市立小樽文学館前館長の玉川薫さんより応援コメントをいただきました!===1999年に行った企画展「昭和歌謡全集北海道編」で、初めて永山則夫のノート「無知の涙」を手にし、たいへんな衝撃を受けました。展覧会の趣旨は人々にとって文学、詩や歌がなぜ必要だったのかというものであり、つらい日々で思わず口をついて出る流行歌のように、追いつめられた民衆のなかから文学の原型のようなものが生まれたのではないだろうかと考えたのです。ノートは汚穢、哀悼、曖昧、憂鬱のように画数の多い暗鬱な漢字の書き取りで埋めつくされていて、そのなかから切れ切れに素朴な童謡のような文句が書き込まれてきます。それらがやがて詩になり文章になる。ノートのタイトルが初め「詩」1文字だったわけも分かりました。文学資料館なので作家の自筆原稿やノートはたくさん見てきましたが、このような詩が生まれる瞬間が奇蹟のように書きとめられた「作家の自筆ノート」を初めて目にしたのです。市原みちえさんとはこの展覧会以来のご縁ですが、思うところあってノートは引き続きお預かりし、ときおり展示しております。市原さんが厖大な遺品の整理と保存に長年心砕いてこられたことを知っておりますので、大勢のご協力で「永山アーカイブ」が始動したことを嬉しく、応援させていただきたいと思います。(玉川薫)玉川薫1953年福井県生まれ。北海道大学卒業。1979年より市立小樽文学館に学芸員として勤務。1999年文学展「昭和歌謡全集北海道編」を企画。2023年退職。ボランティア学芸員として現在もほぼ常時在館。




