
南晶乃さんの作品『Lifeline』は、静かで、そして圧倒的に強い作品です。
彼女は、病を抱えたお子さんを亡くした経験を持ちます。
その喪失は、言葉で語るにはあまりにも深く、長い時間をかけて、いまの彼女の表現へと昇華されていきました。
『Lifeline』
この作品は、「つながり」という言葉を、もっとも切実なかたちで問い直す試みです。それは、目には見えないけれど確かに存在しつづける、命の記憶そのものを可視化するような空間。
ここで描かれるのは、喪失の痛みではなく、たしかに「つながっている」という時間が今もなお流れているという実感です。
観る人の動きに呼応して光が明滅し、空間の中に脈動のようなリズムが生まれます。それは、もうこの世界にいない誰かの呼吸と、いま生きている私たちの呼吸が、ほんの一瞬、重なり合うような瞬間です。
「命とは、終わりではなく、連なりなのかもしれない。」
作品全体を包む光は、その問いをそっと差し出すように会場を満たしています。
『Preserving』
同時に、南さんはもう一つの作品を用意しています。
それは、展示室が“研究室”に変わるような参加型のワークショップ。
生花を脱水・脱色し、再び色を吹き込んでプリザーブドフラワーを生成する過程を見せながら、「記憶とはなにか」「再生とはなにか」を問いかけます。
参加者はガラスシャーレに、大切な人への想いを込めたミニアレンジを制作します「研究メモ」には、それぞれの心の中にある“命の記憶”が、言葉となって、静かに積み重なっていきます。
南さんは言います。
「あの子の命が、いまも私の中を流れているように感じる。だから私は、今を生きる。」
彼女の作品は、決してもとには戻らない世界にも、一粒の種のように形を変えながら生き続けていることを、そっと語りかけてくれます。
『Lifeline』は、失われた存在と、いまここにいる自分とをつなぐ光。
そして『Preserving』は、その記憶を新しい形に再生させる試みです。
それはまるで、「喪失」という名の夜を抜けていくための、一筋の光のように見えます。
展示情報
《喪失と再生のアートラボ》展
会期:2025年11月22日(土)〜24日(月・祝)
会場:BUoY(北千住)






