伊藤紗織(東京)が東京・京都からそれぞれピックアップされた3人の内側を探るリレーインタビュー企画、「なかへもぐる」。
第5回は、京都チームでサービスを担当する中上志穂(しほ)。
幼少期を舞鶴で過ごした彼女にとって、大きな存在である海。
学び、考え続けた彼女の心境を探る。
夜も更け、時計の短剣が1の数字を指した頃。レストランまで1週間を切り、両チームともに忙殺されている。
長い長い1日の最後、私たちは仕事を切り上げ、液晶越しに顔を合わせた。
ー もう本番まで一週間切っちゃったね…。しほちゃんはこの三ヶ月で何か変わったこと・変わらなかったことはある?
しほちゃん:それを聞かれるって分かってたから今日一日中ずっと考えてたんだけど、本当に、断言できる大きな変化とか思い当たらなくて…。
でも、魚に関してアンテナを張れるようになったっていうのは大きいかなって思う。
例えば、スーパーに行って魚コーナーに行った時に、これまでは「国産の魚で安心できるから買おう」とか、割と曖昧な感覚で買うものの取捨選択をしていたんだけど。
今では、サバだったら「なんでこれは小さいんだろう」って、その魚の背景を自然と考えるようになったんだよね。
以前ひろこさんが「魚を買う時、その魚がどこで、どんな漁法で取られたか確認している」って仰っていたんだけど、その気持ちが分かるようになったかな。
あとは、漁師さんに対して「資源量の減少によって収入が減って生活大変だろうな、大変な状況の中にいるんだから気持ちを理解しないと」という心配というか、同情みたいなものが、正直結構大きかったんだよね。
合宿の二日目、定置網漁をなさってる日吉さんからお話を伺ったときに、もちろん苦労されているんだろうけど、やっぱりご自身の職業が好きなんだなっていうのとか、漁をされている時の高揚感だったりが伝わってきて…憧れというか、「漁師さんかっこいいな」ってすごく感じた。
ー 水産全体に心の矢印が向いたんだね。ちなみに、「水産のこれから」については、割とポジティブ?
しほちゃん:うーん…ポジティブではない、かも。三ヶ月間学んできて、私には何もできないかもしれないっていう無力感も、もちろん感じたし。
でも、自分がブルーキャンプに応募した時に書いた文章を見たら「今の漁業の問題は暗い問題ばかりで、悲観的になることも多いけどどうにか明るい方に持っていきたい」って書いてたんだよね。三ヶ月間、解決し難い現状を学んできたけど、やっぱりそういう明るい方向に持っていかないとなって。
ー しほちゃん自身がこのプログラムの後にやりたいこととかはある?
しほちゃん:仮に資源が戻ってきても食べる人がいなければ意味がないって思う。私は栄養教諭になりたくて、直接資源管理に携わることはもうないと思うけど、次世代の子供達が美味しいと思って魚を食べてくれる環境ができるように努めるのが私の使命かなって思う。
ー ポップアップレストランへの意気込みをどうぞ!
しほちゃん:私たちが考えてきたことを伝えたい、行動を起こしてもらいらい、っていうのも大事だけど、これまでの”当たり前”を見つめ返して考えて欲しい。正解のない問いでも、今できるベストをみんなで考えていければいいなと思う。