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「狩猟から2時間以内」の話を何度かしてきました。今日は、その狩猟をしてくれる人がどれくらいいるのか、という話です。あまり明るい数字ではありませんが、この革の背景として知っておいていただきたいことです。
全国で、ピーク時の4割
環境省の統計によると、全国の狩猟免許所持者は1975年に約51万8千人いました。それが令和3年度には約21万3千人。ピークの4割ほどです。しかも、そのうち約6割が60歳以上です。ここ10年ほどは微増に転じていますが、担い手の中心が高齢層であることは変わっていません。
北海道でも事情は同じで、道の管理計画には、道内の狩猟免許所持者は約8,600人とあります。73万頭と推定されるエゾシカに対して、この人数です。
もう一つ、現場で感じていることがあります。免許を持っている人と、実際に山に入る人は別だということです。道内のある地域では、免許所持者はこの10年で4割増えたのに、狩猟者登録は2割減った、という報道がありました。免許を取っても、装備や時間や体力の問題で、続かない。そういう方が少なくありません。

マイナス20度の山で、一頭を確実に仕留めて、すぐに施設まで運ぶ。しかも毎シーズン。それをやってくださるハンターさんは、本当に限られた人たちです。
ハンターさんが減れば、鹿の害は増えます
北海道のエゾシカは73万頭と推定されていて、農林業被害は年間52億円を超えています。この数字を抑えているのは、結局のところハンターさんが山に入って数を減らしてくれているからです。ハンターさんが減れば、獲れる頭数が減り、鹿は増え、畑や森の被害はさらに広がります。ハンターさんの人数は、そのまま鹿の害の大きさに直結しています。
鹿革は、本当はとても良い革です
ここで、少し立ち止まってお伝えしたいことがあります。捨てられている鹿の皮は、質の悪いものではありません。むしろ逆です。
宮内庁の『正倉院紀要 第28号』には、こう報告されています。正倉院に伝わる1300年前の革製品のうち、いまも柔軟性を失っていないのは鹿革だけで、それ以外の革はすべて硬くなっていた、と。鹿の皮膚の繊維は1千万分の15ミリ、髪の毛1本分の幅に3万本以上が並ぶ細さで、それが幾重にも絡み合っています。だから軽くて丈夫、水にも強く、油分が革の内部にとどまるためオイルケアもいりません。日本タンナーズ協会も「非常に柔軟」と評しています。
これは日本だけの話ではありません。エルメスやシャネルといったメゾンも、鹿革(フランス語でdaim、peau de daim)を使ったジャケットを手がけてきていて、当時のヴィンテージ品はいまも専門市場で取引が続いています。手袋の世界では、鹿革は「柔らかいのに強い」という相反する条件を両立できる数少ない革として、フランスの名門手袋メーカーに長く選ばれてきました。おもしろいことに、フランス語で「鹿」を意味するdaimという言葉は、そのまま起毛革・スエード全般を指す言葉としても使われています。鹿革が、柔らかい革の基準そのものだった時代があった、ということです。
これほどの革が、いま、ほとんど捨てられています。
捨てるにも、私たちの税金が使われています
北海道では年間15万頭を超えるエゾシカが捕獲されていますが、そのうち食肉として処理されるのは3割に届きません。残りの多くは、活かされることなく焼却や埋設で処分されています。
この処分そのものにも、国の交付金、つまり私たちが納めている税金が使われています。捕獲していただいたハンターさんへの支援単価は、ジビエとして利用された場合と、焼却・埋設で処分された場合とで金額が分かれているほどです。世界の高級メゾンも選んできた革になりうるものが、税金をかけて処分されている。それが今の現実です。
消費が増えれば、無駄になる命が減ります
ここに、僕たちが取り組んでいる理由があります。革や肉としての需要が増えれば、その分、焼却や埋設に回る頭数は減ります。無駄になっていた命が、価値あるものとして活かされる側に移る。処分に使われていた税金の負担も、その分だけ軽くなります。
需要が増えれば皮に値段がつき、皮に値段がつけばハンターさんの収入になる。ハンターさんの収入が続けば、山に入る人が保たれ、鹿の害も抑えられる。そして活かされる命が増えれば、無駄になる命は減っていく。この一つのサイクルをきちんと機能させることが、僕たちの目的の一つです。
ハンターさんが山に入り、一頭を仕留め、2時間以内に運んでくれて、初めて一枚の皮が手に入ります。ハンターさんが減れば、革も減る。それだけの話です。
だから僕たちは、ただ皮を買うのではなく、ハンターさんの仕事がきちんと価値になる仕組みを作りたいと思っています。皆さまに一つバッグを選んでいただくことは、遠回りに見えて、北見の山に入る人を支え、世界のメゾンも選んできた革を活かし、鹿の害を抑えることにつながっていくと考えています。
日常的によく使うものだからこそ、
シンプルで使いやすく 存在感のあるエゾシカ革をご提案致します!
生活の中に特別な想いを
引き続きどうぞよろしくお願い致します!
LEATHERECTION
林 徹



