指名があった。今の俺の気持ちを、すでに味わっている人がそこにいるからと。
パクチーハウスの最終日を思い出しながら、ヨッシーにいくつか聞いてみた。彼の答えは明確。別に店を閉じるだけで、終わりとかじゃなくてこれから始まるんだ。
多くの人が交流した「コの字カウンター」は、ヨッシーが働いていた市場で使い古されたパレットを転用したものだ。約7年間、そこでたくさんのストーリーが染み込んだ。そのカウンターは、SOTOCHIKU素材として鋸南に旅立つことが決まっている。パクチー銀行は、アリクの一部を取り込んで始まることになる。
以下の動画は2018年3月10日の記録。パクチーハウス無店舗展開宣言。