前回お世話になりまた。因州小鍛冶です。この度も新しい挑戦を引っ提げて参りました。 それは”袋鉈“の製作です。 ”袋ナガサ“という現代の鍛冶屋さんが作る道具があるのですが、下の写真のようにどの袋ナガサを見ても繋ぎ目があります。 ①この角度では繋ぎ目がありませんが、裏返すと....②持ち手のところに折りたたんだあとのようにものが見えます。③この部分は鉄をパイプ部状にしてまくってあります。ですからどうしても端部がこうなってしまうのは分かるのですが...※画像は袋ナガサではありません。構造が同じものを見本にして示しました。これは袋槍という刀剣の一種です。ご覧の通り360度繋ぎ目がありません。見事です。これも同じく繋ぎ目がありません。繋ぎ目があるか無いかがそこまで重要かどうか?実際、現代では繋ぎ目がある製品が溢れています。 例えばスコップ、農具、袋ナガサなどなどは繋ぎ目が空いたままです。しかし、刀剣の世界から見ると先程の袋槍、さらに古くなると正倉院の鉄鉾などは繋ぎ目がありません。(日本の刀剣類は古来より独特な作り方、研ぎ方をし美術品として現代に残ります。その技は現代の職方が到底及ばないともいわれておりますが、袋の形状ひとつ見ても丁寧な仕事がなされていた事がわかります。)そして周辺諸国のものは繋ぎ目が空いたままになっているのです。 繋ぎ目が空いたままの方が容易に出来ること、そして何よりも現代では失伝してしまった。その結果、技術力不足になった事が原因だと考えます。 単に、・コストが掛かるからやらないだけでしょうか? 本当のところは分かりませんが一鍛冶屋の端くれとして先達の技に挑戦してみたいという所から「360度繋ぎ目が無い一体型の袋鉈」は始まり、いよいよあと少しではないかという状況です。 どうか注目頂きご支援頂ければ幸いです。よろしくお願いします。 因州小鍛冶
今日は柄(エ=ハンドル)作りです。二つに割った木材を貼り合わせる方法で製作します。 胴和(口金)柄の口元に補強の為に金属で輪っかを作りはめます。(昔の絵には胴和は無いです。)ロウ付けという方法です。銀を流して金属をくっつける方法です。日本刀にもロウ付けでつくる部品があります。現代では鍛接の替わりにロウ付けが使われた刃物があります。時代を遡ると天智天皇の時代千三百年前の下水菅の工事にもロウ付けの跡がみられるという事で。そんな昔にハイテク技術があったのか!という記事を見ました。「驚異のハイテク技術 天智天皇の水時計を機能させた銅管 (日本銅センター)より」((私の先生は自身の入れ歯を、銀材とロウ付けを駆使して自分で製作して長年愛用しています。なんでも普通の入れ歯だと軽くて外れ易くて、海に潜った時良く無くして困ったそうです。銀は体にも害無く、重さがあるので外れてなくす事が無くなったそうです。そして歯の形に興味を持ち、歯の構造や調整の事など講義して頂きました。))と言うわけで完成した柄です。防水の為に木部に塗りをしています。
銘切は、鍛冶屋が製品に名前を刻む事をいいます。日本で、はじめて銘を切ったとされるのが鳥取の刀工安綱の銘 安綱(平安期)これは収集したものです。鳥取の鍛冶屋さんの銘切タガネ。 すべて自作し、形も大きさも違います。銘切タガネも自身で研究し作ってゆくしかありません。 一番最後の仕上げが銘切です。今までどの工程も一発勝負です。下書き。切り進めていきます。 この形の包丁、とても使いやすいです。 これは古の包丁を参考にしています。それを薄い片刃で再現したものです。このカーブを切っ先といいます。 例えば、肉を薄くおろす時、この切っ先がスプーンですくうようにして切れていきますから、画像の半解凍の肉がスイスイおろされ、仕事が進みます。スイカなんかもつるんといけます。千切りも問題ありません。魚なども捌くとき、最初に切っ先があることできっかけになり、そこから刃が進むという事になります。 (切っ先がスプーンのようになってサクサクおろしてしまいます。 )この手の包丁を探し始めて10年程になります。大昔の人はどんな包丁を使っていたのかと思いまず骨董屋さんを探していましたがありませんでした。某オークションでも一度しかそれらしい包丁は見かけた事がありません。1番近かったのが桑切包丁とかつお包丁、式包丁、刀子、名物包丁正宗などです。絵の中には頻繁に登場します。水気に晒される物ですから現物は残らなかったのかも知れません。或いは皆さんの実家などに残っているのかも知れません。現代は漫画やイラストにこの手の包丁がよく登場します。
和鉄小刀製作始まりました。和鉄とは砂鉄から作った、日本が近代化する以前からあった鉄の事です。古い農具や大八車の覆輪、刀剣全てが和鉄です。わかりやすく“たたら鉄”冒頭の画像のものは捨てるにも捨てられずしていたのを譲って頂いたものです。この鉄を使って小刀を製作致します。。。。にしても大八車の輪っか部分。この輪っか作りは難しいと思います。私にとっては刃物よりも難しいです。お師匠は同じ道具を使ってパパッと仕上げてしまいます。今後の課題です。6月に入って、草刈があったり、湿度があって火力が上がらない日などがあったり、これから暑くなる一方で鍛冶屋泣かせの時期になってまいりました。昔から、夏の暑さが鍛冶屋にとっては命取りの例えで“鍛冶屋を殺すには刃物は要らん”といったそうです。六月中には返礼品を製作したい所です。
いつもご覧いただきありがとうございます。 今日はリターンの制作状況をあげていきます。 今日は包丁です。鍛冶は料理に似ているところがあります。鉄を何度も火にかけて、火加減に気を付けなければこげてしまいます。こげることを‘‘しなえる‘‘といいます。鉄がしなえるとガラスがクモの巣状に割れるように鉄もひびが入ったようにボロボロになります。こうなるとやり直しがききません。 火がぬるいと包丁がこわれます。 始めは厚い材料が刃物になるにつれ薄くなります。火の通りもはやくなりますから終盤になるにつれだんだんと手早く忙しくなります。 それでははじめます。まずは材料選びです。鋼と地金の二種類を選びます。 画像は地金です。鋼は焼きの入る鉄。地金は焼きの入らない、柔らかい鉄の事です。このように重ね二つの鉄を鍛接します。鍛接成功の状態です。これを失敗すると二枚くっつけた間に気泡が入りふくれあがったりします。 すでに下半分が包丁の形になってきました。ここまでくると包丁の全体像が分かります。。。晩は以前支援いただいたコークスを加工する仕事があります。今回は胡桃の木を使用します。ケースも持ち手も総胡桃の木。柔らかい木が良いです。普通は朴の木が一般的です。最近は高級な包丁には唐木でやったりします。こちらは日本の包丁には日本の木が良いという考え方です。他には杉の木が良いです。柔らかい木だと刃を痛めませんし、湿度やなんかも良い調子に保ってくれそうです。古の刀剣も杉の木が多様されているそうです。(杉の木を使った包丁)現在鋭意製作中です。 多くのコメント頂きましてありがとうございます。ほとんど返せておりませんが、参考になる意見など頂けまして勉強になります。六月中には目処をつけて返信や発送を開始できればと思っております。 しばらくお待ちください。