私は福祉施設の営業職として、日々シニアマンションの入居希望者と接する中で、身元保証人がいない方や家族との関係が希薄な方の財産整理や終活をサポートする機会が多くあります。特に、昨年出会った72歳のがん末期患者の方との経験は、忘れられないものとなりました。
彼女と初めてお会いしたのは昨年の4月。余命宣告を受けた彼女は、唯一の家族である姪とも連絡が取れない状況で、自分の財産や最期の準備について途方に暮れていました。
5月に彼女がシニアマンションに入居されてから、私たちは財産整理と遺言書作成の準備を始めました。彼女の財産は億単位にのぼりましたが、「自分が生きた証を社会に形として残したい」という願いをもとに、寄付を含めたプランを提案しました。信頼できる司法書士を紹介し、具体的な計画を一緒に進めた結果、彼女は遺言書に2800万円での救急車寄贈や地元の福祉団体への寄付を記しました。また、長年気にしていた父親の納骨も無事に完了。「肩の荷が下りた」と笑顔で語る彼女の姿が印象的でした。
この半年間の支援を通じて、私は終活の重要性を改めて実感しました。終活は本人の安心だけでなく、残された人々の負担を大幅に軽減します。この経験をきっかけに終活プランナーの資格を取得し、入居者向けにセミナーを開催しています。
セミナーでは、エンディングノートの書き方や介護保険の選び方、葬儀の希望などを具体的に説明しています。ただし、最初からお金や相続の話をすると警戒されやすいため、脳梗塞や熱中症の予防など、日常生活に関わる話題から始め、関心を引きつけています。また、セミナー後には司法書士や葬儀会社と連携して個別サポートを提供しています。
今回の体験を通じて感じたのは、「終活に早すぎるということはない」ということです。もっと早くから準備していれば、彼女も余命宣告後に焦る必要はなかったかもしれません。終活は「人生を安心して歩むための準備」です。これからもその大切さを伝え、多くの方が自分らしい最期を迎えられるよう支援していきたいと思っています。
この経験を通じて私自身も、人生の終わりを準備することで、自分らしい最期を迎えるだけでなく、生きる時間をより有意義にすることができると気づかされました。これからもこの学びを活かし、誰もが前向きに終活に取り組める環境をつくっていきたいと思います。