メールインタビューvol.7は、ピアニストの菊池大成さんにお聞きしました。 『はらっぱのおはなし』稽古場風景 劇団の魅力について 高校生の頃手にした「日本オペラの夢」(林光)から初めてその存在を知り、音大で聴講した池辺先生の劇伴講座で『走れメロス』の上演VTRに驚き…それから幾多の月日と奇跡的な出会いを重ね、2013年から今日に至るまで東京演劇アンサンブルに関わらせて頂いております。 『音楽劇 はらっぱのおはなし』(2013~)がその手始めでしたが、「キャスト自ら劇中歌を作曲」という前代未聞の注文に対して、戸惑いを隠さず、しかし真正面から取り組んでくれる東京演劇アンサンブルの皆さんの、打てば響くような率直さが第一印象として強く心に残っています。稽古の初期は音楽創成のワークショップの体となり、作曲した歌を鼻歌で披露するキャストと、それを聴きその場で微修正や肉付けを行う私とのキャッチボールが続きました。演出の関根さんも交え、妙な汗でどろどろになりつつ、腹の底から笑い合いつつの一週間でしたが、その作業は音楽創成だけでなく、東京演劇アンサンブルと私とが互いに受け止め、受け止めてもらう大切な作業でもあった、と今では考えています。 その後、『屠畜場の聖ヨハンナ』(2014)、『第三帝国の恐怖と貧困』(2015)、『沖縄ミルクプラントの最后』(2017)に奏者や音楽スタッフとして関わらせて頂きましたが、『はらっぱ…』同様、いつでもどんなことでも投げた球をしっかり受け止め投げ返してくれる東京演劇アンサンブルの皆さんの芯の通った率直さは常に気持ちのいい張り合いをもたらしてくれます。稽古場では私も率直にいろんな話をし、そうなれる自分に嬉しくなって(そして稽古上がりの一杯がまた堪えられなくて笑)つい足が稽古場に向かいます。 『第三帝国の恐怖と貧困』(2015年3月12日~22日 作=ベルトルト・ブレヒト 演出=松下重人 音楽=菊池大成 撮影=松浦範子) 『沖縄ミルクプラントの最后』(2017年3月9日~19日 作=坂手洋二 演出=松下重人 音楽=菊池大成 撮影=松浦範子) 今後への期待 東京演劇アンサンブルの本拠である「ブレヒトの芝居小屋」が来春閉鎖されるとの報せを受け取りました。歴史があり、同時に豊かな可変性を具有するがゆえ、微塵も古びることなくアンサンブルの発信を支えてきた類まれなる空間であり、非常に優れた音響空間でもある「ブレヒトの芝居小屋」がここで失われてしまうのは、小屋を心から愛する者の一人として、ピアニストとして大変残念に感じます。一方で東京演劇アンサンブルは、新たな拠点からの船出を機に、ますますその魅力に磨きをかけ、より豊かで率直な発信を行って下さるであろうとも確信し、その新たな発信を心から楽しみにしております。 『走れメロス』(1976年~ 作=太宰治 脚本・演出=広渡常敏 音楽=林光 撮影=高岩震) 現在とこれからの活動について 東京演劇アンサンブル『音楽劇 はらっぱのおはなし』(作=松居スーザン 脚本=篠原久美子 演出=関根信一 音楽=菊池大成)に引き続き関わって参ります。 劇団風の子『陽気なハンス』(作=多田徹 演出=中島研 音楽=岸功・菊池大成)『風の子バザール』(演出構成=藤井郁夫 音楽=岸功・菊池大成)各地で公演中。 劇団風の子北海道『マーレンと雨姫』(原作=T.シュトルム 脚色=多田 徹 ・中島 茜 演出=鳴海輝雅 音楽=岸功・菊池大成) 『ボクラのばにしんぐぽいんと』(作・演出=向後俊一 音楽=菊池大成)各地で公演中。 日本児童・青少年演劇劇団協同組合『ちゃんぷるー ~私が幽霊!?修学旅行~』(作=西上寛樹 演出=大澗弘幸 音楽=菊池大成)2018年10月より各地で公演。 アート企画陽だまり『ドラマリーディング 空の村号』(脚本=篠原久美子 演出=関根信一 音楽=菊池大成・松田玲)2018年12月、ブレヒトの芝居小屋で上演。




