焼きを入れると刃物は硬くなります。焼きがもどると刃物が柔らかくなります。
我々は刃物に焼きが入ったかどうかを金床を削って確かめます。
甘いと金床の上をすべるだけでまさに”刃がたたない”。
刃が鉄に食い付いて削る事ができる強靭な刃物を制作しています。
最近特によく注文頂くのが”銑(セン)”でした。鉄を削る道具です。 造る鍛冶屋さんがおられないそうです。
硬すぎると、刃が欠けて使い物になりません。
よい塩梅にできた刃物は永く切れ、強靭になります。
“日本刀で弾丸を斬る”という番組がありました。弾丸が鉛ならそれが可能というものです。
房州鋸は鉄を切ることができたそうです。幕府の金庫がよく破られたため制作を禁止したそうです。
明治時代、二〇三高地の戦いに於いては敵の鉄条網を切断しその名を挙げた、“久光の金切鋏 "君万歳久光"”
などなど。鉄を切った刃物の逸話です。
鍛冶屋さんでも実際に銘を切ったり彫りを自身でする所はないかも知れません。
相手が野菜やナマモノならそこまで考えないでよいですが、因州鍛冶ではしばしば鉄を相手に仕事をします。
鉄と喧嘩できる刃物を前提に製作しております。
鉄を彫る道具もつくります。
樋を掻いた包丁