◎吉満明子さん(株式会社センジュ出版 代表取締役)千住に暮らして15年以上、千住で起業して6年以上。しかも自宅も事務所も、大黒湯から徒歩圏内です。まだ幼い息子を自転車の後ろに乗せて、汗を流しに向かった夏の日。仕事で失敗して、小さな露天でぼんやり夜空を見上げていた秋の日。そして、少し大きくなった息子と息子の友達と一緒に別れを惜しんだ、営業最後の日。私にとって大黒湯は日常の中にあり、すぐそばにある尊い景色の一つでした。解体が始まってからは残念な気持ちが募る一方でしたが、安養院さんの勇断には頭が下がるばかりです。過去から時代を超えて残り続けたまちの財産が未来に手渡されていくことを願います。(プロフィール)1975年福岡県生まれ、1児の母。千住3丁目に2015年に設立したセンジュ出版の代表兼、2022年4月からはまちの共有地「空中階」管理・運営人。
◎風呂わく三さん(芸人 / 司会 / リングアナウンサー)大黒湯の廃業、2021年最大のショックでした。僕が子供の頃から見慣れた景色が、また一つ無くなってしまった。しかし90年以上、千住の人々、銭湯ファンを楽しませて来たその外観の一部を残して頂けるのは本当に有り難い。安養院さんとプロジェクトメンバーの皆さんには感謝です。せっかく移築するんですから、戻したり、逆流させたりしないようにして下さい。だってこの唐破風屋根は大黒湯の【遺産(胃酸)】ですから。(プロフィール)足立区千住在住。「AM1422 ラジオ日本 ハッピードリーム唄の贈りもの 司会」定期放送中。漫談やマジック等の演芸アトラクション、パーティーやイベントの司会、格闘技のリングアナウンサーとしても活動中。
◎小笠原正豊さん(東京電機大学建築学科準教授)建物を永きにわたって保存していくためには、確固たる意志を持った方々が責任をもって引き継いでいくことが必須となります。多くの貴重な建築物が取り壊されていく現在、唐破風屋根を保存することで大黒湯の記憶を引き継ぐ決断をされた「安養院」のご住職と関係者の皆様に敬意を払います。
◎横手義洋さん(建築史家/東京電機大学建築学科教授)千住に残る宮造り銭湯として長らく人々に親しまれてきた大黒湯が、残念ながら取り壊されることになりました。ただ、そうしたなか、玄関部の唐破風屋根を保存しようというプロジェクトが有志により進行中とのこと。ひとりひとりのささやかな《気持ち》によって危機に瀕した建築遺産が懸命に命をつなごうとしており、大変感銘を受けました。もはや容易に再現することのできない繊細な装飾を備えた唐破風屋根が、末永く地域の未来を元気づける源になりますように。
◎豊田啓介さん(東京大学生産技術研究所特任教授/建築家)何とか保存と新しい活用方法を模索した大黒湯ですが、残念ながら解体となってしまいました。バーチャルに残すだけでなく、そのシンボルである唐破風を保存できる可能性があるとのこと。何とか移設保存が成功すること、期待しています。