ウガンダの人権団体HRAPFは、毎月ウガンダにおける反同性愛法の執行状況、ホモフォビア、トランスフォビアに基づく差別やヘイトクライムの件数を集計、発表しています。それをDeepLを使って翻訳し手おなししたものをこちらに掲載します。
これはあくまでもHRAPFに報告されたものに過ぎず、ウガンダにおける差別やヘイトクライムの全体像を描ききれていませんが、ケニアにいるLGBT難民がどのような経過をたどって来たかを理解するに当たって、一助になると思います。
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2024年4月の1カ月間における、性的指向または性自認に基づく暴力と侵害に関する報告書
1. はじめに
ウガンダ憲法裁判所が、2023年第14号、第15号、第16号および第85号連結上訴(Hon. Fox Odoi Oywelowo and 21 others v. Attorney General and 4 others)において、反同性愛法(Anti-Homosexuality Act, 2023、AHA)の各条項を無効とする判決を下し、同法に基づく犯罪を犯したと知ったり疑ったりした者すべてに報告義務を課すこと、犯罪者が末期疾患であることを理由に同性愛の犯罪を加重すること、同性愛を目的とした施設の賃貸を禁止することなどが認められた。
しかし裁判所は、同法の同性愛、重度同性愛、児童グルーミング、同性婚、同性愛の促進を犯罪とする部分は維持した。また、2024年4月は反同性愛法が施行されてから11ヶ月目にあたる。この段階で、反同性愛法は、その前身である2014年の反同性愛法の施行期間(2014年3月10日から2014年8月1日まで)の5カ月を、6カ月上回っている。
本報告書は、反同性愛法施行後11回目となる、性的指向および性自認・性表現を理由とする暴力その他の人権侵害に関する月例報告書である。2024年4月の1カ月間に報告された、既知の、あるいは疑われるLGBTIQの人々が、純粋にSOGIEに基づいて暴力や侵害の対象とされたケースについて論じている。本報告書は、以前に同様の作成された報告書に基づくものであり、したがって、反同性愛法施行後(2023年5月30日から現在までの期間)、LGBTIQに対する暴力について入手可能なデータを基に作成されたものである。
2. 方法論
本報告書は、2024年4月にHRAPF法律扶助クリニックが扱ったSOGIEに基づく暴力や人権侵害の報告事例の概要を提供するものである。本報告書のデータは、定性的および定量的なデータ収集方法を用いて収集され、その信憑性を確保するために独自に検証・分析された。 量的データは、ケース・ファイルのレビューから、取り扱ったケースの数と、ここで報告した特定の暴力・侵害事件が発生したケースを確認した。このデータは、事件が発生した状況を確認するために、さらに綿密な質的分析にかけられた。事件における行為が、主に、あるいは完全に、実在の、あるいは推定されるセクシュアリティを根拠として、意図的に人を標的にしたと信じるに足る理由があるケースのみを報告書に含めている。
これまでの報告書と同じく、この報告書は、HRAPFの法律扶助ネットワーク、すなわちコミュニティ・パラリーガル、地域法律扶助センター、専門法律扶助デスク、中央法律扶助クリニックの全国ネットワークを通じて報告されたデータのみを対象としている。この報告書は、HRAPFに報告された全国のLGBTIQの状況を公平に示しているが、2024年4月に発生したすべてのケースがHRAPFのネットワークに報告されたわけではない可能性を認めているため、その月のすべてのLGBTIQの生活実態を代表するものではない可能性がある。
3. 報告されたケースの性質と数
HRAPF が 2024 年 4 月に扱った件数は 99 件であり、2024 年 3 月の 111 件から減少した。99 件のうち、SOGIE を理由とする不利益取扱いの直接の対象となった事案は 44 件であり、2024 年 4 月の全取扱事案の 44.4%23 を占めた。
このように、SOGIEに基づく不利益取扱いの対象となった件数は、2024年3月の52件から4月は44件に減少し、その被害者数も3月の66人から4月は61人に微減した。
2024年4月の1ヵ月間にLGBTIQの人々が特に不利益な扱いの対象となった44件のうち、19件は賃貸物件からの立ち退き、17件は暴力および暴力の脅迫、8件はセクシュアリティに関連した理由による逮捕であった。これらの行為は合計61人に影響を与えた。本セクションでは、これらのケースの詳細なデータを報告する。
3.1 賃貸物件からの立ち退き
賃貸物件からの立ち退きは、記録された違反の中で最も高いカテゴリーであり続けた。2024年4月、HRAPFの法律扶助クリニックに報告された賃貸物件からの立ち退きは19件で、23人に影響した。これは2024年3月に記録された23件(26人に影響)から減少した。ワキソ(5件)、カンパラ(5件)、ジンジャ(2件)、そしてアルア、アムル、キソロ、マサカ、ムバララ、ムコノ、シロンコから各1件報告された。立ち退きは主に不動産所有者/地主(14人)、次いで家族(4人)、不動産所有者と協力している地方議会当局(1人)によって行われた。
ケース1
依頼者の家主は、依頼者が同性愛者であるという疑いで彼を立ち退かせた。これは、依頼者の近隣住民が、依頼者が同性愛者であるとして家主に苦情を申し立てた後、隣人の子どもたちが依頼者の行動に影響を受けることを心配し、家主に立ち退きを要求したためであった。
ケース2
依頼者の従姉妹が同性愛者であることを非難し、彼女はそのまま両親に報告した。依頼者の両親は従姉妹から聞いた情報を鵜呑みにし、彼女を家から追い出し、彼女はホームレスになった。
ケース3
依頼者は少年たちを自宅に招き入れたため、同性愛者ではないかと疑われた。依頼者の隣人たちは、依頼者が自分の家で多くの少年たちを受け入れていたとクレームを出した。大家は彼を追い出した。前払いした2ヶ月分の家賃の返還を拒否した。
ケース4
依頼者は、村で長年ホモセクシュアルと疑われていた男性と非常に親しかったため、両親に同性愛者ではないかと疑われ、実家から追い出された。
ケース5
依頼者の妹は、依頼者が男性とばかり親しくしていたことで、彼のセクシュアリティを疑い、実家から追い出した。
ケース6
依頼者の両親は、依頼人がゲイであるとの疑惑を持ち、家から追い出した。依頼者の友人2人が母親に、依頼人がゲイであることをアウティングし、コンバージョンセラピー(訳者註:性的指向を「治療する」とする疑似医療行為)を受けるよう求めたためだ。
ケース7
依頼者の近隣住民は、彼が普段から男性ばかり家に連れてくることから、彼が同性愛者である、どんな関係を持っているかわからないと家主に報告した。家主は依頼人に電話で退去を命じた。
ケース8
依頼者の隣人は、依頼者が同性愛を推進する組織と協力していると家主に報告した。依頼人は家主に立ち退きは勘弁して欲しいと懇願するも、家主は、同性愛者を受け入れる地域だとみなされたくないと考え、彼女に立ち退きを命じた。
ケース9
依頼者の隣人は、依頼者が同性愛者であると家主に通報した。依頼者は支援団体で働いており、その中にはトランス女性もいて、家を訪ねてくることもあった。隣人は家主に依頼者の立ち退きを要求したが、家主はこれを拒否した。
ケース10
依頼者は5ヶ月分の家賃を前払いして入居したが、数日後に家主から電話で、依頼人の性に関する噂を聞いた、今月末までに出ていって欲しいと通告した。家賃の返金を約束したが、その前に追い出された。
ケース11
依頼者はパートナーと喧嘩していたところを隣人たちに見られた。パートナーは二人が恋愛関係にあることを隣人に話してしまった。隣人は家主にそれを通報し、即時退去を命じた。
ケース12
依頼者はLGBTIQのシェルターを運営する団体で、そのことを知った家主は即時退去を命じた。
ケース13
依頼者が同性愛者であるとの噂を聞いた家主は、即時退去を命じ、町長に報告した。町長からは他の物件を借りないようにと警告を受けた。
ケース14
依頼者たちは、女性の家主の子どもの一人に同性愛者だと非難され、家主から追い出された。
ケース15
依頼者は、大家から数日以内に家を明け渡すよう通告を受けた。依頼者は経済的な理由で引っ越すことができなかったが、通知期間が過ぎると、大家はすぐに依頼者の家に入り、家財道具の一部を没収した。
ケース16
依頼者は、近隣住民から同性愛者であると非難され、家主から立ち退きを迫られた。近隣住民は、彼女が男性のような格好をしているのを何度か目撃したと述べた。
ケース17
依頼者は、訪ねてきた友人とけんかになった。友人は外に出て、依頼人が同性愛者だと叫び始めた。数日後、家主から退去を命じられた。
ケース18
隣人たちは、依頼者が同性愛者であると非難し、家主に報告した。大家は激怒して、依頼者に即時退去を命じた。
ケース19
3人の依頼者は、隣人から同性愛者であると責め立てられ、家主にも通報された。結局、追い出された。
3.2 暴力事件
SOGIEを理由とする、または推定される個人に対する実際の暴力や脅迫の件数はわずかに減少した。2024年4月には17件が登録され、20人に影響した。2024年3月には20件が登録され、20人に影響した。
i) 性的指向/性自認に基づく実際の暴力事例
ケース1
依頼者は、同性愛者であると常々非難していた近所の人々から暴行を受けた。事件の前にも、彼らは何度か彼を脅し、いつも軽蔑的な言葉で呼んでいた。
ケース2
依頼者は、バーからの帰り道、見知らぬ人物から暴行を受けた。男たちは彼女が同性愛者であり、女たちと寝ていると非難した後、彼女を殴り、頭部と上半身に重傷を負わせた。
ケース3
4月25日、依頼者は市場からの帰りに何者かに襲われ、同性愛を助長していると非難された。その結果、重傷を負った。
ケース4
依頼者の友人と名乗る人物が、依頼者の父親に電話で、依頼者が同性愛者であることをアウティングした。父親は非常に憤慨し、依頼者に暴力をふるった。
ケース5
依頼者の女性は、近所の男性からセクハラを受けていると報告していた。その男性は、彼女が自分を受け入れ、仲間の女性と寝るのをやめるまで、彼女を追いかけるのをやめない、としきりに言っていた。彼女が彼の誘いを無視し続けると、彼は怒って彼女を殴った。
ケース6
依頼者は夜、歩いて帰宅途中、見知らぬ男3人につかまり暴行を受けた。男たちは、彼女が 「男性のような 」格好をしていることや、「普段は胸を隠している 」ことから、彼女を同性愛者だと非難した。
ケース7
依頼者は、顔見知りの村の男に暴行された。その男は殴りながら、「レズビアンをやめろ、村の他の女性たちをたぶらかすのもやめろ、『普通の』女性と話すのもやめろ」と迫った。
ケース8
依頼者は、自宅を訪ねてきた数人の男たちにゲイであると非難され、暴力を振るわれた。依頼人が事実でないと告げようとしたところ、さらに暴行を加えられ、重傷を負った。
ケース9
依頼者は、顔見知りの近所の男に襲われた。彼は大きな棒を持って彼女に襲いかかり、レズビアンであることを認め、改めることを約束するよう要求した。彼女がそれを拒否すると、彼は棒で彼女を何度も殴った。
ケース10
依頼者たちが自宅に向かって歩いていると、見知らぬ男たちから声をかけられ、「お前らは同性愛者だ、パートナーとして一緒に暮らしている」と叫ばれた。依頼者たちは男たちの横をすり抜けて逃げようとしたが、数分間殴られ続けた後に、ようやく逃げ出すことができた。
ケース11
コミュニティ・パラリーガル(訳者註:法律事務所スタッフ)である依頼者は、反同性愛法に問われたLGBTQの容疑者をサポートしていた。ところが、彼は逮捕されたLGBTQの釈放を勝ち取ったことから、地域の男たちに同性愛を助長していると暴力を振るわれた。
ii) 性的指向および/または性自認に基づく暴力の脅迫に関する事件
2024年4月に報告された、SOGIEを理由とする、あるいはSOGIEと推定される人物に対する暴力の脅迫は合計6件で、8人に及んだ。これらはすべて身体的暴力の脅迫であった。脅迫の主体は、3件が一般市民、2件が本人の家族、1件が本人と面識のない人物であった。アパック、ブシア、マサカ、ムコノ、トロロ、ワキソ地区で各1件発生した。
ケース1
依頼者は友人2人と実家を訪れていたところ、叔母も訪ねてきた。叔母は3人が家の外で座っているのを見つけると、同性愛者だと非難し始め、すぐに立ち去らなければ全員に危害を加えると脅した。彼女はまた、同性愛者の友人を二度と家に連れてこないよう甥に警告した。
ケース2
依頼者の親族は、依頼人者が近所に住む同性愛者と親しく付き合っていることから、彼のセクシュアリティを常に疑っていた。親族は、同性愛者との関係を断ち切らなければ、殴って監禁して警察に突き出すと脅し始めた。
ケース3
依頼者は在宅中にパンガ(訳者註:なた)を振り回す男たちに襲われた。男たちは大声で、彼は同性愛者であり、彼の姉が彼にお仕置きをするために送り込んだと叫んだ。彼は家の中に鍵をかけていたため、危害は加えられず、裏口から逃げ出し、近くの警察署に駆け込んだ。
ケース4
依頼者は、元パートナーの家族から、彼らは「息子を同性愛に勧誘した」「息子は殺す」との脅迫メッセージを受け取った。
ケース5
依頼者は、パートナーの友人たちから、「同性愛者は警察に突き出してやる、確実に刑務所に放り込んでやる」との脅迫を何度も受けた。
ケース6
依頼者は数ヶ月前から同性愛者である疑いをかけられていた。そのことは地域のリーダーに報告されていたが、何の対策も取られていなかった。一部の村人からは、自ら村を出なければ、危害を加えると脅迫された。
3.3 逮捕事例
2024年4月にHRAPFが扱ったセクシュアリティ関連容疑での逮捕者は計8件、18人で、2024年3月の逮捕者数(9件、20人)を若干下回った。逮捕された4件はAHAに基づく犯罪で起訴され、残りの4件は被害者が同性愛者であるとの疑いで逮捕されたが、犯罪目的で徘徊、不法侵入、偽造で起訴され、1件は全く起訴されなかった。いずれも保釈されており、公判請求はされていない。
3件はワキソ県、2件はカンパラ県、1件はアルア県、ブイクウェ県、ムバララ県でそれぞれ登録された。
ケース1
依頼者は24年7月4日、同性愛助長容疑でバクリ地区で逮捕され、オールド・カンパラ警察署に勾留された。
ケース2
依頼者と不和になったパートナーは、パートナーは警察署に行き、依頼者が自分を誘惑したと通報した。警察は依頼者を逮捕し、同性愛で立件した。
ケース3
依頼人は、パートナーに暴力を振るわれそうになっていると警察に通報した。警察がパートナーを呼び出したところ、2人とも男性風の格好をした女性であるとの理由で、2人とも同性愛容疑で逮捕、起訴された。
ケース4
依頼者たちが同性愛者であるという苦情を受けた警察が、依頼者の家に来て、同性愛容疑で逮捕した。
ケース5
依頼者たちは友人宅を訪ね、そこで一夜を過ごした。朝になると警察がやってきて、依頼者たちが一晩中同性愛を行っていたと近隣住民から苦情があったとして、彼らを逮捕した。しかし、彼らは全員、正式には起訴されなかった。
ケース6
依頼者はドイツへのビザを申請中で、推薦状を受け取ることになった。彼は書類に捺印するためにナセル通りに向かったが、周囲にいた警察官がその手紙を見て、書類が偽造されたとして彼を逮捕した。その警察官は、釈放する前にまずその団体の代表を署に呼ぶよう依頼者に命じた。
ケース7
依頼者たちは、一緒にバーに行った友人宅を訪ねた。その後に帰宅しようとしたところ、家の警備員が彼らが同性愛者だとして、家に入れるのを拒否した。彼らはフェンスを飛び越えて帰宅したが、不法侵入で逮捕、起訴された。
ケース8
依頼者たちは午前1時頃、バーから出てきたところを逮捕され、犯罪目的で徘徊した罪で起訴された。彼らはナムゴナ警察署に勾留された。彼らが逮捕されたのは、以前に同性愛容疑で逮捕された友人の身柄引受を行ったことを警察官が覚えていたから。
4. 先月との比較
全体の報告件数が減少するとともに、現実のSOGIEまたは推定されるSOGIEに基づき、意図的に否定的な取り扱いの対象とする行為を含む件数も減少している。2024年3月に報告されたLGBTIQに関する事例は111件であったのに対し、2024年4月は99件であった。現実のSOGIEまたは推定されるSOGIEに基づき、特に標的とされたケースについては、2024年3月には66人に及ぶ52件であったのに対し、2024年4月には61人に及ぶ44件と減少している。 両月とも、登録件数が最も多かったのは立ち退きであり、2024年3月には26人に影響する23件の立ち退き、4月には23人に影響する19件の立ち退きがあった。暴力および暴力の脅迫は、2024年3月の20件(20人に影響)から若干減少し、4月は17件(20人に影響)となった。性的な容疑による逮捕は、2024年3月の9件20人から8件18人に減少した。
5. 前年同月との比較
2023年4月、LGBTIQが関係する合計59件の事件が扱われ、そのうち36件が、現実のまたは推定されるSOGIEに基づき、人々を直接標的としたものであった(扱われた全事件の61.1%)。これらのケースの行動は合計67人に影響を与え、20件の現実の暴力または脅迫、10件の立ち退き、6件のセクシュアリティ関連容疑での逮捕を含んでいた。一方、2024年4月に扱われたLGBTIQに関する事件は99件で、このうち44件が意図的なヘイトに基づくものであり(全事件の44.4%)、61人が影響を受けた。これは、報告されたケースの総数では59.6%の増加、意図的な同性愛嫌悪のケース数では8.9%の増加である。当時、反同性愛方が国会で可決され、大統領の同意を待っている状況だった。
6. 反同性愛法施行から11ヶ月
2023年5月末の反同性愛法の施行から11ヶ月で、法律扶助ネットワーク全体で LGBTIQ が関係する合計 1,002 件の事件が扱われ、そのうち 559 件(55.8%)が LGBTIQ をセクシュアリティに基づいて対象とし、合計 722 人に影響を与えた。
7. 結論
LGBTIQに対する暴力やその他の様々な形態の侵害は、反同性愛法に基づく条項のいくつかが無効とされた最近の憲法の判決にもかかわらず、依然として続いており、顕著な減少は見られない。