フルゲンスは、1994年の大虐殺の起きたルワンダの南隣、ブルンジの出身の50歳。ルワンダと同じようにフツとツチが人口の大多数を占めていますが、双方の間では激しい対立が起きてきました。1993年に11万人が殺される大虐殺が起きたのですが、フルゲンスは家族を皆殺しにされ、元々やっていたビジネスも破壊されました。彼はその後、再び結婚して子どもを授かりますが、次に起きた内線でまた家族を皆殺しにされ、ウガンダへの難民キャンプへと逃れました。だが、そこで家族を皆殺しにした加害者とバッタリ出会い、半殺しにされてキャンプを追い立てられ、ケニアに逃れてきました。そして、今まで隠してきた自らの性的指向について向き合うようになったそうです。今は「ハズバンド」と呼ぶ20代の男性とともに暮らしています。私たちがナイロビを去った数日後、フルゲンスが就職できたとの知らせが届きました。住み込みでの仕事でした。フランス語やスワヒリ語はできても英語ができない彼が仕事が得られたのは正直言って意外でしたが、とても喜びました。彼は荷物をまとめてシェルターを去ったのですが、わずか2日後に戻ってきてしまいました。雇用主は彼のことをとても気に入っていたのですが、その妻は「難民は嫌」だと頑なに反対したため、働けなくなり結局戻ってきたのでした。「LGBT」であることを明らかにしなくとも、「難民」であることで差別を受ける事例は決して少なくありません。一方、ウガンダ出身のメディは、ナイロビ市内の理髪店の働き口を得ました。しかし、独立できるほど充分な収入が得られないため、引き続きシェルターで暮らして職場に通うことになります。
しばらく活動報告が止まってしまい申し訳ありませんでした。植田は8月25日から29日までケニアに滞在し、レストランを含めたLGBT難民シェルターの現状を見てまいりました。いいニュースと悪いニュースがあります。まずは悪いニュースからです。ケニア政府は、IMFとの合意に基づき財政赤字の縮小のために、増税法案を国会で審議していました。これに対してGen Zと呼ばれる2〜30代の若者を中心に大規模な抗議デモを起こし、6月25日には国会議事堂を占拠するに至りました。ケニア政府は鎮圧に乗り出し、50人の死者、多数の行方不明者を出す事態となりました。増税法案は下院で可決されたものの、ルト大統領は結局、撤回に追い込まれました。抗議活動に関する情報共有はTikTokなどのSNSで行われたのですが、そこには少なからずデマが混じっていました。その中には「ウガンダのムセベニ大統領が裏で糸を引いている」「ムセベニがケニア人を拉致した」などと言った荒唐無稽なものもあったようで、ナイロビCBD(市内中心部)のウガンダハウスというビルが放火されるなどウガンダに関連する施設が、デモに乗じてデマに煽られた人々に襲われました。残念ながら、皆さんの浄財で再開に至ったLGBT難民シェルターが営むレストランもその標的となってしまいました。何者かにより投石され、大切な商売道具である液晶テレビ(サッカーの試合を放映しお茶代、おやつ代をもらうビジネスモデル)3台やその他の設備が盗まれてしまいました。なお、彼らが難民であることは地域住民に知られていますが、LGBTであることは安全上の理由から絶対に秘密にされていて、ほぼ誰も知りません。【画像】液晶テレビが設置されていた枠普段から懇意にしている警察から「当面は店を閉めたほうがいい」とのアドバイスを受け、泣く泣く長期の臨時休業に入りました。店では難民6人とケニア人2人を雇っていたのですが、仕事がなくなってしまいました。警察は事件の捜査に乗り出しましたが、難民の皆さんは有耶無耶になることを望んでいます。監視カメラを設置していたので犯人の目星はある程度付いているようですが、もし警察が逮捕に踏み切り、その犯人が地域住民だった場合は、「ウガンダ人がケニア人を警察に売った」と言われ、報復されることが火を見るよりも明らかだからです。【画像】ひっそりとした店内ここからはいいニュースです♪一連のプロジェクトに賛同してくださっている社民党の大椿ゆうこ参議院議員が一緒に現地で視察を行い、地元の警察署長、町長に会うことになりました。大椿さんは、レストラン再開に向けて協力して欲しいと署長に要請したところ、署長はぜひ協力したいと約束してくれました。日本と異なり、ケニアにおいて上院議員は雲の上の人扱いらしく、会うことだけで非常に名誉なことらしいです。そんな日本の上院議員(=参議院議員)に頼まれては断るわけにはいかないようです。【画像】(左から)町長代理、大椿ゆうこさん、警察署長また、駐ケニアの岡庭建日本大使の仲介で、隣の選挙区(とは言っても通りの反対側なのでほぼほぼ地元です)選出のチェゲ下院議員がシェルターと訪れ、大椿さんやシェルターの皆さんとお話をしたのですが、それもいい影響を与えたようです。【画像】再開に向けて久しぶりに明かりが灯ったレストラン(今月4日撮影)他にもご報告すべきことは多くあるので、何度かに分けます。なお、細々とした活動報告やカンパのお願いなどは、僕個人のTwitterで行っております。 #ケニアLGBTQIA難民サポートで検索してみてください。https://x.com/yoox960093/status/1831585300201795954【画像】レストランの外観。久々に鍵を開けました【画像】テレビが盗まれてしまった裏の部屋【画像】2階の部屋。営業終了後に真っ暗な夜道をシェルターまで徒歩で帰るのは危険なので、ここで寝るそうです【画像】2階の部屋に上がる急な階段
別サイトで行っておりましたクラウドファンディング「ケニアに住むLGBT難民に医療と住居を届けたい」ですが、244人の方から165万2000円のご支援をいただきました。本当にありがとうございました。早速ですが、先日ケニアに32万円(25万1381シリング)の送金を行いました。そして、昨日7月10日、シェルターの代表のジワさんが手術を受けました。長年、痔瘻に苦しめられ、細菌感染で月に1回は高熱を出して寝込み、痛みのせいで寝られない状況が続いてきたのですが、ついにそんな状況から解放されることになりました。さきほど届いたジワさんからのお礼のメッセージです。(個人情報が含まれていない部分のみの公開です)この場を借りて、昨日行われた手術のスポンサーになってくださったことに感謝します。3年もの間、ひどい痛みに耐えてきましたが、新しい命が与えられたような気がしています。私は、ケニアにいるLGBTQ+難民を救うため、シェルターの活動を、健康な状態で行えるようになりました。本当にありがとうございます。皆様に神のご加護がありますように。ジワなお、現在円安により、今年1月に1シリングが1円、クラファン開始時の4月には1シリングが1.2円だったのが、今では1.25円となっています。為替レートとプロジェクトの進行状況を見ながら、細かく分けて送金する予定です。8月の下旬にわたくしとカメラマンの二人でケニアに行くことになりました。航空運賃は1人あたり往復で16万3950円、宿泊費は7万5520円、ETA(電子ビザ)は69.99ドル(1万1525円)で、現時点で41万4945円がかかっています。これらすべてはご支援から払わせていただきました。ありがとうございます。お知らせが直前になって申し訳ありませんが、今晩11日の20時からYoutubeで放送されるNO HATE TVに出演することになりました。もしよかったらぜひご覧ください。引き続き活動報告をしてまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。植田祐介
ケニア政府は、財政再建を求めるIMFとの合意に基づき、増税を行う法案を提案しました。市民からの反発にもかかわらず、ケニア議会は昨日25日、増税案を賛成多数で可決しました。普段から物価高、公務員によるワイロ要求に苦しめられ、政府高官の不正蓄財に不満を持っているケニアの市民、中でもZ世代を中心にした人々が大規模なデモを開催しました。デモ隊は昨日、国会議事堂になだれ込み一部に火を放つなど激しい抗議活動を行っています。さらに警察のトラック、ナイロビ市役所、郊外のキアンブ・カウンティの選挙区開発基金の事務所、地元選出で増税案に賛成した議員の自宅に火を放つ事態になっています。また、CBD(国会のあるナイロビ旧市街中心部)では店舗の略奪が起きています。また、LGBT難民シェルターのあるエリアのそばを通る大通りや、比較的近い繁華街などでもデモが行われています。ケニアはアフリカでは珍しく内戦を経験していない国で、2007年の大統領選挙後に1000人以上が殺された大規模暴動以来の騒擾となっています。事態を受けてルト大統領は演説で「若者のデモが犯罪者集団に乗っ取られた」として、強硬策に出る方針を示しました。国会付近では発砲で少なくとも5人が死亡したと報じられています。このようなときに巻き添えを食らうのが社会的に立場の弱い人々です。アフリカ諸国出身の外国人、LGBT難民もそこに含まれます。シェルターとレストランを運営するFHIは、安全のためにレストランを1週間臨時休業することを決定しました。皆さんからクラウドファンディングでいただいた浄財で再建したレストランが破壊されるようなことになっては申し訳が立たないからです。レストランの1日の利益は1000シリング(1230円)から1400シリング(1720円)、多い日は4000シリング(4930円)なので、大損害です。現地とはメッセンジャーアプリを使って緊密に情報のやり取りをしていますが、今のところ被害はないようです。シェルターに住むLGBT難民の皆さんは、もしかして襲われるのではないかという恐怖に震え、シェルターに閉じこもっています。病気の人は、病院にも行けず、私が日本から持っていったロキソニンを飲んでただただ耐えているとのことです。現在、別サイトで行っているクラウドファンディング「ケニアに住むLGBT難民に医療と住居を届けたい」が終盤に差し掛かり、少しでも明るい未来を思い描いていたのですが、このような事態になりとても不安に思っています。ケニアの人々の願いが受け入れられ、現在のような状態が一日も早く収まることを望んでやみません。
今月の8日(土)、シェルターの代表のジワさんが逮捕されてしまいました。幸いにして11日(火)に釈放されました。この件についてご説明いたします。シェルターの家賃はレストランの利益で賄っていますが、先日来の長雨、洪水で体調を崩す難民、病気を持ったままシェルターに転がり込んでくる難民が多数いて、医療費がかさんでしまいました。代表のジワさんも痔瘻を患っており、しばしば高熱を出して入院しています。その穴埋めのために、ケニアの銀行、Equity Bankのキャッシングを使っていました。年利は年利25%、負債総額は38万3940シリング(1シリング≒1.2円)です。融資担当の支店長と契約書、法律に基づいた話し合いを行い、クラファンが成功し、医療費が減ったら、レストランの利益から少しずつ返済するということで話がまとまった、とばかり思っていました。ところが、先方さんは納得していなかったのか、難民という不安定な地位に付け込んだのか、彼を詐欺罪で訴えました。それで病院にいるときに逮捕されてしまいました。なお、ケニア人ならこのようなことで逮捕されることはないそうです。シェルターを運営するFHIのスタッフでケニア人のフランクさんを通じて警察や銀行と交渉を行いました。それでまずは10日(月)の午前9時(日本時間で午後3時)までに20万シリングを支払うことで訴えを取り下げるとの約束を取り付けました。皆さんからカンパ用個人口座にカンパをいただき、9日(日)の夜に25万円(20万5000シリング)を送金しました。通常は数分から数十分で到着するのですが、額が大きかったせいかまる一日かかってしまい、11日(火)の早朝にようやく到着しました。そして、以下の条件で釈放されました。(1)警察に罰金として1万1500シリングを払う。(根拠不明)(2)7月15日までにローンの残りの20万シリングを返済する。ジワさんは獄中で休めばいいのに、自分が第三国定住した後に残されるLGBT難民の生活を支えるために組織の永続性を持たせようと、役割分担やその教育(経理、パソコン、行政との交渉)について構想をねっていたそうです…LGBT難民が逮捕されることはそんな珍しいことではありません。特にモーゼスさんは難民の権利保護のためにデモやハンスト、集会を度々開いていたせいで何度も逮捕されています。一方のジワさんは、ともかくケニア政府との摩擦を避ける手法を使い、今まで逮捕されることもなかったので、とてもショックを受けました。しかし、おおごとになるまでに対処できてよかったです。これもひとえに皆様のおかげです。本当にありがとうございます。先週はこれ以外にも様々なニュースがありました。◯シェルターを運営するFHIが難民自助NGOとしてケニア政府から正式に認定されました。◯定員オーバーでシェルターに入れず、クラファン達成後に小屋を建設して住んでもらうことになっていた難民が一時的に住んでいた家が近隣住民から襲われました。15日(土)早朝に荷物を取りに行ったのですが、役場により家が封印されていて中に入れず荷物を取り出すこともできなかったそうです。解決方法はわかりません。◯15日に開催された名古屋レインボープライドに参加して、アフリカ出身のLGBT難民(若干ぼやかしています)にお会いしました。日本で無事難民認定を得たとのことで、抱き合って喜びしばらく話し込みました。15日22時の時点で、現在のクラウドファンディングに135人の方から96万6000円のご支援を頂いています。残りは15日、30万4000円、達成率は76%です。ファーストゴールが達成できれば、引き続きセカンドゴールに進もうと考えています。引き続きのお力添えのこと、よろしくお願い申し上げます。なお、クラウドファンディングは別のサイトで行っております。「ケニアに住むLGBT難民に医療と住居を届けたい」で検索してみてください。